5回目選挙は回避できるか:鍵を握るのはアラブのラアム党!? 2021.3.25

左から未来がある党ラピード氏、ラアム党アッバス氏、ヤミナ党ベネット氏、リクード党ネタニヤフPhoto: Reuters, Ynethttps://www.ynetnews.com/article/E7LSHAB7V

アラブ政党と極右政党

今回の選挙は、政策や方針を問うものではなく、ネタニヤフ首相をおろせるかどうかを目標にした選挙だと言われている。そのせいだろうか、非常に奇妙な動きになってきた。

ラアム党のマンソール・アッバス氏(Wikipedia)

開票(不在者投票分含む)91%の時点で、最低得票率を取れるかどうかギリギリと言われていた2つの政党、宗教シオニスト党(6議席)とアラブ系保守イスラムのラアム党(4議席)のどちらもが、最低得票率を超えて国会入りがほぼ決まりそうである。

保守派イスラム政党ラアム(マンソール・アッバス氏)は、アラブ政党で、イスラム教を土台としてアラブ系市民を代表する政党。ムスリム兄弟団の流れとも言われている。こういう政党がイスラエル政界に存在すること事態、民主国家の骨頂と言える。一方、宗教シオニスト党(べツァレル・スモルトリッチ氏)は、“イスラエルはユダヤ人の国”を主張する極右とまで目される党。

宗教シオニスト党巣モルトリッチ氏(Wikipedia)

特に、今回は、宗教シオニスト党に、極右の中でもさらに極端で、アラブ人

オズマ・ヤフディット党ベン・ギブール氏(Wikipedia)

へのテロ行為も否定しないオツマ・ヤフディット党(ベン・グビール氏)が合流している。イスラエルにアラブ人はいるべきではないと主張しており、これが国会に議席を持つことが、海外でも物議になるかもしれないような党である。

ラアム党と宗教シオニスト党はいわば、両極端の主張を持つ党なのである。

無論、不在者投票、最終的に42万5000票(10議席分)で、まだ投票率が動いているので、両者とも残るかどうかは決定ではないが、この両極端の政党が一つの国会に存在するという状況になる可能性が出てきているということである。それだけでなく、イスラエルの政権をこのアラブ人のラアム党が決めることになるという不思議な状況にもなり始めている。

www.timesofisrael.com/raam-officials-far-right-ben-gvir-rule-out-joining-forces-in-a-coalition/

イスラエルの政府がアラブ政党なしに成立できない!?

現時点で、ネタニヤフ首相とその陣営の総議席数が、最大でも59議席(まだ合流を確約していないヤミナ党(ナフタリ・ベネット氏)を含めての数)とまだ過半数に満たないことから、ネタニヤフ陣営は、右派でありながら、アラブ政党のラアム党と手を組まない限り、政権をとることができないという状況になっている。

ネタニヤフ首相は、前にはラアムと組むことはありえないとは言っていたが、交渉もありうるとの話も出始めている。一方で、ラアム党は、宗教シオニストとはともに座ることはできないと言っている。・・が、これからどうなるかはわからない。

打倒ネタニヤフ首相陣営は、未来がある党(ヤイル・ラピード氏)を筆頭に56議席である。しかし、こちらは、ただただ打倒ネタニヤフという事では一致しているも、左派右派混在なので、まだ全部手を組むとは限らない上に、政府として立つことに現実性はほとんどない。仮に、打倒ネタニヤフ首相で一致したとしても、まだ56議席なので、こちらもまた、ラアム党が入らないと過半数にはなりえない。こちらの可能性としては、ラアムに大臣の椅子を約束して陣営に入ってもらい、過半数を実現することは可能ではあるが、可能性はかなり低いとみられている。

要するに、不在者投票で、リクードか、未来がある党が得票を大きく伸ばすなど、大きな変化が出ない限り、5回目総選挙というのが現時点での状況ということである・・・。

www.jpost.com/israel-elections/coalition-conundrum-what-could-israels-next-government-look-like-663087

*5回目選挙とガンツ氏の関係

ベニー・ガンツ氏(Wikipedia)

もし5回目の総選挙になった場合、その時までは、今回の新しい選挙結果による国会の上に、今の政権が継続して政権を担う形になる。その場合は、今の政権が成立したときに法律で決まったように、11月には、ネタニヤフ首相から、ベニー・ガンツ氏が首相になることが義務付けられる。

この際、もしガンツ氏の青白党が、今回の選挙で、最低得票率を獲得せず、国会入りしていなかった場合、国会議員でもないガンツ氏が首相になれるかどうかが問題になると言われていた。しかし、蓋を開けてみると、青白党は、予想以上に善戦しており、8議席を獲得していたのであった。このため、もし5回目選挙が11月以降になった場合、11月には、ガンツ氏が首相になることは避けられない。・・・が、そうはならないように、もし5回目があるとすれば、8月か10月には行われると予想されている。

絶対負けられないネタニヤフ首相のもう一つの理由

ネタニヤフ首相は、今、延期にはなっているが、汚職による刑事訴訟の最中である。今回、ネタニヤフ首相が、国会で過半数を獲得して政権を維持した場合、まずは、「国家の首相は刑事訴訟からは除外される」という法案を成立させると予想されている。

一方、仮にネタニヤフ陣営が過半数を獲得できず、打倒ネタニヤフ陣営が過半数となり、政権を撮った場合、たとえそれが短命であったとしても、まずは、「刑事訴訟にある人物が首相にはなれない」という法案、また「首相は2期まで」という法案を成立させると予想されている。

まさに、ネタニヤフ首相をおろすかおろせないかが、今回の選挙の焦点なのである。

石のひとりごと

日本では、選挙が終われば全てが終わることが普通だが、イスラエルでは、選挙結果からが勝負となり、ここからの交渉で、どういう政府が成り立つかが決まってくるということである。それはまさに将棋の勝負のようである。

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて18年。学校・企業・教会などで講演して15年になります。