3年半ぶり2021-2022予算案通過成立:ベネット政権安定 2021.11.6

2021年予算案が通過して国会解散の危機を逃れた瞬間のベネット政権 スクリーンショット

2021-2022予算案成立でベネット政権安定

ベネット政権が存続するか否かの大きなテストと言われた2021年と2022年の予算案が、両方とも5日、無事国会審議を通過した。2022年分については、来年3月が期限なので、はるかに早く成立させたことになる。

イスラエルで正式な予算が成立するのは、2018年以来、3年半ぶりである。これにより、ベネット政権存続が大きく安定することとなった。ベネット首相はツイッターに、「イスラエルがもどってきた」とその喜びを投稿している。以下の投稿には、“ついに、ついに!”と書いている。

徹夜審議でネタニヤフ前首相も間違って与党に賛成票も

イスラエルの予算案は、国会で審議され、3回決議を通過してようやく成立となる。2021年-2022年予算は、10月中に1回目を通過し、特に2021年分は、11月14日が期限であった。

しかし、最終審議を前に、多様な政権の中で意見の食い違いもみられたことから、メディアは、予算予算案は成立しないのではないか、また総選挙になるとの懸念を伝え始めていた。ベネット首相は違いの理解を深めるため、決議に先立ち、与党メンバーといわゆるフェローシップのような行っていた。

こうして4日、まず2021年の予算が国会で昼間から夜を徹して審議され、5日早朝5時半、賛成61、反対59(120議席)で通過、成立することとなった。3年半ぶりの予算成立となり、ベネット政権が大きく王手をかけたことになった。以下は2021年分通過の様子。

その後、朝10時半には、2022年の予算案の審議が始められた。国会議員たちは、2時間しか寝ていない人もおり、投票時に間違って投票した議員も出た。

筆頭野党で、予算案成立を大きく妨害してくるとみられていたリクード党首のネタニヤフ前首相も疲れていたのか、審議の際に何度か間違って、与党側に賛成票を投じていたという。(投票は1回ではなく、様々な項目で投票されるため、その総数は600回と伝えられている)

最終的な結果が出たのは、6日(金曜)朝3時半。賛成61、反対59で、こちらも国会を通過し、成立したのであった。これにより、3年以上も予算案を成立させることができなかっただけでなく、自分の政治生命を守るためにあえて予算案を通さなかったとして、ネタニヤフ前首相への非難も出始めている。

いずれにしても、ネタニヤフ前首相が、首相に返り咲くことはなくなったと言われている。

まる2日、夜も寝ないで審議した議員たち、特にベネット首相たち与党政党議員たちは、今頃、本当の意味での安息日を過ごしていることだろう。

2022予算の特徴

最終的に国会に承認された2022年予算は、5730億シェケル(約20兆円)。特徴的な項目が、コロナ予備費として100億シェケル(3300億円)、アラブ人地域での治安改善、インフラ、住宅建設などに向こう5年間の予算として、320億シェケル(1兆1000億円)が計上されている。

www.timesofisrael.com/coalition-passes-2021-budget-first-in-years-as-rest-of-vote-a-thon-awaits/

この他、コシェル認証手続きの変更、農業における変更、銀行システムの改良、グリーン化に向けた使い捨てプラスチック利用者への課税、住宅など、これまで手付かずで置かれていた改善や改良にむけた予算がもりこまれている。

国会での審議が夜を徹して行われたのは、金額のことだけでなく、それを何に使うかを明確にし、それに賛同するかどうかをいちいち審議するためである。予算案の審議とはいえ、実際には、これからの政府の方針を論議するということなのである。

www.timesofisrael.com/how-much-of-a-revolution-13-key-plans-in-israels-new-state-budget/

石のひとりごと

またもやベネット政権が、危機をすれすれ脱出していった。予算案が通った時の写真を見ると、ベネット首相とラピード外相が肩を組んで喜んでいる。

ネタニヤフ首相の時代までの単独スーパーリーダーの時代が終わり、チーム運営の時代、まさにイスラエルは今、建国70年を超えて、新しい時代を迎えているのだろう。とはいえ、これまでの強いリーダーの時代があったからこそ、今があることも忘れてはならない。

今、予算が成立し、解散、総選挙の懸念はなくなった。これからのベネット政権の政治運営、また2年後のラピード外相との交代まで、すぐれたチームワークが維持できるのか。まだまだ課題は山積みである。若いイスラエルの政権を覚えてとりなされたし。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。