最新 イスラエル情勢まとめ 2012.9.8

1.シリアとの関連

シリア内戦は、ダマスカス、アレッポ(日本で言えば東京都と大阪といった二大都市)で激しさを増しており、停戦のきざしは見えていない。これまでに死者は21000人。8月だけで5000人が死亡している。

政府軍が、至近距離で射殺するなど、残虐性を増している。兵士たちに麻薬を与えて人間性を麻痺させ、反政府勢力や市民を虐殺させているとの情報もある。

シリアを出た難民は8月だけで10万人。周辺諸国に現在、234000人がテント生活を送っている。シリア国内の難民は120万人。国内で食料などの支援を必要とする人は250万人(先月から2倍)と推測されている。

シリア総人口2300万人・・・現時点で、国民の20%以上が戦闘に直接巻き込まれているということ。また直接戦闘にまきこまれていなくても、国が全く機能していないため、全国的に無法状態で非常に危険である。

9月6日、シリア難民を含む100人を乗せた船がトルコ沖で沈没。これまでに58人の死亡が確認された。

国連のシリア問題特使が9月からブラヒミ氏に交代。近くアサド大統領との会談も期待されている。

<化学兵器に動き>

シリア内戦に関して、イスラエルと世界が最も懸念するのはシリアの化学兵器。これらがヒズボラやアルカイダに流れると非常に危険である。9月6日の記事で、アメリカ情報局によると、シリア政府が、サリンなどの化学兵器を国内20の町に分散していることがわかった。実際には、知られている以上の化学兵器があるはずだと懸念されている。

化学兵器が分散していると、テロ組織に流れることを阻止するのが難しいとみられる。

<アサド政権を支持するイラン>

ニューヨークタイムスによると、アサド政権を支持するイランは、イラク経由で、シリアの政府軍への武器の輸出を再開し、問題となっている。

2.イランとの関連

<イスラエルのイラン攻撃近し?>

イスラエルの紙面は、イラン攻撃に関する記事が連日トップである。IAEA(国際原子力機関)の報告によると、イランの一部の地下核施設で、ウランの濃縮活動が2倍になっているという(BBC)。核兵器開発活動(?)の証拠隠滅の形跡も指摘されている。

様々な憶測が飛び交う中、イスラエルは8-10時間におよぶ防衛会議を行うなど、11月のアメリカ大統領選の前にイスラエルがイランを攻撃する可能性も否定できないと言われている。しかし、政府内部からメディアへのリークがあり、ネタニヤフ首相は、防衛会議を急にキャンセルするなど、対処に追われている。

<揺れる?アメリカ>

オバマ大統領が所属する民主党は4日、「エルサレムはイスラエルの首都」という文言を、民主党綱領から削除する方針を発表。しかし、ユダヤ勢力などの批判をあびたのか、翌日、上記事項を綱領に復活させると発表した。ネタニヤフ首相は、オバマ大統領は信用できないとの見解を示している。

<非同盟国会議と、二極化する世界の流れ>

8月末からイランのテヘランで開かれていた非同盟国会議。参加したのは、120カ国の発展途上国。エジプトや国連総長も参加し、”イランは孤立していない”というメッセージを世界に発信する結果となった。会議では、イランの最高指導者ハメネイ師が改めて「新世界秩序」を宣言。西側中心世界への対抗姿勢を明らかにした。

*新世界秩序・・・大国が支配する現在の世界のしくみをかえようとする考えのこと。黙示録の時代には獣を中心とした新世界秩序になっていると思われるので、この発言は注目されるところである。

<中国、北朝鮮とイラン>

近年めだって軍事的にも経済的にも勢力を伸ばしている中国。イランでの上記、非同盟国会議ではオブザーバーとして参加していた。3日の読売新聞によると、中国はすでにアメリカ全土をミサイルの射程に治めているという。

また北朝鮮は、先週、イランと科学技術の分野において協力するということで正式な合意をかわした。

世界は、イラン、シリア、ロシア、中国、北朝鮮などと、アメリカやヨーロッパ、トルコ、湾岸アラブ諸国という二極化がすすんでいるようである。

<日本の立場>

尖閣諸島問題などで中国と日本の対立ムードが高まっている。もし世界の二極化という視点でみるならば、現時点では、日本はアメリカなど西側勢力の側に入っているといえる。

3.エジプト、ガザ地区との関連

隣国エジプトのムルシ大統領は着々と大統領としての力をつけてきている。シナイ半島には、観光地にまで戦車を駐留させ、治安の確保を行っている。シナイ半島への軍の派遣はイスラエルとの和平条約に反することであるが、「これは武装勢力掃討のためで、イスラエルとの和平は守る方針だ」とエジプトは言っている。

ただし、ムルシ大統領はイランを訪問。また最近、髪を覆った女性キャスターをテレビに登場させた。これらは、世俗派のムバラク政権下では行われていなかったことで、エジプトのイスラム化の一歩かと話題になった。

<相変わらず、ガザ地区・・・>

ガザからは、先週、ガザ地区周辺にむけて、再びロケット攻撃があり、イスラエル軍が空爆、パレスチナ人6人を殺害している。イスラエル側に被害なし。

4.西岸地区、パレスチナ関連

先のウルパナに続いて、未認可の西岸地区ユダヤ人入植地ミグロンの住民が撤退を完了した。
懸念されていた軍との大きな衝突はなく、1日で撤退は完了した。現在、撤退者は国が要した地域に移動している。

撤退がスムースだったのは、これらの地域では撤退したが、実際には西岸地区のユダヤ人住居数は増えるというネタニヤフ首相の”一部無くして多くを得る”政策が功を奏した形だ。

しかし、油断はならない。一昨日、ラトルンの修道院にひどい落書きがなされ、ミグロン撤退の対するユダヤ教過激右派による「値札」行為とみられている。治安当局は、さらに値札行為がおこらないよう、警戒を続けている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

コメントを残す

*