8週目反政府デモ最大30万人参加:政府は司法改革減速せず 2023.2.27

テルアビブの様子

8週目反政府デモ30万人

強硬右派勢からなる今のネタニヤフ政権。司法制度改革をめぐって、毎週末に大規模な反対デモが発生している。今週末は、さらに参加人数が増え、中心のテルアビブで、13-16万人、全国合わせると参加者は30万人と、これまでで最大となった。

テルアビブでは、主幹高速道路アヤロン・ハイウエイがデモ隊によって封鎖され、タイヤを燃やす行為もみられたため、警察が21人を逮捕した。

参加者は、経済学者からハイテクのスタートアップ、法学者など、実際的に社会を動かしている世俗派で、軍の予備役たちも多数参加していた。この人々は、将来、国から呼び出しがかかっても従軍しない可能性があり、大きな危機感が出始めている。

バラク元首相もデモに参加。イスラエルが独裁になろうとしている。国家形成以来最悪の危機だと語った。前アルシャルヒ警察庁長官は、警察は違法な司令には従わないと述べた。西岸地区における警察国境警備隊の責任が極右ベン・グビル氏にひきわたされたことをさしている。

ハイファではガンツ前防衛省が参加。「ネタニヤフ首相は、敵を打つべきであって、市民を撃つべきでない」と述べた。ベエルシェバでは、故前シャロン首相の息子オムリ・シャロンさんが、「司法制度の改革は必要だが、裁判官の任命が、政治家によるべきではない。」と述べた。

エルサレムでは、前最高裁裁判官のエルヤキン・ルービンステイン氏が、政府が裁判官を選ぶようでは、もはや、兵士たちを国際法廷から守ることができなくなると指摘した。イスラエル軍兵士は時にその行動を国際法廷に訴えられることがあるが、イスラエルの司法制度が政府に支配されている状態にある場合、すでに、法的な公正さが疑われるので、正当性を訴えられなくなるということである。

ネタニヤフ首相は、デモ隊は、政府を打倒して再選挙をさせようとしていると非難した。ラピード前首相は、「ネタニヤフ首相の嘘を終わらせる時がきている」と述べた。

www.timesofisrael.com/largest-protests-yet-masses-around-country-rally-against-curbing-of-justice-system/

政府司法改革減速せず:世論調査では国民の支持は下降の中

国民の反対は拡大しており、今の時点(25日)での世論調査によると、与党が確保できる議席は9議席失うという結果になっている。すると与党ネタニヤフ政権は、55議席と過半数を割る。ネタニヤフ首相のリクードが26議席、ラピード氏の未来がある党が31議席とラピード氏が勝つ見通しとなった。

一方、ガンツ氏の国民統一党も19議席を得て、未来がある党、リクードに続く第3党になるとの数字である。野党が全部一致すれば、64議席と、今の連立を上回ることにはなるが、実際には、野党が全部一致することはないので、政権交代になるかといえば、それはまた別の話になる。

www.timesofisrael.com/poll-coalition-slumps-9-seats-losing-majority-amid-unrest-over-judicial-overhaul/

そのせいなのかどうかは、わからないが、ネタニヤフ政権は、そんなことにはおかまいなく、司法制度の改革を急いでいる。

司法改革の提案は、レビン法相で、それを議論する憲法・法・司法委員会のロズマン氏が先頭に立って、この改革をすすめている。ロズマン氏の委員会で可決した項目を国会で議論し、1回目を可決で通過し、2回目3回目を待つ項目に加えて、今週も、水曜に委員会で採択を行い、来週には、国会で審議と、そのスピードは衰えることなく、司法改革を熱心にすすめようとしている。

しかし、有力テレビ局チャンネル12の、24日の時点での調査では、国民の60%が、この司法改革は国家のためにならないと答え、国家にとってよいものと答えた人は32%であった。1月の時点では、国のためにならないと答えた人は39%、国にとってよいと答えた人は29%、わからないと答えた人が32%であった。反対者は増えたということである。

イスラエルの民主主義研究所の調査では、ネタニヤフ首相のリクード内部でも、司法改革で経済が悪化すると懸念をする人が52%、懸念してないと答えた人が43%、わからないが7%であった。

全体的に見て、国民の過半数は、これに反対か懸念を持っているということである。しかし、それでもこの改革を前進させようとする背景には何があるのだろうか。もう一度政府が解散して総選挙にするわけにはいかないという思いなのか。しかし、それならば、国民の声に耳を傾けてもよさそうなものである。

この背景にいったい何があるのか、注目していきたい。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。