緊急!ガザ情勢急速に悪化中:南部にロケット弾の雨 2018.11.13

12日夕刻(日本時間13日深夜ごろ)から、ガザからイスラエル南部にロケット弾が降りそそぎ、ハマスとイスラエルが戦闘状態になっている。このままイスラエル軍が、ガザへの大規模な攻撃に入る可能性もあり、ガザ情勢は急速に悪化しつつある。ことの流れは以下のとおりである。

ガザでは、エジプトの仲介により、ハマスとイスラエルの間になんらかの関節的合意が成立したと伝えられ、金曜のガザ国境での暴動も一応の沈静化を見せていた。

また、合意に基づき、先週8日(木)には、カタールからの資金1500万ドル(約20億円:スーツケース3つに入った札束)と燃料が、イスラエルの国境からガザに搬入された。とりあえず、ガザの市民生活改善をはかり、長期的には、エジプトとイスラエルの国境閉鎖を緩和していくという流れであった。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5398709,00.html

CNNによると、カタールの出資金は、長期間未払いになっていたガザの公務員の給与として支払われたとのことで、ガザからは、とキャッシュを並んでいるガザ公務員の群衆の様子が伝えられた。カタールからの資金は、9日、10日と48時間以内にすべて、市民らに支払われたもようである。

edition.cnn.com/2018/11/11/middleeast/gaza-qatar-humanitarian-intl/index.html

ところが、その一方で9日金曜には、再び暴動と国境破りが発生。12日(月)には、ガザ領内での極秘の作戦を行っていたイスラエル軍部隊が、パレスチナ人にみつかって、交戦状態になった。この時、双方の司令官が死亡したのだが、その後、ガザからはロケット弾が断続的にイスラエル南部に撃ち込まれ、バスや家屋にも着弾して市民に重傷者も出ている。

急速に悪化するガザ情勢は以下のとおり。なお、現在も進行中のニュースであるため、今後も注目し、一刻も早い沈静化を祈っていただければと思う。

<ガザ内部で交戦:イスラエル軍少佐1人死亡>

9日(金)、国境で12000人のパレスチナ人がデモを行う中、1人がガザからイスラエル領内500メートル入ったホフ・アシュケロン地域のモシャブに侵入。グリーンハウスに放火する事件が発生した。これを受けて、南部住民たちが、ガザへ燃料や食料などを搬入するトラックの列を妨害するデモを行った。

住民たちは、パレスチナ人が家屋からわずか数十メートルのグリーンハウスにまで侵入できたことに怒りと不安を訴えている。この日のパレスチナ人による国境のデモでは、イスラエル軍に爆発物を投げつけたため、催涙弾で対応。パレスチナ人1人が死亡。37人が負傷した。

www.timesofisrael.com/southern-residents-block-gaza-cargo-crossing-in-protest-of-violence/

続いて12日(月)夕刻、イスラエル南部ガザ地区周辺地域で、ミサイルの警報が連続して鳴り響いた。飛来したミサイルは17発。このうち、3発はアイアンドームが迎撃した。被害は報告されていない。

ミサイルが飛来していたころ、ガザ北部カン・ユニス(国境から3キロ内部)では、極秘に任務を遂行中であったイスラエル軍の特殊部隊が、パレスチナ人にみつかり、交戦状態となっていた。

この戦闘で、ハマス関係者7人が死亡。イスラエル軍では、”メム”少佐(41)が死亡。兵士1人が負傷した。この後、イスラエル空軍が空爆を行いつつ部隊を救出・負傷した兵士は病院に搬送され、容体は落ち着いているとのこと。*メム少佐の本名は、任務の性質上か、極秘のままにされている・

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5397926,00.html

この時の空爆で、ハマス戦闘員6人が死亡した。ハマスは、特殊部隊が、ハマスのカッサム部隊司令官ノウル・バラカの暗殺に来ていたと主張している。イスラエル軍は、これを否定。軍の報道官は、「暗殺や誘拐ではなく、情報収集が目的だった。」と述べている。

死亡した少佐については、名前は公開されていないが、2人の子供の父親だったという。このランクの司令官が戦死するのは2014年のガザとの戦争以来であった。月曜に行われたメム少佐の葬儀には、リブリン大統領他、大勢が参列した。

一方、ハマスも、その指導者イシュマエル・ハニエが出席し、ガザ地区で死亡した7人の葬儀を行った。葬儀では、数千人の群衆が復讐を叫んでいたという。

www.timesofisrael.com/lawmakers-offer-condolences-after-courageous-idf-officer-killed-in-gaza/

ネタニヤフ首相は、第一次世界大戦の終戦100周年でパリを訪問中であったが、急遽帰国した。

<ガザからのロケット弾でイスラエル人重症:スデロット>

12日の日中、ガザとの国境を走っていたバスが銃撃を受けた。これにより、男性(19)が重症。運転手もショックで病院に搬送されたもよう。*負傷の経過についてはメディアによってまだ混乱がみられる。

午後5時前(日本時間0時前)以降、午後7時現在で、まだイスラエル南部からシュケロンまでアラームが断続的に続いている。すでに200発以上がイスラエルに向けて発射され、1発は、スデロットの家屋を直撃。さらにスデロットでは、ガス管が破裂して火災が発生している。

また破片などで数人が負傷しているもよう。こうした事態を受けて、イスラエル空軍が、ガザのハマスを攻撃している。

www.jpost.com/Israel-News/More-than-50-rockets-fired-from-Gaza-to-Israel-571687

なお、12日(月)、ガザ周辺地域の学校は閉校とされ、市民はシェルターの近くで待機するよう指示されていた。現在、スデロットはじめ南部住民は、シェルターに入っている。ネタニヤフ首相は緊急治安閣議を行っている。

www.jpost.com/Israel-News/More-than-50-rockets-fired-from-Gaza-to-Israel-571687

<石のひとりごと:どっちがはじめたか>

戦争は、いつでもはじまりうるのがガザ情勢だが、今回、ハマスは、イスラエルが、先にガザ内部で作戦を行っていたことが原因だと怒り狂っている。しかし、イスラエル軍関係者によると、こうした極秘の情報収集作戦は、これまでからも行われていたのであり、今回が初めてではないという。

同じような状況で始まったのが、第二インティファーダであった。当時、アリエル・シャロン氏が神殿の丘の丘に入ったことが原因だとして、パレスチナ人はバスなどへの自爆テロを繰り返した。確かにタイミングは悪かったが、同氏が神殿の丘に上がるのはその時が初めてではなかったと聞いている。

今回も、パレスチナ人たちが、怒りを正当化し、イスラエル国内での怒りで恐ろしいテロを行うことのないようにと祈るばかりである。

しかし、その前にパレスチナ人が、イスラエルに侵入して、グリーンハウスに放火し、イスラエル人農家の長年の努力のすべてを奪ったということについては、どう考えているのだろうか。

また、ハマスは、エジプトの必死の仲介によってカタールから膨大な資金をもらい、それをイスラエルから搬入してもらったばかりなのであるが、それに対する感謝などは、まったくゼロということのようである。

被害をうけまくっている南部住民を納得させるためにも、この先、イスラエルができることとしたら、いよいよハマスの一掃しか残らない感じではあるが、そうなると、ハマスではない一般のガザ市民たちが多数犠牲になることはさけられない。イスラエルの指導者は今、大きな決断にせまられている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。