東アレッポ:最後通告に応じず 2016.11.6

シリアでは、反政府勢力最大の拠点である東アレッポが、ロシアの支援を受けたシリア政府軍が包囲されたままの状況が続いている。中にいるのは反政府勢力とともに25万人の市民がいるという。

10月、シリアとロシアは、人道支援目的で一時停戦を図ったが、11月に入って、再び一時的な停戦を行い、反政府勢力には武器を持ったままでよいから東アレッポから出るようにと出口通路を2つ提供した。

また市民にも、東アレッポから脱出するよう呼びかけて通路を6本用意した。しかし、10時間たった現在も、誰一人脱出したものはおらず、人道支援物資の搬入も行われていない。脱出の途中で、シリアとロシア軍に攻撃されないという保証がないからである。

これはいわば、戦国日本でいえば、籠城している城を、取り囲んで、兵糧攻めにし、いよいよ限界になったと思われるので投降を呼びかけているという形である。

しかし、アレッポは、反政府勢力にとっては最後の砦とも言える町で、そう簡単に明け渡すことはないと思われる。住民にしても、散々家族たちを殺され、いまさら、シリア政府に投稿する気にはなれないのだろう。

こちらは、アメリカの大統領選挙の結果を待って、ロシアが総攻撃に入るのではないかとみられている。

www.bbc.com/news/world-middle-east-37869193

<ホワイト・ヘルメッツ>

シリア軍のバレル爆弾で破壊された建物のがれきの下から、人々を救出するシリア人ボランティアグループがいる。ホワイト・ヘルメッツと呼ばれ、ニュースでも注目されるようになった。シリア各地や、アレッポでも活躍している。

がれきの下敷きになった生後2週間の赤ちゃんを救い出す様子は、感動である。

ホワイト・ヘルメッツ HP https://www.whitehelmets.org
ホワイト・ヘルメッツFB https://www.facebook.com/SyriaCivilDefence 

<石のひとりごと>

モスルもアレッポも、状況はあまりにも地獄絵で、見ているだけで涙がでてくるが、日本からはあまりにも遠く、報道も少なく、この苦しみを理解しようという人はそう多くはないだろう。筆者とて、イスラエルにいるからこそ、多少は身近に感じられるのかもしれない。

最近、日本のアイドルグループ欅坂46が、ナチス・ドイツの軍服に酷似する衣装で歌い踊っていたことに対し、反ユダヤ主義を監視するシモン・ビーゼンタール・センターが抗議を申し入れるという一件があった。

可愛い系のティーンエイジャーの若い日本人女性が、殺戮と恐怖の象徴であるナチス風の衣装に身を包み、ほほえんでいる写真が、イスラエル・メディアのネットでも3日ほど、出っぱなしだった。

実際のところ、イスラエルでは、この件に関心をはらう人はほとんどなかったと思われるが、ここにいる日本人としては、その写真をみるたびに吐き気を催す思いがした。穴があったら入りたい、というような生易しい恥ずかしさではなかった。

その後、このグループの所属レコード会社の親会社とプロデユーサーが謝罪したという記事があったが、問題は、会社の落ち度もさながら、女性たちが、ネオナチでもないのに、そういう服を着て平気で踊ることができたという点である。あまりにも恥ずかしい無知としかいいようがない。

ところが、日本国内では、その点を問題視する記事はみあたらなかった。案の定、在日イスラエル大使館は、フェイスブックで、会社の重役ではなく、このアイドル女性たちを招いて、ホロコーストのセミナーを申し出た。ある意味、日本の教育に対する皮肉ともとれる。恥ずかしい限りである。

このような現状の中、中東は日本からはあまりにも遠く、自分にはまったく何の関係がないことであるので、モスルやアレッポについて、特に忙しい若い世代に、関心を持つことを期待する方が、無理があるのかもしれない。

しかし、せめて、世界には、地獄の苦しみを味わっている人もいるということに、たまには少しでも関心をもってもらえれば。。。とも思う。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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