日常になるテロ・神殿の丘に監視カメラ装着へ 2015.10.29

10月初頭から急増し始めたナイフなどによるテロ。その後もほぼ毎日、主に兵士をねらうテロが一日に、少なくとも1件は発生している。

最初はエルサレムが多かったが、最近の発生現場は、ヘブロンなど西岸地区内で、兵士をねらったものがほとんどである。どれも、兵士を刺して、テロリストは射殺されるか、重傷になるかでよく似ている。

ここ1週間で、最もテロが多く発生しているのが、エルサレム南部でベツレヘムとの間にあるグッシュ・エチオンと呼ばれるユダヤ人入植地。ここでは兵士がナイフで刺されるテロの他、28日にはスーパー・ラミレビに買い物に来た女性がナイフで刺されて中等度の重傷となった。治安部隊は、グッシュ・エチオンの警備を倍に強化したと伝えられている。

なお、アルーツ7によると、2015年に入ってから発生したテロは1703件。2013年-1414件、2014年-1650件となっていることからテロはすでに昨年より増えたことになる。また1703件のうち778件は、この10月以降に発生している。

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<生活が大事?イスラエル国内のアラブ人>

上記のように、西岸地区では、パレスチナ人によるテロが続いているのだが、イスラエル国内、また東エルサレムでのテロや暴動はかなり落ち着いてきている。

これはテロのために、イスラエル国内で働く一般のアラブ人のビジネスが大打撃を受けており、今後ユダヤ人が、さらにアラブ系ビジネスをボイコットするようになることを恐れ始めたのではないかと分析する専門家もいる。

実際、ナザレの市長(アラブ・イスラム教徒)が、テロを正当化するアラブ系議員の横をたまたま通りかかった際に、「おまえはアラブ系市民を代表してない。ナザレには人が来なくなった。ユダヤ人はほとんど来なくなった。出て行け。」との本音を叫ぶところが以前に報道されていた通りである。

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<イスラエルとヨルダンの合意:神殿の丘の監視カメラ設置へ>

今回のテロの波は、神殿の丘をユダヤ人がとりに来る、アルアクサモスクを破壊しに来るという扇動が大きな影響を及ぼしている。

”ユダヤ人が、ハラム・アッシャリフ(神殿の丘のこと)に来て、アルアクサモスクを破壊し、ユダヤの神殿(第三神殿のこと)を建てようとしてる。ユダヤ人は、イスラムの敵である。だからユダヤ人は殺さなければならない”と扇動しているのである。つまり、原因は神殿の丘、ということになる。

そこで、ケリー米国務長官が、イスラエルとヨルダン、パレスチナ自治政府を仲介し、25日、両国は、神殿の丘に関する一定の合意に達したと発表した。

いくつかのポイントがあるが、一つは、神殿の丘に監視カメラを24/7で設置して、何が起こっているのかを監視することが新しい動きである。

これについて、イスラエルはおおむね歓迎しているが、パレスチナ人らは反対派していないものの、複雑な表情といったところである。

ただし、どこにつけるかなどの他、ヨルダンのアブダラ国王が、インターネットで映像を流すべきだと言うなど、まだ実際的なとりきめでもめているようである。この他では、神殿の丘を「分割」しないということで合意している。

この扇動に動かされ、パレスチナ人たちが、治安部隊に石や火炎瓶を投げつけるため、治安部隊が神殿の丘に入って暴動を抑えるということの繰り返しになっているのである。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4715519,00.html

*ユダヤ人は神殿の丘をイスラムから奪おうとしているのか?

