ナタンツ(イラン核施設)で火災:イスラエルによるサイバー攻撃か 2020.7.4

出展:BBC https://www.bbc.com/news/world-middle-east-53265023

2日深夜2時すぎ、イラン中央、テヘランの南250キロ地点にあるナタンツの核施設で、突然、火災が発生した。核施設自体への被害ははいので、放射能の漏洩はないとのこと。人的な被害も報告されていない。

しかし、この施設では、より進んだ遠心分離機が開発中で、もし完成した場合、核兵器に必要なウランの濃縮を早ペースで、量も増やして進めることができるようになる。完成すれば、ナタンツ地下(7.6m地下)の古い遠心分離機と交換される予定であったとみられていた。それが、今回の攻撃で、開発は、少なくとも2ヶ月は遅れたとみられる。

この問題について、クウェートのアル・ジャリダ紙は、イラン国内の情報源からの情報として、イランは小さく報告しているが、かなり重要な遠心分離機関連の倉庫が破壊されたと伝えた。

ナタンツは、2010年に、スタックスネットとよばれるコンピューターウイルスにより、大きな打撃を受けて核開発がかなり遅れたという経過がある。このサイバー攻撃については、アメリカとイスラエルによるものとみられている。そのナタンツが今回また攻撃されたということである。

この攻撃の後、「祖国のチーター」なるものが、犯行声明が出した。イランでも初耳のグループである。「チーター」とは、イランのフットボールクラブの愛称なので、もし犯行が反イラン体制派によるものとすれば、あえてこの名前を使うとは思えず、やはり、海外のなにものかが、この名を使ったと見る方が自然だとされた。そうなると、あやしいのはやはりイスラエルということになっている。

<あやしいのはイスラエルか?>

この事件に先立つ、先週金曜、イランのパルチンにあるミサイル製造工場を、イスラエルのステルス戦闘機F35が攻撃していた。パルチンでは、最新鋭のミサイルが製造され、レバノンのヒズボラに供給していることが知られていた。

アル・ジャリダ紙によると、パルチンには、ミサイル製造工場だけでなく、UF6ガスの倉庫もあったという。このガスは、ナタンツで開発中のIR-6という新しい遠心分離機に注入されるものであったという。この時の攻撃で破壊されて、保管していたガスの80%を失ったとの分析している。

ナタンツとパルチンの2箇所が攻撃を受けたということから、イスラエルが、イランの核兵器開発への妨害と見るのが自然であろう。

www.jpost.com/middle-east/iran-news/arabic-media-israeli-cyberattack-struck-natanz-nuclear-facility-633775

この件について、ネタニヤフ首相はノーコメントだった。しかし、INSS(イスラエル国家治安研究所)のアモス・ヤディン長官は、ネタニヤフ首相は、西岸地区併合問題ではなく、こちら(イラン)の問題に力を入れたようだとのコメントを出している。

<イランの反撃はあるか>

ここ数ヶ月、イスラエルとイランの間には、サイバー攻防戦が進んでいる。イランは、今年4月、イスラエルの水道システムにサイバー攻撃を行い、危険な塩素ガスを市中に拡散させようとした。イスラエルはあやうくこれを未然に防ぐことができたが、国内の情報システム、しかも、水道というライフラインに入り込まれたことは深刻であった。

この反撃として、イスラエルは、イランの軍事、民事双方の船が関係するホルムズ海峡に面したシャヒード・ラジャイー港にサイバー攻撃を実施した。すると、イランはイスラエル国内300箇所に反撃サイバー攻撃を実施。どれも被害には至らなかったが、上記一連の攻撃も、イランのサイバー攻撃以来の、アグレッシブなイスラエルの反撃とみられる。

公式の発言ではないが、イラン政府関係者は、ロイター通信に、ナタンツへの攻撃がイスラエルによるものとの見方を示唆したものの、証拠は示さなかった。

イランは、今後、ナタンツへの攻撃がサイバー攻撃であったかどうかを精査し、結果を発表すると言っている。イスラエルは、反撃の可能性もあるとして、備えをしているようである。

www.timesofisrael.com/report-israeli-cyberattack-caused-iran-nuclear-site-fire-f35s-hit-missile-base/

edition.cnn.com/2020/07/02/world/iran-natanz-nuclear-complex-fire-intl/index.html

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイド、イスラエル政府公認ガイドとして活動しています。 イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて18年。学校・企業・教会などで講演して15年になります。