4月総選挙にむけて:ガンツ元参謀総長政界デビュー 2019.2.2

ベニー・ガンツ氏 出展:ハアレツ
ベニー・ガンツ氏 写真出展:ハアレツ

イスラエルでは、4月の総選挙を前に、政界がざわめいている。29日には、国民に幅広く人気のある元イスラエル軍参謀総長ベニー・ガンツ氏が、「ホセン・イスラエル(イスラエルの回復)」と名付けられた政党の党首として29日、初めて公の演説を行った。演説は熱狂的な反応の中で行われた。

ガンツ氏は、自分はイスラエルを誇りに思うと強調しながら、現在のイスラエルの政界は、右左で争っており、悪であり醜いと批判した。また、現在のリーダー(ネタニヤフ首相)の行動ふるまいも批判し、結束した政府の必要性を訴えた。

ガンツ氏の政界入りは今回、まったくの初めてであるため、右派からも左派からも受け入れられる器とみられていたが、演説の内容は、中道で、若干右寄りよりだったとTimes of Israelは伝えている。

ガンツ氏のホセン・イスラエル党は、選挙名簿の2番目が、やはり元参謀総長のモシェ・ヤアロン氏。さらに、ガンツ氏の前の参謀総長であったガビ・アシュケナジ氏にも参入を申し入れているとメディアは伝えている。

しかし、アシュケナジ氏は、「王になることを目指す人でなく、王国を確立することを目指す人と働きたい。」と述べ、今の所、返事はしていないとのこと。

最終的に、ガンツ氏は、首相のポストをめざすとし、自分は、4月9日(総選挙)、安定した政府を立ち上げると宣言した。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/258321

<チャンネル2の世論調査:現在の予想>

チャンネル2が行った世論調査によると、現時点は、リクード(ネタニヤフ首相)が30議席、ホセン・イスラエル(ベニー・ガンツ氏)が21議席、未来がある党(ラピード氏)が11議席、新右派党(ベネット氏とシャキード氏)が7議席、トーラー党が7議席となっている。

この中で、ガンツ氏は、すでにテレム党(4議席)と組むことを表明していることから、もしガンツ氏が主体となって、ラピード氏が組んだ場合、ネタニヤフ首相を打倒する可能性が出てくる。

しかし、ラピード氏は、自身も首相の座を目指しているため、ガンツ氏と共に走ることは今の所ないようである。

ネタニヤフ氏とガンツ氏、どちらが首相になってほしいかとの調査では、ネタニヤフ氏と答えた人は36%、ガンツ氏と答えた人は35%と接戦であった。

www.mako.co.il/news-israel-elections/elections_2019-q1_2019/Article-305597cd2cf9861004.htm?sCh=31750a2610f26110&pId=2100566639

www.timesofisrael.com/polls-shows-gantz-could-defeat-netanyahu-if-he-heads-joint-list-with-lapid/

この他、これまで大きな発言力を持っていたナフタリ・ベネット氏は、ユダヤの家党を離脱して新右派党を立ち上げたが、予想議席数は4位で7議席。前国防相で、イスラエル我が家党のリーバーマン氏の党は、4議席。経済関連で支持者も多いみんな党(カフロン氏)も4議席であった。

先月、相棒のツィッピー・リブニ氏を突然切り捨てた左派で、野党代表である労働党(ガバイ氏)は6議席との予想であった。

前の総選挙では、合併していたアラブ政党2つは、今回は別れてそれぞれ6議席との結果になっている。

<政界のガンツ氏初演説への反応>

熱狂的な群衆の前で、堂々と現政権を批判したガンツ氏に対しては、右派左派双方から手厳しい批判が相次いだ。「国会に座ったことがない者がおこがましい発言だ。」「ユダヤ教政党と手を組みながら、安息日にバスを走らせようとしている。イスラエルの政治をわかってない。」など。

リクード(ネタニヤフ首相)は、ガンツ氏について、右派からも左派からも受け入れられるとしたら(右派と強調しないということは)、実際は弱い左派だと評している。

<石のひとりごと>

イスラエルの政治は本当に生き物ののようである。過去を見て予想することはまったく不可能で、予想外がどんどん出てくる。だからこそ、主のみこころが反映しやすいのかもしれない。政権がほぼ不動の日本の政治とは全然違うことを知っていただければと思う。

ガンツ氏が頭角を現しているが、世界一厳しい中東で海千山千、国内では生き物のようなイスラエルの政界で12年以上も首相をやってきたネタニヤフ首相の後を、政治経験0のガンツ氏が、そう簡単に継いでいけるのかどうか・・・少々不安でもある。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。