For Now イスラエル・ヒズボラ危機回避か 2019.9.2

日曜午後、ヒズボラの対戦車砲が、イスラエル領内へ打ち込まれ、イスラエル軍用車両が破壊された件。

イスラエル軍が、対戦車砲が発射されたレバノン南部地域への100発以上反撃した後、大きな動きはない。ネタニヤフ首相は、北部住民に、懸念は去ったとして、日常に戻るよう指示した。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5579507,00.html

<イスラエルの心理戦?>

今回の衝突では、イスラエルが、大きな戦争に発展させないよう、すぐれた諜報活動を元に、心理戦を行ったとの分析がある。

イスラエルは、シリア内戦の終焉で、イランとその傀儡であるヒズボラが、イスラエル攻撃に備えての拠点を国境に建設していることに危機感を持っている。そのため、先週、イラク、シリア、レバノン(ベイルートのヒズボラ拠点)への攻撃に踏み切ったのであった。

ヒズボラのナスララ党首は、シリアでのイスラエルの攻撃で司令官2人を殺害されたことから、なんらかの報復をしなければならなかったはずである。そのため、イスラエルを攻撃するとの脅迫を行い、イスラエル軍は北部に臨戦態勢を整えていた。

今回、ヒズボラと複数のメディアは、対戦車砲でイスラエル軍のジープを攻撃した後、イスラエル兵1人を殺害したとの報道を行った。イスラエルが、これを否定したのは2時間後であった。しかし、メディアには、イスラエル軍兵士らが、負傷兵を救出する様子が流されていたのであった。

これについて、イスラエル軍は、「前から計画されていたダミーによる訓練であった。」と発表。軍によると、攻撃されたジープに乗っていた兵士は、攻撃を受ける30分前に、下車していてだれも負傷していないとのことであった。

www.timesofisrael.com/with-bloodless-battle-israel-and-hezbollah-can-avoid-war-but-only-for-now/

しかし、この否定の発表まで2時間もあったため、ヒズボラには、イスラエル兵1人を殺害したとする勝利報道を広げることができた。

また、イスラエルがこれを否定した後も、不明瞭な証拠映像が残ることで、実際にイスラエル兵が死亡したか、しなかったか、どちらにもとりうる形にすることで、ヒズボラのナスララ党首の内部への満足をカバーさせることも可能ということである。

一方で、イスラエル軍も、対戦車砲発射地付近への100発以上の攻撃を行い、負けっぱなしではないことを国民に提示している。この際、慎重に人的被害がおよばない形での攻撃である。いうまでもなく、お互いに、人的被害がないことが戦争拡大へのポイントである。

しかし、同時に、イスラエルは、ヒズボラに対し、「すべてお見通し」「イスラエルを甘く見るな」との強烈なメッセージを放ったとも言える。

*迷惑する!?レバノン政府

イスラエルとヒズボラが戦闘に入ることで、最大に迷惑するのはレバノン政府である。

イスラエルは、ヒズボラが、レバノンの正式な政党であることと、レバノン領から攻撃していることから、攻撃の責任は最終的にはレバノン政府にあるとする立場を明確にしている。

レバノンのハリリ首相は、この危機に際し、アメリカのポンペイオ国務長官、フランスのマクロン大統領など、国連安保理諸国に、「”イスラエルの暴挙”が地域を危機に陥れる。」として、介入の要請を出していた。

www.reuters.com/article/us-mideast-security-lebanon-hariri/pm-hariri-lebanon-wants-to-avoid-escalation-with-israel-idUSKCN1VG1Q3

しかし、危ない状況を作り上げ、イスラエルが、行動に出ざるをえない状況を作っているのは、イランとその傀儡のヒズボラである。また、レバノンのアウン大統領は、ヒズボラ支持で知られ、ヒズボラ戦士が、レバノン正規軍兵士のふりをすることがあるなどの癒着も指摘されている。

イスラエルとしては対応が難しいのである。

<これからどうなるのか?>

今回は、とりあえず、大きな戦争に拡大することは回避されたようである。

実際のことろ、ヒズボラ(背後にいるイラン)もイスラエル(総選挙直前で大きな決断ができない)も現時点での戦争は望まない、ということは明白である。これはその背後にいる大国ロシアとアメリカも同様である。

しかし、イランや、ヒズボラがこれで満足したとは言い切れないので、For Now (とりあえず今は)、戦闘を回避したと理解したほうがよいだろう。

www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/Hezbollahs-attack-on-Israel-Was-that-it-600367

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。