1日の感染者1100人「デルタ株にワクチン効果は期待以下が現状」:ベネット首相の認識と方針 2021.7.19

ベネット首相 GPO

デルタ株感染拡大続く:ベネット首相のウイズコロナ方針

イスラエルの新規感染者数の推移 右端が少しあがりつつあるのが今
world meter よりhttps://www.worldometers.info/coronavirus/country/israel/

イスラエルでは、デルタ株による1日の新規感染者が、増えており、16日(金)1日で、1100人を記録した。検査数約3万3699人での陽性率は、1.47と1を超えた。

安息日と日曜日は、1日750-800人で推移し、現在症状が出ている人は6710人。重症になる人も数人づつで増えており、最終のデータでは、61人。

この60-70%は、2回のワクチン接種を終えていた人たちだと言う。しかし、その多くは、70歳以上の高齢者であり、深刻な既往歴のある人たちである。

また、1日の感染者数の増加に比べて、重症化する人の数はまだ少ないままで止まっているという状況は続いている。

19日、ベネット首相は、閣僚や、保健関係指導者、軍関係者を前に、全世界でデルタ株感染が拡大している中、「変異デルタ株に対するワクチンによる効果は、我々が期待したより低い。また、コロナ感染が弱体化していくことを望むが、世界的に見ても、まだその傾向はない。」との認識を表明した。

しかし、ワクチンに、一定の感染予防、重症化予防があることは間違いないとして、今後も、ワクチン接種を急いで行くとのこと。イスラエルは、世界に先駆けて、免疫力が下がっているとみられる人々への3回目の接種も開始している。

ベネット首相は、対策の目標を「ウイズコロナとの認識で対策を行いながら、できるだけ通常の生活を維持すること。」とした。

またその方策として、市民に十分準備できるよう早めの警告と、対策の方針を伝えていくとした。早めに対策を始めることで、市民が驚いたり、パニックにならないようにするということである。

www.timesofisrael.com/bennett-protection-afforded-by-vaccines-weaker-than-wed-hoped-against-delta/

イスラエルでは、コロナの王(ツァー)とされるコロナ責任者が任命されてきたが、現在、この役割に任じられているのは、ナフマン・アシュ教授。ニツァン・ホロビッツ保健相とともに働いている。

空港での新しい強化水際対策

今イスラエルで、感染が確認されている人の10%は、国外からの帰国した人である。政府は、感染拡大が著しいため、渡航を禁止する国として、スペイン、キルギスタンが追加され、続いてギリシャも追加される見通しで、渡航禁止国は15カ国となった。

国内メディアのカン・ニュースによると、今後、イギリス、キプロス、トルコなど、イスラエル人にとっては非常に近い関係にあるこれらの国も渡航禁止国になる可能性があるという。これらの国を訪問した場合の罰金は5000シェケルである。

ベネット首相は、今、夏休みに入り、国外旅行する人が増加するとの予想から、「多くの国がまもなく赤信号国になる。世界もイスラエルもコロナ状況とその対策が変化している」として、今は、できるだけ、海外旅行を控える様にと国民に呼びかけた。

しかし、18日の1日のうちに、ベングリオン空港を通過した人は2万2000人に上っていた。これらが、やがては帰国することになる。今後、帰国者は全員、7日間の隔離を義務付けることなど、対策を急いでいる。

また、海外旅行の場合、ワクチン接種をしていない子供達が国外に出て感染する可能性がある。このため、この夏、不要不急のレジャーの旅行としての渡航は禁止することも検討されている。

www.timesofisrael.com/govt-said-to-weigh-shuttering-airport-for-non-essential-travel-amid-virus-surge/

また、ベネット首相は、警察が、自己隔離している人を追跡するデジタルシステムを使えるかどうかの法的な裏付けがありうるかどうか、検討する様に、マンデルビット司法長官と公共治安担当オーマー・バルレブ氏に依頼したとのこと。

このシステムは前政権の時に使っていたと思われていたもので、警察官が、隔離している人がそこにいるかどうか、時々チェックに現れると言う類のものだが、実際にはあまり使っていなかったのこと。

www.timesofisrael.com/pm-police-to-track-quarantined-israelis-with-criminal-charges-for-violators/

国内対策:家庭用簡易検査キットの導入開始へ

簡易抗体検査キット(15-30分で結果)(AP Photo/Jean-Francois Badias)

イスラエルの対コロナ対策の趣旨は、できるだけ多く検査を行い、陽性者を隔離して感染を予防するというものである。クラスター対策も行っているが、それを待たずに、あやしい人はどんどん検査を行ない、まだ症状が出ないうちに陽性者を隔離すると言う方法である。

こうした中、新しく出てきているのが、コロナの家庭用簡易検査キットの販売である。保健省は、市民が高齢者ホームを訪問する前や、子供たちが夏のキャンプに参加する前、また大きなイベントなどに参加する前に実施するよう、呼びかけるとしている。

しかし、シェバ医療センターのラハブ教授は、検査は、家族や個人に任せるのではなく、施設や学校にその責任を負わせる方がよいと述べている。販売となれば、買えない人も多いであろうし、いい加減になりやすい。費用は国が負担するのか、一部国が負担するのかなど、今、検討が進められている。

www.timesofisrael.com/israel-rolls-out-pilot-for-pharmacies-to-sell-rapid-home-virus-tests/

このほか、結婚式などの大型イベントに出席する際に、ワクチン接種証明や陰性証明提示する「パーティ・パス」を発行し、入場前の提示を義務付ける。このパーティパスは、21日からの適応となる予定である。無論、違反者には罰金がある。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。