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アメリカがシリア・イラクのイラン関連地点攻撃
日本でも大きく報じられているように、1月28日(日)、ヨルダンで、アメリカ兵3人が、イラン革命防衛隊のドローンに殺害されたことへの反撃だとして、その5日後の2月2日(金)(日本時間3日朝6時)、イラク、シリア国境周辺にあるイラン革命防衛隊関連軍事拠点7箇所への攻撃を実施した。
アメリカの中央司令部によると、攻撃した地点は、シリアとイラクが国境を接する地域で、両国領内にまたがっていた。攻撃には、アメリカ本土、テキサス州から直接飛来した長距離爆撃機も加わり、約30分の間に、125発以上の誘導爆弾などを85の標的に向かって撃ち込んでいた。
アメリカからの戦闘機を使ったのは、この地域に派遣している空母の戦闘機を温存して、次の備えるためだったとのこと。これまでに確認されているところによると、イラン関連の民兵戦闘員13人が死亡している。*後に34人死亡と報道
www3.nhk.or.jp/news/html/20240203/k10014346001000.html
アメリカの目的:アメリカ兵3人殺害の反撃
アメリカがこれほどの攻撃に踏み切ったのは、まず、10月7日のハマスのイスラエルへの攻撃以来、シリア、イラクの米軍への攻撃が急増しているからである。カービー米報道官によると、この4ヶ月ほどの間だけで、イラン関連民兵組織から米軍への攻撃は、イラクで67件、シリアで98件、ヨルダンで1件と、計166件に及んでいた。当然、アメリカは反撃を余儀なくされていた。
www.timesofisrael.com/us-blames-iran-proxies-for-deadly-jordan-strike-weighs-response/
そうして、28日に発生したヨルダンの米軍基地へのドローンによる攻撃では、米兵3人が死亡。40人以上が負傷する。
これにアメリカの堪忍袋の尾が切れたか、大規模な攻撃を決意したということである。戦死した米兵3人の遺体が本国に帰って来た時、バイデン大統領は自ら3人の迎えに出ていた。
アメリカの目的:イランに警告
またもう一つは、イランへの実質的な警告である。最近高まっている中東全域での危機は、すべてイランの支援を受けるテロ組織に関係するものであり、今では、中東のみならず、世界にまで影響を及ぼしている。
①イスラエルと戦っているハマス、②イスラエルと小競り合いを続けているヒスボラ、③紅海で米軍などとの実戦になり、イスラエルも攻撃するフーシ派、③シリア、イラクのイラン革命防衛隊の軍事拠点とその民兵組織(カタリブ・ヒズボラ)これらは「枢軸」と呼ばれている。
アメリカは、7日(水)の時点で、攻撃を検討していることを明らかにしていた。さらには、この攻撃の数時間前に、イラン革命防衛隊の司令官や行政関係者らに対して、地域の水道インフラを妨害していることと、イラン製攻撃用ドローンを地域の組織に製造させていることを挙げ、制裁を発動すると発表。また、(制裁対象になっている)イランの石油を販売して、ハマスとヒズボラへの資金援助していた9人の摘発も行った。
いわば、数時間前に、イラン革命防衛隊の罪状を明らかにし、警告した上で攻撃に踏み切ったということである。アメリカはできるだけ適正な手順を踏むことが重要だと考えているとカービー報道官。
また、アメリカは今回、まだイラン本土への直接の攻撃は避け、シリア、イラクの民兵組織への攻撃に止めている。イランに宣戦布告したのではなく、イランに行動を控えるようにとの、強力な警告を発したということである。バイデン大統領は、攻撃は始まったばかりであり、これ一回で終わるものではないことを強調している。
www.nytimes.com/live/2024/02/02/world/us-iran-strikes-middle-east-news
www.timesofisrael.com/us-blames-iran-proxies-for-deadly-jordan-strike-weighs-response/
イランの反応は
アメリカの攻撃を受け、イラクがアメリカを非難したが、イランからはまだ正式な声明は出ていない。しかし、7日にアメリカが攻撃を示唆した際、イランのサイード・イラヴァニ国連大使は、「イランは、国民に対するいかなる攻撃にも断固とした対応を取る」と言っていた。
石のひとりごと
中東での戦火拡大の予兆について、気になるのは、このすべての元凶が、イスラエルだとする考えである。NHKのネット国際ニュースナビの「緊迫!紅海」という記事には、以下のような文章があった。
「ガザ地区での戦争が世界の人々の暮らしにダメージを与えつつあります。」
www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/feature/2024/02/02/37458.html
悪気はないのだろうが、おおむね親パレスチナの日本の読者がこれを読めば、その背景にあるのがイスラエルのパレスチナ占領だと繋がる気配も感じられなくもない一文だと感じた。
特に2月1日には、2009年からイエメン沖アデン湾に、海賊対処ということで、駐留を続けている海上自衛隊の護衛艦の交代艦が、この混乱の中で、イエメンのアデン湾に出動してい行った。もし自衛隊に何らかの被害が発生した時に、日本は、いったいどう反応するのだろうかと懸念を覚える。
www3.nhk.or.jp/news/html/20240201/k10014343131000.html
今後、中東情勢の緊迫による、まずは、イスラエルそのものへの危機をとりなさないといけないが、同時に、世界に迷惑が掛かっていくことで、反イスラエル、反ユダヤ主義が悪化していくことにも注意していかなければならない。