MDA(イスラエルの救急隊)隊員が語るミサイル着弾の現場 2025.6.17

ミサイル着弾の現場で活躍する救急隊

ミサイル攻撃の現場に駆けつける救急隊MDA(イスラエルはユダヤ教国なので赤十字とは言わないが、同様の働き)の隊員たちは、非常に危険な中で、救急医療救助活動に走り回っている。

ミサイルの直撃を受けて、救急車が破壊されたこともあり、隊員たちにとっても非常に危険な任務である。

こうした中、MDA隊長ウリ・シャハムさんと、隊員のオリ・ラゾロヴィッチさんが、16日(月)、JPCでのインタビューに応じた。

イランが発射する弾道ミサイルは、95%は迎撃できているが、スピードもロケット弾より早いため、3-4%は、迎撃を通過している。

ウリさんは、弾道ミサイルのTNT(爆弾)が、ガザなどからのロケット弾が数キロであるのに対し、200キロに及んでいると、その規模の大きさが、尋常ではないと警告する。

このため、ビルに直撃した場合、そのビルだけでなく、周辺の通り全体に影響を及ぼすことになる。

また、10階建ビルに被害が及んだ現場では、住民200人ほどが、混乱の中から降りてくる。

この混乱の中で、パラメディックスとして、負傷者の救命救急にあたることは、通常とは全く違う状況だとウリさん。

日常の救急業務と違って、そこは戦場である。遭遇する負傷者の人数が、この20年近くの間に一度も経験したことがないような数であり、負傷者の傷、状況は複雑で、アセスメントも難しいという。

MDAのHPより

また、通常業務と違って、あらゆる部署とのコーディネートが重要だと、ウリさんは強調する。

MDAは、救出活動をしているチームが、瓦礫から救出できた次に、その人を医療的にケアする部署なのである。

またそれ以前に、IDFから現状の情報収集と、新たなミサイルが近いのかどうかといった連絡も緊密にとらなければならない。

その結果、どの程度の人数を手配するのか、実際の出動までに1時間から1時間半かかるケースもあるという。

MDAのHPより

ある時、駆けつけたテルアビブ近郊の地域は、幼い子供を抱える若い家族が多く住む地域だった。ここでは、MDAも、ただ待つだけでなく、被災した高層アパートに入って、負傷者がいないか捜索を行った。すると、消防隊が必死で扉を開けようとしている状況に遭遇した。

その部屋の住民は、部屋の中にあるシェルターに避難していたところ、近隣のアパートにあたった際の振動で、柱などが歪んで、扉が開かなくなっていたという。地震の時の感じかもしれない。

その部屋の中には、若い夫婦と赤ちゃんがいた。幸い、家族にけがはなかったが、振動で内臓になんらかの異常があるかもしれないため、MDAが、この家族を病院へと搬送したとのこと。

MDA HPより

また、救急車で患者を搬送中にサイレンが鳴ったことがあった。このため急停車して、全員降りて、付近にあった地下のガレージか何かの中へ駆け込んだという。

そのわずか15秒後に、乗っていた救急車から数十メートルの地点にミサイルが着弾。救急車は完全に破壊された。しかし、隊員たちは、ガラスの破片などで軽傷を負っただけで助かった。

ウリさんは、これは、ひとえに、軍のサイレンが鳴った時はどうするかという、前もっての指示に従ったからである。その後、別の救急車が来て、患者を連れて行ったとのこと。

ウリさんは、MDA隊員たちは、政府が今はシェルターに止まれと指示している時に、あえてシェルターから出なければならないということも知ってほしいと語る。

隊長として部下に出動を命じる時の苦難を語る。ウリさんは、派遣する隊員たちが、IDFからミサイル発射情報をいち早く受けて、シェルターに駆け込めるようにしているという。

ウリさんによると、統計的に見ると、死者や重傷者の多くはシェルターの外で発見されている。近年、イスラエルの迎撃ミサイルが、優秀なので、多くの人が油断して、飛んでくるミサイルや、迎撃の様子を撮影しようとしていることが問題だったと語っている。

一方で、これまでに2人がシェルターの中にいたのに、死亡したケースもあった。しかし、これは、ミサイルが直撃したためであった。

シェルターは、ミサイルの直撃からは守れないかもしれないが、爆発の延焼や飛んでくる破片には有効だとして、軍の指示に従い、警報が解除されるまで、シェルターの中に止まる重要性をウリさんは強調する。

日常と全然違う働き:若い隊員として

若い隊員であるオリさんも、現場は完全なカオスだと語る。救急活動にあたっている間にも、人々が呼びにきたり、壁が崩壊する音がする。

逃げようとしていたのか、その壁にしがみついていた人を救出しなければならない。火に覆われている建物もある。がれきから高齢女性をひきあげたこともある。

次いつミサイルが来るかわからないだけでなく、付近にあるビルがいつ崩壊するかもわからない。そのため、消防局の隊員とも協力して、急いで、できるだけ多くの人を助ける。

これは本当に、これまで馴染んできた仕事の状況と違っていると語る。状況だけでなく、ケアする負傷の激しさ、煙に巻かれた人の状況など、すべてがこれまで日常で経験してきた状況と違っていると言っている。

MDAはイスラエルそのもの:世界中からの支えに感謝

ウリさんは、この状況の中で、世界中からMDAへの支援活動があると感謝を述べている。これは、命の危機の中で働く隊員たちにとって、まずは、機材を充実させることができていることで、イスラエル人の命、隊員の命が守られる。

また、自分自身の危機を顧みずに使命に走っている隊員の大きな支えでもあるとウリさんは語る。

「MDAは、人種、宗教にかかわらず、あらゆる人を助けている。イスラエルそのものを表す存在だ」とウリさんは締めくくっている。以下はMDAのHP:そこから献金可能

www.mdais.org/en

*日本からイスラエルに救急車を寄贈:BFPJapan

ウリさんが言っているように、MDAには、世界中からの献金が寄せられている。

日本からは、BFPJapanという日本のクリスチャン団体が、代表して献金を募り、すでに高性能救急車3台をMDAに寄贈するに至っている。

MDAの救急車の中には、日の丸がついている救急車が走っているとのこと。献金希望者は、以下のHPからどうぞ。

www.facebook.com/reel/398497093309905

www.bfpj.org/support/ezra/project/ambulance/

*危機献金:クレジットの場合は、通信欄に「救急車」と書いてください。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。