西岸地区入植地に住宅800軒許可:イスラエルも米新政権直前すべりこみか 2021.1.18

ヨルダン川西岸地区入植地 出展:wikipedia

17日、イスラエル政府は、西岸地区に住宅約800軒の建設を許可した。入植地のユダヤ人たちはこれを「勝利」だとして喜んだ。

しかし、イスラエル国内の左派組織「ピース・ナウ」は、今回許可が出た地域の90%は、西岸地区に深く入り込んだパレスチナ人の地域で、特に200軒は、正式に許可が出ていない前哨地域だと指摘した。

イスラエルの西岸地区への進出に反対してきたEUの報道官は、この発表の翌日、「この政策は、国際法に違反するだけでなく、2国家(イスラエルとパレスチナ)設立という解決の障害になる」とコメントした。

今回のこの発表が、アメリカで新政権が発足するわずか3日前に出されたことから、イスラエルが、すべりこみで、事実をつくりあげようとしたのではないかとの見方が広がっている。

www.timesofisrael.com/israel-approves-some-800-new-settlement-homes-ahead-of-biden-inauguration/

<西岸地区ユダヤ人入植地はイスラエル領:トランプ大統領の世紀の取引>

トランプ大統領は、イスラエルとパレスチナの和平交渉はもはや、これまでの概念の中では、解決しないとうのが現状だとの見方を示していた。

その中で、そろそろ現実を見るべきだとして、出してきたのが、「世紀の取引」で、もうしっかり定着しているユダヤ人入植地はそのままイスラエル領として認め、それ以外の地域をパレスチナにするという案であった。

イスラエルは、一応、この考えを受け入れる様子を見せていたのであった。(受け入れたかどうかは不明確)。一方、パレスチナ側は完全拒否を表明し、今、両者の交渉はとん挫したままとなっている。

これについて、トランプ政権は、たとえ一方的にでも、世紀の取引をすすめようとしてきた。しかし今、この件については、特に大きな成果を見ることがないまま、トランプ大統領は、去っていこうとしている。

総選挙で、トランプ大統領が過半数をとれないとい結果が明らかになった後の昨年11月、ポンペオ国務長官は、中東や様々な地域で、テロ支援国家指定を取り消したり、新たに指定したりとまさに滑り込み外交を始めた。バイデン政権になっても、今の流れを変えるのが難しい体勢をつくりあげておくためである。

西岸地区については、特に、次期バイデン政権が、前のオバマ大統領と同様、西岸地区での入植活動を厳しく制限してくる可能性がある。このため、ポンペオ国務長官は、大統領の次ほどの位にある米高官としてははじめて、ゴラン高原と西岸地区入植地を訪問。「入植地は、イスラエル領である。」と明言したのであった。

mtolive.net/福音派ポンペオ国務長官:親イスラエル全開で、/

今回、イスラエルが、800軒近い家屋の建設を認めたのは、このトランプ政権の政策がまだ生きている間にと滑り込みで実施したものとと見られている。これについてのパレスチナ自治政府からのコメントはまだ伝えられていない。

<パレスチナ自治政府が総選挙発表:国際協調路線の次期バイデン政権に備えか>

この直前の15日、パレスチナ自治政府のアッバス議長(85)は、7ヶ月以内に西岸地区、東エルサレム、ガザ地区で総選挙を行うと発表した。こちらは国際協調を全面に出すバイデン政権発足を前に、新たに統一したパレスチナ人の政府として、アメリカとの関係を修復しようしているとみられる。

しかし、アッバス議長は、2005年にアラファト議長死去後に、議長に選出されて以来、在職16年になる。これまでなんども選挙を行うと発表してきたが、ハマスとの合意に至らず、毎回、結局実現しなかったことから、今回も実現するかどうかはかなり不明と見られている。

www.nytimes.com/2021/01/15/world/middleeast/palestinian-elections-abbas.html

17日、それを裏付けるかのように、ガザからイスラエルに向けてロケット弾が発射されている。被害はなし。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。