神殿の丘は、ユダヤ人にとっては最も大事な聖地である。しかしながら、1967年六日戦争の後の取り決めに従い、その管理についてはヨルダンのワクフ(イスラム組織)が行うこととなっている。

ユダヤ人とクリスチャンは、神殿の丘を訪問してもよいが、そこで礼拝したりといった宗教行為を行うことは赦されていない。

イスラムだけが、神殿の丘で礼拝できる。その状態でイスラエルが治安を維持するという現状維持の約束がこれまで続けられて来たのである。

しかしながら、最近、第三神殿を建てることを目標に掲げるユダヤ教右派グループが、神殿の丘で祈ろうとする動きが活発になってきた。

もちろん、これら右派たちは、武器を持たず、約束通り、聖書や宗教書を持ち込む事もなく、ただ神殿の丘で、無言の祈りをささげているだけだと主張する。アルアクサモスクを破壊する計画はまったくないと主張している。

しかし、アラブ人からすれば、こうした右派ユダヤ人たちが、第三神殿の建設のビジョンを、公に宣伝している以上、いかに武力は使っていないとはいえ、イスラムの脅威になるというわけである。

<テロの波に便乗する?ISIS>

ネットで挑発的なビデオクリップを流すISISだが、このたび、マスクをした男が、イスラエル人なみの流暢なヘブライ語で、「我々はエルサレムを征服する」と言っているビデオが流された。

この男は、おそらくはイスラエルに住むアラブ人で、シリアのISISに加わっている者ではないかとみられている。

イスラエルのユダヤ人を恐れさせるつもりだったかもしれないが、この数日後、イスラエルからは、これに対抗し、このビデオをちゃかしたクリップがネットにアップされた。

イスラエルの若者たちがラップに乗せて、「おまえたちが1人を殺すたびに、そっちは10人死ぬ。」とか、「ナイフをもって襲って来るが、こっちにはF16(戦闘機)がある。」「おまえたちは、昨日は僕たちにフムス(ひよこまめのペースト)を出していたではないか。」など。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/202569#.VjHW46UWnA8

<テロ被害者・その後>

13日に発生したアルモン・ハナチーブでのバス78番でのテロで、重傷となっていたリチャード・ラーキンさん(76)が27日、死亡した。これでバス78番での死者は3人、テロの波発生からは11人目の犠牲者となった。 

一方で、先週ヘブロン近郊で首をナイフで刺され、重傷となっていた兵士(19)は奇跡的にも自発呼吸が戻り、回復に向い始めたという。この他、3人の重傷の兵士たちも少し回復に向い始めたとシャアリーツェデック病院は報告している。

ベエルシェバで、テロリストと間違えられて撃たれ、リンチまで受けて死亡したエリトリア人のハブトム・ゼルホムさんについて。イスラエルは、ゼルホムさんをテロ被害者に認定し、国で定められた補償を家族に支払うことを決めた。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4717696,00.html

<テロリスト・その後>     

先月、アフラの中央バスステーションで、ナイフを掲げたため、テロリストとみられたイスラム女性のアスラ・ジバン(30)は、治安部隊に撃たれ重傷となった。この事件がきっかけで、イスラエル北部のアラブ人らが暴力的なデモにまで発展したのであった。

しかし、調べによると、アスラは、ユダヤ人を殺そうとしたのではなく、状況を利用して、治安部隊に自分を射殺させるということで自殺を図っただけだったということがわかってきた。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4717800,00.html

この女性は、精神的な課題でこれまでにも自殺未遂をはかっており、テロで人を殺せるような人ではないということは、周囲の人々にはよく知られたことだった。これを受けて、イスラエルは、アスラをテロリストとして起訴せずに釈放する方針を決めた。なお、この女性には10才の娘がいるが、夫とは別れているとのこと。

15才のいとことともに、自転車の13才ユダヤ人少年を殺害しようとした少年テロリストのアフメド・マンサラ(13)は、いとこが射殺されたところ、現場から逃げようとして、車にはねられて負傷。逮捕された。

イスラエルの病院で傷の手当を受けていたが、まもなく、若年者拘置所に移され、殺人の裁判待ちとなっている。アフメドはすでに、15才のいとこと、ユダヤ人を殺害する計画だったことを認めている。

しかし、拘置所内で、他の年上の囚人(といっても少年ら)から殺すと脅迫されるなどの激しいいじめにあっているため、別のセルへ移動したという。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/202523#.VjHpAaUWnA8

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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