4日連続ハマスのミサイルにイスラエルも反撃:悪循環改善にラピード外相が提案 2021.9.13

アイアンドーム迎撃ミサイル 写真:IDF

脱獄後から4日連続ガザからミサイル

ハマスは、これまでからも火炎風船をイスラエルに飛ばしてきて、イスラエルから反撃されるということを繰り返していた。そうした中で、脱獄が発生。これを支持すると表明し、イスラエルにここ4日連続、ミサイルを飛ばしてきている。

どれもアイアンドームが対処して、イスラエル側に被害はない。ミサイルが発射されるたびに、イスラエルは毎回、空爆で対応している。ガザとの間は、ずっとこの状況が続いており、時々これが大きな衝突になっては、また落ち着くということの繰り返しである。

blob:www.walla.co.il/3039964b-6b6c-4a0f-86e5-9a210b73e73e

www.jpost.com/breaking-news/rocket-sirens-sound-in-sderot-679281

この悪循環の中で、イスラエルはガザとの国境を閉鎖しては緩め、緩めては攻撃でまた閉鎖とくりかえしている。ガザの失業率は50%近くで、貧困率は、ガザをハマスが支配するようになった2007年当時は43%であったものが、2017年には56%で、最近はもっと上昇し、停電が続いて下水があふれだすなど、人間が住める状況になくなりつつある。

www.timesofisrael.com/rocket-fired-from-gaza-intercepted-by-iron-dome-in-third-such-attack-in-3-days/

国際社会は、ガザの経済状況が悪いことが原因だとして、時々裕福なカタールが、ガザへ現金をプレゼントするというような対処が行われてきた。今回もまた、今日月曜から、カタールの現金が、ガザ地区に送られる。ただし、少なくとも今回は、国連が間に入っての現金支援であり、これまでのように、現金の入ったスーツケースがガザへ向かうというものではない。(ガザ内部でハマスが搾取していたかもしれない)

しかし、いずれにしても、これでは、ハマスはイスラエルを攻撃することで現金を得ているようなもので、これでは本当にキリがないわけである。一方で、イスラエルの方は、1発、5万ドル(150万円)以上するとも伝えられている迎撃ミサイルを使わされており、市民の安全は守られているとはいえ、経済的な負担はかなり大きい。この悪循環をとめるために、ラピード外相がある提案を出した。

ラピード外相の提案:平穏ならすすめる長期視点のガザ地区インフラ整備

Photos By : Haim Zach / GPO

ラピード外相は、対テロポリシー研究大学であるレイヒマン大学(元IDCヘリツェリア)での講演で、ガザ問題への対処について、「新しいビジョン」を提示した。

それは、カタールの現金のような、一時的な対症療法的なものではなく、ハマスが攻撃をやめることを条件に、段階的なステップで、恒久的にガザの社会を変えるようなインフラ整備をするということである。たとえば、ガザと天然ガスをつなぐ施設、海水の淡水化工場建設、ガザの正式な港湾を整備するなどである。

こうなるとハマスは何年も、攻撃をやめなければならない。ラピード外相は、パレスチナ自治政府とは、まだ和平合意ができてないので、こうした大規模な介入はできないが、ガザの場合は、正式な政府がないので、逆にこれが可能になると語る。

どんな案かというと、ラピード氏は、まだアイデアの段階だとしながらも、段階をおった計画を次のように述べた。まずハマスが静かにしていることを条件に、①国際社会の監視下で、ガザに現存するインフラを修復する。ハマスが約束を破って暴力に出るたびに、計画は停止する。この時、エジプトとパレスチナ自治政府が協力する。

②①が完了した後、ガザ沖に人工島を作り、この島を通じて、西岸地区とガザの行き来を可能にする。これを管理するのはハマスではなく、パレスチナ自治政府側がこれを行う。

・・・・正直なところ、この案が実現するとは考えにくい。時代が変わったので、まったく頭からは否定しないものの、ちょっと現実離れすぎるようにも聞こえてしまう。実はこうした案は、ラピード外相の前にも、前の政権でカッツ氏が提案していた。これまでに実現しなかったのは、ガザのハマスは、市民生活の改善には興味がなく、ともかくもイスラエルと戦うことを最優先にしたからである。

今回も、ラピード外相が、この講演でこの案を表明した直後に、ガザからはミサイルが飛んできた。イスラエルはこれを迎撃ミサイルで対処した。ラピード外相の提案にさっさと返事をしたかのようであった。

www.timesofisrael.com/lapid-proposes-new-vision-for-gaza-promises-economic-steps-for-hamas-quiet/

<水と油:イデオロギーの違い>

12日は、2005年にイスラエルがガザ地区からの撤退を完了した記念日であった。16年たった今、ガザの状況は撤退前より悪くなった。アメリカもまた、アフガニスタンで20年も国の近代化に膨大な投資をしたが、失敗に終わり、アフガンから撤退した今、状況は悪くなる方向に見えている。

イスラム過激派の考え方は、普通の民主主義とはどうしても相容れない、水と油なのである。これは、イスラム教のせいではないと思う。イスラム教徒でも、普通に社会生活をしている人の方が多い。問題は、イスラム過激派と呼ばれる人々との付き合い方である。

この悪循環に、どうやって、いつ終止符が打たれるのか・・これが聖書のいう最終戦争につながっていくのか・・・神のみがご存知ということである

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。