米ロ関係緊張・その後 2017.4.14

シリアでサリンによる虐殺が行われ、アメリカがトマホーク59発で、シリア空軍基地を攻撃してから10日が経過した。

この間、トランプ大統領は、「アサド大統領は動物のように卑劣だ。それを支援するのはロシアの得策ではない。」と発言。対するプーチン大統領も、「米ロ関係は、トランプ大統領になってから悪化した。」と言うなど、米ロの関係が緊張している。

この12日、以前からの予定でティラーソン米国務長官がモスクワを訪問し、アメリカで新政権が発足してから初めてとなる米ロの直接会談が行われた。

これに先立ち、G7首脳会談が行われたが、ロシアに対する考えを一致させることができず、結局アメリカは国際社会代表ではなく、アメリカ単独の立ち場でロシアに対面した。

ティラーソン国務長官は、モスクワでラブロフ外相と5時間、その後、プーチン大統領と2時間、会談した。両国はまずは、誤解になっているところを話し合うとして会談を開始し、以下の点で確認がなされた。

1)アメリカとロシアの間には、非常に深刻な不信がある。

シリア問題について、アメリカは、今回、化学兵器を使用したのはシリア政府であり、アサド大統領は、もはや、今後の新しい国づくりから外すべきであると主張している。

一方ロシアは、相変わらず、化学兵器を使用したのがシリア政府軍だという証拠はないとし、アメリカのの攻撃は国際法違反であり、結果的に過激派を支援することになった。シリア問題をなお困難にしたと主張している。

*アサド大統領、あらためて化学兵器使用を否定

13日、アサド大統領は、フランスメディアのインタビューに答え、「先週のサリンによる被害映像は、アメリカのでっち上げだ。」と主張した。

アサド大統領は、「シリアは、化学兵器を持っていないし、たとえ持っていたとしても使うことはない。だいたい使う動機がない。」と訴えている。

化学兵器を所有して、使ったのはだれか。だれかが嘘をついているということになる。ティラーソン米国務長官は、アメリカとロシアは、とも核兵器をもつ大国であり、このような不信関係はあってはならないことであると語っている。

2)アメリカとロシアは、一致している分野、対テロで協力しながら、信頼関係を改善するよう努力する

米ロは、一致している点、つまり、ISISを始めとするテロ組織の撃滅を目標に、信頼関係の改善をめざす。

プーチン大統領は、先にシリア上空での米ロ戦闘機の協調関係維持を破棄するといったが、それを戻す用意があると匂わせている。

しかし今、アフガニスタンに巨大爆弾を落としたトランプ大統領にロシアがどう出てくるのか・・・先行きは不明である。

また、両者の関係は、シリア問題以外でも課題満載だ。中東に関しては次の通り。

①イラン問題

トランプ大統領は、その大統領選挙中、核兵器開発に関するイランとの合意を破棄する勢いだった。しかし、イランはロシアとは協力関係にある。

イランについては、来月、大統領選挙が行われる。最高指導者ハメネイ師の意向に反して、アフマディネジャド前大統領が出馬を申請した。アフマディネジャド大統領は、イスラエルに対する過激発言で知られる。

ややこしい時にややこしい人物の登場といえる。

②エルサレム問題

先週、ロシアは突然、アメリカより先に、世界に先駆けて、西エルサレムはイスラエルの首都と認めると発表した。ロシアは西エルサレムにすでにロシア”領地”(ロシアン・コンパウンド)を持っている。アメリカより先に大使館を、エルサレムに移動させる可能性を持つ。

しかし、イスラエルとしては、西だけで首都と言われるのは困る。東エルサレムにある神殿の丘を抜きにした首都はありえないからである。いずれにしてもアメリカかロシア、どちらが先に大使館をエルサレムに移動させるのか、微妙な競争になってきた感がある。

*ホワイトハウス報道官の失態

緊張した状況が続く中、ホワイトハウスのスパイサー報道官が、シリアの化学兵器使用を非難するにあたり、「あのナチスすら化学兵器を使わなかった。」と発言。イスラエルはじめ、世界中の注目と、避難をあびた。

いうまでもなく、ナチスは600万人のユダヤ人を、主にガス室に送って殺害したのである。イスラエルからはカッツ交通相が、スパイサー氏に謝罪と辞任を求める激しい批判を出したのに加え、ヤド・バシェムも、スパイサー氏を、自らのホームページに招き、ホロコーストを学んでもらいたいと言った。

スパイサー氏は正式に謝罪している。

www.jpost.com/Israel-News/Politics-And-Diplomacy/Yad-Vashem-recommends-Spicer-visit-website-following-controversial-comment-486796

2)朝鮮半島情勢でも米ロ関係緊張

シリア情勢と並行して、緊張しているのが北朝鮮問題である。北朝鮮が国際社会をあざ笑うかのようにミサイルの実験を続けているため、アメリカは、上記に記した通り、空母カールビンソンを含む艦隊を朝鮮半島に向けて移動させている。

トランプ大統領は、シリアに影響力の強いロシアと同様、北朝鮮に影響力のある中国に対し、「北朝鮮牽制に協力することは経済的にも中国に有利になるが、もし協力しない場合は、アメリカだけで対処するだけだ。」とツイッターしている。

これに対し、中国は、「平和的解決が重要だ。」とトランプ大統領に電話をかけている。ロシアは、アメリカの強硬姿勢に合意していない。モスクワでの会談ではこの問題についても話し合われたもようである。

edition.cnn.com/2017/04/10/politics/us-aircraft-carrier-carl-vinson-north-korea-strike-capabilities/index.html

<石のひとりごと>

トランプ大統領が、いとも簡単にものすごいことを言ったり、したりしている。ひやひやものである。

しかし、アメリカもロシアも、世界の大国であることを自覚しているので、そう簡単には戦争にはならないとは思う。ただ、戦争というものは、非常にささいなことで、一気に勃発してしまうものである。

黙示録のような世界になる下準備は進んでいるということである。

そうなると、1日も早く聖書の言う「救い」を受け取っておくことが得策。「救い」とは、神の前に自分が罪人であることを認め、それに対する罰を、神の子イエス・キリストが代わりに負ってすでに死んでくれたこと、しかしその後、イエスはよみがえって、赦しが実現したことを証明していること、これを信じ、神の完全な赦しを、感謝して、ただ受け取ることを指す。

そうなれば、いつ死んでも大丈夫。死んでも行き先は、罪人が行くとされる地獄ではなく、神のおられる天国ということになる。

聖書によると、人間は、死んで終わりではない。実は死んでからの方が長い。これこそ最も大事な終活ではないだろうか。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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