新型コロナにおけるイスラエル観光損失121億シェケル(約3800億円)2020.10.16

聖墳墓教会(ゴルゴダの丘) 出展:Wikipedia

イスラエルでは、今、新型コロナの影響で、観光業は96%落ち込むという大打撃を受けている。その損失は121億シェケル(約3800億円)にのぼるとされる。

しかし、幸いにもというか、不思議にも、コロナが到来するまでは、ずっと観光客の数を更新し、昨年一年間の観光客は、建国史上、最大の450万人を記録。受け入れに限界とまで言われていたのであった。

それが今や、どこへ行ってもがらっとしており、まるでSF状態である。巡礼が聖地エルサレムに来なくなるのは、1600年ぶりになるとのこと。以下はCBN Jerusalem Datelineがフェイスブックで報じたエルサレム旧市街の様子。

Join CBN News in Jerusalem’s Old City as Israel continues its lockdown to curb the spread of the Coronavirus pandemic.

Jerusalem Datelineさんの投稿 2020年10月15日木曜日

観光省では、10月初頭、青白党所属のアサフ・ザミール氏が、ネタニヤフ政権に敬意を持てないとして観光相を10月初頭に辞任。あらたにオリット・ファルカシュ・ハコーヘン氏が、観光相に就任したばかりとなった。

ファルカシュ・ハコーヘン観光相は、観光業の回復について、以下のような行程を考えている。

①エイラットのように特定の観光地のみの観光を国内、国外で認める。②大きなホテルではなく、家族が経営するゲストハウスの開業を認める。

www.jpost.com/israel-news/israeli-tourism-lost-nis-121b-this-year-due-to-covid-19-645698

今の死んだような観光業の状況から、イスラエルの観光業が、以前の様子に戻るまでには、まだまだ何年も先になるとの見方が一般的となっている。

<岐路に立つホテル業界:賃貸業へ移行も>

イスラエル在住の友人などによると、ロックダウンに入るまでは、ガリラヤ湖、死海などのホテルは、イスラエル人の利用者でけっこういっぱいであると聞いていた。

しかし、いまやロックダウンで、イスラエル人の動きも制限されている。イスラエルには、ホテルの部屋が5万室あるが、そのほとんど全部が空いているとのこと。各地のホテルはもはや生き残れないまでになっている。

エルサレムポストは、死海のカリヤ・ビーチ近くにあるビランキニ・リゾートホテル(80室)が、ホテルの部屋を賃貸に使う事業を始めたと伝えていた。それによると、トイレ、浴室つきの部屋が、税金だけでなく、電気水道、ワイファイもついて、一月2500シェケル(7万5000円)とのこと。

死海にも近い部屋で、まったくありえないような額である。ホテルによると、これでなんとか部屋の半分が埋まったとのことである。ハイファでフィットネスを経営しているアマザレグ夫妻は、ロックダウンに期間中、このホテルで過ごしたとのこと。夫妻は、予想外の休暇を楽しめたと言っている。

一方、ガリラヤ湖のエンゲブホリデーリゾート(180部屋)のマネージャー、ハイム・スタティヤフ氏は、ホテルは、おもてなしが命。ホテルを賃貸に出す気はないと語っている。スタテヤフ氏は、もうすぐ観光客ももどると、珍しく楽観的である。

イスラエルでは、若者も泊まりやすい額で部屋を提供するアブラハム・ホステル。ここでは、テルアビブの30部屋を賃貸に出している。テルアビブでは、家賃があまりにも高いので、こうしたホテルに移動した人もいる。

テルアビブの5つ星ホテル、クラウンプラザは、40部屋を賃貸とし、電気代等込み、ホテルの施設使い放題で、一月5800シェケル(19万円)で提供している。このホテルは、エルサレムと死海にもチェーンがあるが、賃貸に出しているのは、テルアビブのみとのこと。

ホテルチェーンのブラウンホテルは、逆に、ホテルの賃貸業を拡大している。社会のニーズに合わせて、経営を変換している。

www.haaretz.com/israel-news/.premium.MAGAZINE-the-tourists-aren-t-coming-so-israel-s-hotels-are-entering-the-rental-market-1.9231480

<ツアーガイドは勉強で忙しい>

イスラエルのツアーガイドたちは、通常、考古学や歴史の専門家も少なくなく、高学歴の人が多い。この人々がいまや、職なしであるのはもったいないと、政府は、様々な仕事を斡旋したり、職業訓練をオンラインで提供している。

いつもなら仕事に走り回って、家庭を崩壊させるひとも多いツアーガイドたちが、今は家で時間を持て余している。幸い、オンラインで、ガイド向けの勉強を提供しているのが、ヤド・ベン・ツビーという研究所である。

今ここで、キリスト教のスペシャリストをめざすガイドの訓練が行なわれている。筆者も参加しているが、ユダヤ人でも相当な深さで、新約聖書を研究している。あるユダヤ人学者は、「イエスは律法を廃棄するように言っていたのではない」という点をユダヤ律法から解説。

キリストの十字架における死と復活はユダヤの律法に基づいているとも述べ、完全な福音をユダヤ人から学んでいるところである。こんな人々にたちうちできるクリスチャンがいるだろうか。まさに、知って、イエスをキリストと認めないというのが、ユダヤ人のようである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。