神殿の丘紛争でガザからロケット弾:右派制御に必死のベネット政権 2022.4.20

神殿の丘問題でヨルダンなど中東諸国がイスラエル非難

ラマダン中のエルサレム、神殿の丘で、パレスチナ人とイスラエル治安部隊が衝突し、パレスチナ人185人が負傷。400人を逮捕した。一方、神殿の丘で子羊の犠牲を捧げようとした右派ユダヤ人も20人が逮捕されるなど、東エルサレムや旧市街、西岸地区では緊張が続いている。

この一連の衝突の中で、一部の右派ユダヤ人が神殿の丘へ入ったことや、イスラエルの警察官らが、神殿の丘にあるアル・アクサ・モスクに踏み込んでいたため、またガザ地区はじめ、イスラム社会全体から、非難が噴出している。イスラエル人が、モスクの中に入ることは、イスラムへの冒涜であり、いわゆる「現状維持」の約束に違反するからである。

神殿の丘のイスラム教管理者であるヨルダンのアル・カサウナ首相は、在ヨルダンイスラエル外交員を召喚し、「占領者がパレスチナ市民の暴力を振るっている」と非難した。さらに国会では、神殿の丘でイスラエルと戦っているパレスチナ人を称賛するとまで言った。

www.timesofisrael.com/jordan-praises-palestinian-temple-mount-rioters-summons-israeli-envoy-for-rebuke/

これを受けて、ベネット首相は、特にヨルダンのカサウナ首相が、事態の沈静化ではなく、逆にテロリストらを鼓舞していると非難。パレスチナ人たちが、嘆きの壁に向かって石を投げたり、公共バスに石をなげたことなど、イスラエルの市民に危害を加えることは絶対に受け入れられないと語った。

パレスチナ人たちが、モスクの中に投石用の石をためこみ、そこから投石するので、他のイスラム教徒たちにとっても危険な行動であったと反論。この日、神殿の丘にきていたイスラム教徒は5万人だったという。イスラエルは、神殿の丘の治安維持の責任を持つ者として、すべての信仰者が、安心して礼拝できるよう約束するまでだと述べた。

衝突を避けるため、ベネット首相は、ラマダンが終わるまでは、すべてのユダヤ人、非イスラム教徒が神殿の丘へ上がることを禁止すると発表した。

しかし、ヨルダンのアブドラ国王は、エジプトのシーシ大統領に電話をかけ、この件についての話し合いをして非難声明を出した。最近、イスラエルと国交回復をすすめているUAE、バーレーン、モロッコもイスラエルを非難する声明を出した。

www.timesofisrael.com/uae-bahrain-join-condemnation-of-police-actions-amid-temple-mount-clashes/

ガザからロケット弾・イスラエルもガザげ反撃攻撃

神殿の丘での衝突が発生すると、18日、ガザからロケット弾が発射された。迎撃ミサイルがこれを撃墜して、イスラエルに被害はなかったが、ハマスの武器庫への報復攻撃を実施した。ガザからロケット弾が飛来するのは、4ヶ月ぶりだった。

発射したのは、イスラム聖戦とみられ、ハマスは、エジプトに今はイスラエルと戦いたくないと仲介を頼んだとの情報もある。

www.timesofisrael.com/idf-strikes-targets-in-gaza-hours-after-rocket-fired-at-south-ends-four-month-lull/

この後、イスラム聖戦は、膨大な地下トンネル施設を公開してみせた。イスラエルは、トンネルからの攻撃に対し、地下にもハイテクの防衛バリアを張り巡らし、地下からの侵入を防御する方策を講じているが、万が一にも、こうした地下トンネルを通じて、兵士や市民が人質に取られた場合は、困難な事態になると懸念される。

www.timesofisrael.com/islamic-jihad-shows-off-tunnel-city-as-it-readies-for-next-campaign-against-israel/

しかし、実際にところ、神殿の丘に関するこうした炎上は、今にはじまったことではない。これまでにもう数えきれないほど起こってきたことである。今度も、大きな戦闘に発展しないよう、沈静化していくことを祈るのみだが、問題は今、パレスチナ人だけでなく、右派ユダヤ教徒たちが、挑発ととられかねないイベントを計画しており、ハマスなどが、ベネット首相たちは、はその対処に必死となっているようである。

またガザでは、ハマスがエジプトに連絡を入れ、今はイスラエルとは戦いたくないと仲介を依頼したとの情報もある。

右派ユダヤ教徒がフラッグ・マーチを計画

今日20日は、過越中日の祭司の祈りの日である。ユダヤ人の群衆が嘆きの壁広場を埋め尽くすことになる。この時、右派の群衆が、イスラエルの旗を掲げて嘆きの壁まで行進する計画があがっている。警察これに許可を出さなかった。

しかし、右派たちはこれに従わず、今日、祭司の祈りの2日目、嘆きの壁まで数千人で、イスラエルの旗を掲げたフラッグマーチを決行するもようである。‘日本時間午後遅く)以下は、嘆きの壁の中継サイト。

西岸地区で2万人が離脱入植地へ行進:パレスチナ人と衝突

旧市街ではないが、このタイミングで、19日、西岸地区の右派入植者たち数百人(主催者は2万人と主張)が、2005年に政府が撤退を決めた元入植地ハメッシュまで、イスラエルの旗を持って行進した。この入植地周辺では、昨年12月、イシバ(ユダヤ教神学校)学生がテロで死亡する事件も発生していた。

一行には、右派政党のすモルトビッチ氏、ベン・グブール氏、またベネット政権を離脱したばかりのイディト・シルマン氏の姿もあった。

イスラエル軍が周囲のパレスチナ人居住地からの道路を封鎖し、マーチする右派たちとパレスチナ人が鉢合わせしないようにしたが、結局、衝突は発生。イスラエル軍が催涙弾を使い、パレスチナ人32人が負傷したとのこと。

www.timesofisrael.com/palestinians-clash-with-troops-in-west-bank-as-settlers-march-to-former-settlement/

こうした衝突はほんとうに、延々と、どこへ向かうのかもわからず、えんえんと続いている。いいかげん、うんざりと思うが、終わらないのである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。