組閣指名はラピード氏へ:ネタニヤフ首相組閣期限切れ 2021.5.6

リブリン大統領とヤイル・ラピード氏 出典:GPO

左派ラピード氏に組閣権発令

左派の未来がある党 ヤイル・ラピード党首

今年3月の総選挙の後、リブリン大統領から組閣を任じられたネタニヤフ首相(30議席)。28日間の期限までに、国会過半数になる連立政権を立ち上げることができなかったとして、4日、組閣任命権をリブリン大統領に返上するにいたった。

ネタニヤフ首相は、最後まで、ベネット氏にリクード側に着くよう交渉していたが、たとえ、ベネット氏の党がついたとしても、アラブ政党ラアムを入れなければ、過半数にならない。

また、ラアム党が入るとなると、今度はシオニスト政党が、連立に加わらないと宣言しているので、ネタニヤフ首相に過半数を獲得するチャンスはないということになる。これを受けて、ネタニヤフ首相は、組閣を諦めたのであった。

これを受けて、リブリン大統領は、まず未来がある党(左派・世俗派)ヤイル・ラピード氏(17議席)と面会。ラピード氏は、自分が組閣を行いたいと申し出た。

次にヤミナ党(右派)のナフタリ・ベネット氏(7議席)と面会。ベネット氏も、自分が組閣を行いたいと申し出た。

www.jpost.com/israel-news/rivlin-to-meet-lapid-bennett-as-consultations-begin-667245

左派ラピード氏と右派ベネット氏が共同組閣目指す

右派のヤミナ党 ナフタリ・ベネット党首

ベネット氏は、最終的に、ネタニヤフ首相とではなく、左派ではあるがラピード氏と組む方向で決めたようである。

なんとしても打倒ネタニヤフ首相とユダヤ教政党からの離脱をはかりたいラピード氏が、ベネット氏の協力を得るため、首相の交代において、まずはベネット氏が先に首相になることを受け入れたのであった。

少し前から、ラピード氏とベネット氏は、この条件を元に、左派、右派の違いを超えた統一政権にしようと交渉を行なっている。こうした流れの中で、リブリン大統領は、5日、左派のラピード氏に組閣を任せると発表したのであった。

しかし、右派、中道、アラブ政党と、いわば主張の違う全種類の政党が頭を寄せなければ、過半数にならない。今回、キングメーカーとして注目されたイスラム主義政党ラアム党は、リブリン大統領に、どの政党の党首を首相として推薦するかの意思表示をしなかった。今もまだ方針を明らかにしていない。

ヤミナから脱落者・まだまだ組閣は流動的

こうした中、5日、ベネット氏のヤミナ党から、1人の脱落者が出た。アミハイ・チクリ氏は、これまで無名で選挙名簿も5番目の人物。アミハイ氏は、「ベネット氏は、左派とは組まないと言っていたのに話が違う。自分は、左派と組む政府には加わらない。倫理的におかしいと思う。」と述べ、残念だがと言いながら、離党を決めた。

www.jpost.com/israel-elections/yamina-mk-wont-back-bennett-lapid-unity-government-667254

ラピード氏とベネット氏は、チクリ氏のような脱落者がこれ以上出る前に、組閣を終えてしまう必要があるとして、リブリン大統領の組閣司令が決まった今、マラソン交渉を開始した。2人は、来週中にも組閣を追えたい考えである。

ラピード氏、ベネット氏についで、こちら側の重鎮は、かつてはリクードのNO2と目されたが、離脱してニューホープ党(6議席)と立ち上げたギドン・サル氏である。サル氏も加えての3人は、閣僚は24人ということで交渉を進めているとのこと。

しかし、それにしても、今組閣の指名を受けたラピード氏の未来がある党は、第2党とはいえ17議席、ベネット氏のヤミナに至っては、たった7議席に過ぎないのである。

群雄割拠状態の政党にアラブ政党までをまとめなければならない上に、議席数が一桁のベネット氏がまずは、首相になるということがありうるだろうか。

これでもし政府が立ち上がったとしたら、野党は、最大議席数を持つリクード(30議席)と、3番目のユダヤ教政党シャス(9議席)である。まさに前代未聞。今までに通ったことのない道ということになる。

ネタニヤフ首相はまだ終わってない?

しかし、もし今、チクリ氏に続いて脱落者が相次いだり、交渉で各党の意見が一致しなかった場合、獲得議席数が最大のリクード、ネタニヤフ首相に権利が戻っていく可能性もゼロではない。

またこれで統一政権が仮に立ち上がったとしても、これだけの雑居政府が、どこまでもつかは、全く見通しがたたない。

www.timesofisrael.com/bennett-working-to-keep-party-on-board-as-he-pushes-for-unity-government/

また国会解散ということになれば、やはりネタニヤフ首相でなければというような流れになるかもしれない。メディアは、ネタニヤフ首相がまだ終わったわけではない、という見出しもある。イスラエルの政府はまだまだ流動的である。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。