11月29日にイランとEUが核合意再建に向け協議予定:イランとイスラエルの動きは? 2021.11.6

イランとの交渉再開11月29日

4日、EUのモラ事務局長が、イランが、アメリカを除いたJCPOA諸国との核合意再建に向けた話し合いに応じたとして、11月29日にウイーンで、交渉を再開すると発表した。核合意への復帰を希望しているアメリカは、この動きを歓迎すると表明している。

この合意からトランプ政権時代に離脱したアメリカは、バイデン大統領になってから、この合意に戻ることをめざしている。しかし、イランは、アメリカの復帰は、アメリカがまずイランへの経済制裁を解除することが条件だと強気の姿勢を崩していない。イランとJCPOAの核合意に関する交渉は、この6月以降、暗礁に乗り上げている。

その間、イランは核兵器の開発をすすめており、6月には、新しく強硬派と目されるライシ政権が立ち上がった。このまま交渉が再開できなければ、あとは軍事行動しかないとの暗い見通しになっている。イスラエルは、実際、その方向で準備し始めている様相である。

10月末にローマで開催されたG20でもこの件が話し合われ、核兵器開発をやめず、話し合いに応じないイランへの非難を表明していた。新しいライシ大統領がどういう動きにでてくるかは予想がつかないのだが、話し合いは難航すると懸念されている。

www.nikkei.com/article/DGKKZO77247670U1A101C2MM0000/

イランの核開発近況

EUとの話し合いに臨むと言っているイランだが、IAEA(国際原子力機構)のラファエル・グロシ長官によると、その監視力は、明らかに限られてきているという。イランが、核施設の全部をIAEAに開示しないというのである。この状態でではあるが、20%にまで濃縮されたウランは、210キロ、60%にまで濃縮したウランは25キロにまでなっているという。核兵器レベルのウランは90%で、技術的には、核兵器にかなり近づいていることになる。

なお、JCPOAでの合意によると、ウランの濃縮は3.67%までとなっているので、はるかに逸脱しているということになる。

www.timesofisrael.com/iran-boasts-of-boosting-its-stockpile-of-60-enriched-uranium-to-25-kg/

イスラエルは長距離ミサイルの早期発見用バルーン打ち上げ

IDF

本気かどうかは別として、イスラエル軍は、イランの核施設攻撃に向けた訓練を開始。シリアのイラン傀儡ヒズボラ拠点への攻撃を続けるとともに、ヒズボラが本気でレバノンからイスラエルへ大量のミサイルを発射してくる場合に備えた訓練も、北部国境付近において行なっている。

さらに4日、イスラエル軍は、長距離のミサイルや航空機の接近を、レーダーにより早期に発見する巨大バルーン「Sky Dew(空の露)」を公開した。近く北部で監視を開始するとのことである。

無論、イスラエルはすでにこうした攻撃を早期にキャッチするレーダーは完備している。しかし、このバルーンはそれを上回るほどの距離から察知することができるとみられる。

www.timesofisrael.com/israel-prepares-to-launch-giant-missile-detecting-balloon-over-north/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。