3回目総選挙か:ネタニヤフ首相統一政権案をガンツ氏拒否 2019.10.21

秋の例祭が終わると、イスラエルでは国内外で嵐が待ち受けている。2回目の総選挙で、連立政権立ち上げの使命を受けたネタニヤフ首相だが、連立を立ち上げることができず、来週水曜23日に、その期限28日を迎える。

その後、14日間の延長が認められているが、ネタニヤフ氏が延長を求めることはないだろうとの見通しである。

www.timesofisrael.com/netanyahu-wont-seek-more-time-to-form-coalition-says-likud-mk/

<これまでの流れまとめ>

半年の間に2回も総選挙を行ったあげく、結局過半数を占める連立政権も、また左右混合の統一政権樹立もならず、リブリン大統領は、やむなく”統一政権の樹立を期待して”ネタニヤフ首相に連立政権樹立の役割を指名した。

この時点で、ネタニヤフ首相のリクード(32)とユダヤ教政党を含む右派勢は、計55議席。対する中道左派ブルーアンドホワイト(33)が、労働党(6)と左派メレツ(5)と組んだとしての左派勢は、44議席であった。

ネタニヤフ首相は、まずは、ガンツ氏に、リクードとブルーアンドホワイト、2党だけの右派左派統一政権を持ちかけた。しかし、ガンツ氏はあっさりとこれを拒否。ネタニヤフ首相が、右派勢をひとつのブロックとして、ユダヤ教政党が必ず残る形をつくった上で、この話をもちかけたからである。

ガンツ氏がこれを拒否した時点で、ネタニヤフ首相が連立樹立の指名を返上するかとも思われた。しかし、ネタニヤフ首相はまだあきらめず、今も、連立立ち上げを模索している。

一方、ガンツ氏の方に、独自の連立立ち上げに向けた具体的な動きが見えてこなかったことから、ネタニヤフ首相は、仮庵の祭り中に、具体的な統一政権案をガンツ氏に再度持ちかけた。しかし、ガンツ氏は、やはり拒否した。  

しかし、もしかりに、ネタニヤフ首相に代わって、ガンツ氏が連立立ち上げをした場合、どのパターンでも、政過半数を割る不安定な少数政権となり、国会においては、リーバーマン氏のイスラエル我が家党(8)と、アラブ統一政党(13)が基本的にサポートするという条件の政治運営しか道はない。

ネタニヤフ首相は、「ガンツ氏、その相棒のラピード氏、リーバーマン氏は、アラブ政党の支持に依存する政治運営を計画している。これはヒズボラやイランに対抗できなくなる可能性を示唆するもので、イスラエルを危機に陥れるものだ。」と訴えるデビオクリップを流した。

これを受けて、ガンツ氏は、「ネタニヤフ首相。9月17日に選挙はもう終わっていた。あなたは連立を樹立できなかった。ビデオクリップを作っているヒマがあったら、さっさと指名を大統領に返上し、私にその役割をひきさたすべきだ。」との声明を出した。

<リブリン大統領はどう決断するか>

今後どうなるかだが、もし来週、ネタニヤフ首相が、連立立ち上げを返上した場合、まずは、リブリン大統領が、この使命をガンツ氏に渡すのかどうかが焦点となる。

チャンネル13によると、ガンツ氏が、イスラエル我が家(リーバーマン氏)とリクード(右派ブロックではなく、リクードのみ)の代表を招いて、この3者による統一政府を計画しているといった報道も出始めている。

www.timesofisrael.com/netanyahu-gantz-planning-government-with-backing-of-dangerous-arab-parties

いずれにしても、3回目総選挙の可能性はいぜんとして高いままである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。