日曜朝、ゴラン高原のシリア側から、イスラエルの警備兵らに向かって、銃撃があった。これを受けて、イスラエル軍が反撃。イスラエル空軍が、イスラエル側へ発砲する軍用車を爆撃し、乗っていたISIS戦闘員4人の死亡が確認された。
シリア国境からイスラエルの流れ弾が着弾し、イスラエル軍と小競り合いになるというパターンは時々発生しているが、イスラエルとISISが直接対立するのはこれが初めてである。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4884827,00.html
<ゴラン高原の最近の様子>
イスラエルはゴラン高原で、シリアと国境を接している。しかし、イスラエルとシリアの間には、1967年の戦争以来、非武装地帯が定められ、その中のクネイトラという町に国連軍UNDOFが駐留し、両者がぶつからないように監視していた。
2011年、アサド政権と反政府勢力の間で内戦が勃発すると、クネイトラ周辺は、反政府勢力の中でも過激派アルカイダ系のアル・ヌスラが支配するところとなった。UNDOF兵士らがアル・ヌスラに拉致される事件(兵士らは無事解放)も発生したため、2年前に撤退を余儀なくされた。
しかし、アル・ヌスラがいるために、ゴラン高原でのISISの勢力はまだまだ少数派であった。
今年、アル・ヌスラは、アルカイダから離脱。アル・シャムスと名を変え、穏健派の反政府勢力に合流したとみられている。そのためか、ゴラン高原では、平穏が続き、11月14日からは、UNDOFがゴラン高原での駐留を再開している。
www.timesofisrael.com/un-peacekeepers-return-to-syrian-side-of-golan-heights/
<反政府勢力劣勢か?・アレッポその後>
シリアの都市アレッポの東側は、反政府勢力が支配する地域だが、10月にロシアの斡旋でしばしの停戦が実施されたが、現在は、激しい攻撃が再開され、今日で13日目になる。
戦況としては、反政府勢力が劣勢で、ここ数日の間に、シリア政府軍がロシアの支援を受けて、アレッポ北東部の要所を奪回したもよう。
一方、反政府政府勢力は、東アレッポと、反政府勢力地域に囲まれたシリア政府管理下の西アレッポへの反撃を開始している。
激しい市街戦が続く中、東アレッポには一般市民27万5000人がまだいるとみられている。イギリス系人権保護団体によると、これまでに、市民219人が死亡。うち27人が子供だという。もちろん、西アレッポでも市民らに犠牲が発生している。
www.bbc.com/news/world-middle-east-38120009
<エジプトの寝返り>
アサド政権は、イランやロシアという強力なバックアップがあるが、さらにトランプ次期米大統領がロシアに接近する構えであるため、勢いを盛り返しているようである。
さらに、先週には、エジプトのシシ大統領が、「エジプトは、正規の国軍を支援する。」と、シリア政府側に立つかのような発言をした。これはトランプ次期米大統領がロシア接近の意思表示をしていることもあいまって、反政府勢力には大きな打撃である。
www.jpost.com/Middle-East/Egypt-shifts-to-open-support-for-Assad-regime-in-Syrian-civil-war-473693
エジプトはスンニ派で、その親方であるサウジアラビアからの大規模な経済支援も受けている。そのため、これまでは、サウジ側に立ち、シーア派主流のアサド政権陣営とは敵対する立場であった。
しかし、エジプトは、考えた。もし、シリアで反政府勢力(スンニ派)がアサド政権を倒すと、その勢いに乗ってエジプトが自国内で手を焼いているムスリム同胞団(スンニ派)が台頭してくる可能性がある。
また、トランプ次期大統領は、ロシアと接近を表明しており、アサド政権は勢いを増している。このまま、反政府勢力を支援し続けることがエジプトの国益になるとは限らない状況になってきたということである。
エジプトは、防衛においては、ロシアとイランに接近し、経済においてはサウジアラビアとの関係も続けるという戦国時さながらの知略をすすめているとみられる。
今後シリアで、反政府勢力が弱体化してくると、次にゴラン高原に台頭してくるのは、アサド政権とその背後にいるヒズボラ、イランか、もしくはISISか・・?イスラエルとしては、今のアル・シャムスのほうがまし・・・といったところだろうか。
いずれにしても、今の中東はロシアを味方につけておく。。。というのがポイントのようである。無論、イスラエルもネタニヤフ首相がなんどもプーチン大統領を訪問するなど、すでに、ぬかりない外交をすすめているようである。
<イラク・モスルのISIS総攻撃その後>
一方、イラクではISISが占領するモスルへのISIS撃滅にむけた総攻撃が始まってから6週間になる。市内では激しい市街戦が続き、連合軍の前進のスピードは落ちているという。
BBCによると、これまでに68000人以上が避難したが、まだ100万人が市内にいるとみられている。