新型コロナとのせめぎ合い:感染者24時間1000人で微増中 2020.11.27

ワクチン貯蔵システムを視察するネタニヤフ首相 出展:GPO

経済活動再開とワクチン準備状況

イスラエルでは、約1ヶ月のロックダウンを経て、感染者が3桁にまで下がったことを受けて、今週からは、学校、幼稚園など、教育関連施設への登校を再開。

通りに面した店舗は再開しているが、大型のモールについては、今日金曜から12月6日まで、15箇所でテスト・オープンとなった。今日は、ブラックフライデーなので、モールとしては、この日にはどうしても開けたいところだっただろう。

イスラエルでは、ワクチンの準備も着々とすすめられている。ファイザーのワクチン(90%の効果)50万回分は、早ければ12月に搬入が始まり、来年前半までには、800万回分すべてが、イスラエルに到着するみこみになっている。

国内では、これをを確保するための冷蔵設備を、イスラエルの大手製薬会社テバが完備。ネタニヤフ首相がそれを視察して、国民にアピールした。最初に届くワクチンは、まず医療従事者、続いて65歳以上の高齢者が優先されるとのこと。

イスラエルでは、イギリスのアストラゼネカ、ロシアともワクチンの契約をしているほか、国内産のものも、来年夏には完了する見込みと伝えられている。ただし、ワクチンの安全性については論議であり、接種は国民の義務にはしないとのこと。

www.timesofisrael.com/medical-staff-and-over-65s-first-report-lays-out-israels-vaccination-plan/

感染者数微増中:医師は第3波到来を警告

上記のように、状況はさほど悪くない感じではあるが、人々の外出が増えるにつれて、感染者数も微増し始めている。専門家の中には、ワクチンの稼働が始まる前に、第3波、4波が来るのではないかとの懸念が出ている。

イスラエルのか感染者は、1日の感染者が3桁にまで下がっていたが、26日、1068人と、再び1000人を超えた。検査数は、6万463件で、陽性率は、1.8%。現時点で陽性とされる人は、9422人である。

重症者は、282人で人工呼吸器使用者は122人。死者は、1日に4−8人で、これまでの総数は2826人。

問題は、一人の感染者が他者に何人感染させるかの再生産数が、1を超えたという点。これが1以下でなければ、感染者数は減らないということになる。したがってロックダウンの解除は、再生産数が0.8以下になってからにするというのが当初の計画であったという。

言い換えれば、このままいけば、ワクチンが稼働し始めるまでに、もう1、2波来る可能性があるということである。しかし、イスラエルも経済情勢は相当打撃を受けていることから、モールのオープンなどは撤回されなかった。

www.timesofisrael.com/hospital-heads-said-to-unanimously-agree-israel-heading-to-3rd-wave-of-virus/

なお、10万人中で計算した感染者数が最もの多いのは、ダントツ、エルサレムで758人。続いてナザレが、255人となっている。しかし、検査数からみた陽性率では、エルサレムは2%であるとこころ、ナザレは6%とかなり高い数字になっている。

事項で述べるが、パレスチナ人地区で感染が拡大するのに並行して、イスラエルのアラブ人居住区でも感染が拡大している傾向がみられている。

このため、こうした感染が拡大している地域へは厳しい措置を講じ、感染が拡大していない地域にあるモールなどへの解除は続行という形になっているものである。

自殺と家庭内暴力激増中か

国際女性シオニスト団体が発表したところによると、新型コロナによる2回のロックダウンで、今年3月からの家庭内暴力が300%激増している。

家庭内暴力に関する支援センターに助けを求めてくる人の数は350%増で、これに対応して、調査に出向いていく件数は、1日平均40件に上っているという。

チャンネル12が報じたところによると、今年3月以降、家庭内暴力で犯罪とされたケースは3757件。今年に入ってから夫の暴力で死亡した女性は20人。このうち18人はコロナ禍が始まってからだという。

www.ynetnews.com/article/S1mLRYjcw

今週、国際的に女性に対する暴力に反対するイベントが、世界の主要都市などで行われたが、テルアビブのハビマ広場でも活動家200人が集まって、女性暴力の現状を訴えるラリーを行った。

www.timesofisrael.com/world-rallies-against-domestic-violence-from-tel-aviv-to-rome/

自殺傾向も深刻だ。救急隊マーゲン・ダビッド・アドンによると、11月初頭付近の11日間の間に、自殺者が13人。自殺未遂が252人と急増している。自殺予防のコールセンターには、これまでにないほどの相談がよせられるようになっているとのこと。

www.timesofisrael.com/medics-warn-of-rise-in-deaths-by-suicide-with-13-in-past-11-days/

イスラエルでは、10月、労働人口の16%が失業し、10万人以上が失業者として登録していた。その後ロックダウン解除で仕事に戻れた人があったが、今も94万人が失業状態にある。なお、失業者として登録している人の約5分の1は、24歳以下の若者だという。

ロックダウンに入ったり出たりするたびに、労働者の動向が反応しており、だんだん、こうした状況が慢性化しつつあると懸念されている。

www.timesofisrael.com/employment-service-warns-of-chronic-unemployment-as-layoff-rate-surges/

石のひとりごと

こうしてイスラエルのコロナ情勢を追いかけているが、感染状況や、政府の方針と対策が、非常にわかりやすい。

日本ではPCRの検査数はイスラエルにくらべて桁が一つ少ない。PCRなしでも診断ができるとのことだが、PCRの検査数が少ないために、陽性率は、イスラエルが、今、1,6%(最大14%までいったことがある)であるところ、大阪では一時18%と驚異的な数字であった。

また、大阪では重症病棟がもう50%埋まっていると聞く。これも驚異的な数字だ。さらに、感染の再生産数。イスラエルでは、1をわずかに超えただけで、かなり深刻に捉えられているが、日本では、東京、大阪、兵庫で、すでに2を超えている。

これらの地域では、一人の感染者が平均2人に感染させているということである。日本では、検査数が圧倒的に少ないために、いったいなにが起こっているのかわからないまま、感染がどんどん拡大している可能性もあるのではないか。

ワクチンに関する方針もなかなか見えてこず、政府がどういう方針なのかもわかりにくい。

日本の家庭内暴力や、自殺者の数字は、メディアに、上がってくることが少ないので、よくわからないが、おそらく、イスラエル以上に増えているのではないか。コロナ情勢に関しては、イスラエルより、日本の感染拡大を覚えて祈らないといけないのかもしれない。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。