新コロナ・グリーンパス開始:3回目未接種の約200万人が特権失う 2021.10.4

10月3日コロナ閣議 GPO

ワクチン接種3回目の効率

日本と同様、イスラエルでも、第4波が徐々に軽減している様相にある。2日の陽性率は2.76(検査6万5000件)であった。

問題となっていた重症者の数も、先週金曜は575人と600人を下回った。このうち、420人がワクチン接種していなかった人。105人が2回接種を終えていた人。3回終えていた人は、35人であった。ワクチンが完璧ではないにしても、明らかに重症化を防ぐ効果は否定できないとして、ベネット首相は強く3回目接種をよびかけている。

しかし、3回目接種については、慎重論もある。これに対し、保健省は、60歳以上で重症化した人の数は、60歳以上10万人中の割合でみると、ワクチンしていなかった人が168.5人であるところ、ワクチン3回終えていた人は、2.6人であった。ワクチン接種していない60歳以上が、重症化する率は、3回接種終えた人の65倍という計算になる。

保健省が示す60歳以上重症化した人
水色:ワクチン未接種
黄緑:ワクチン2回済み
緑:ワクチン3回済み

また死亡率でみると、9月最終週に重症化して死亡した60歳以上は、10万人中6.43人/日であったところ、3回終えていた60歳以上の死亡率は0.13/日であった。保健省は、3回目ブースター接種の効果は明白だと発表している。

www.timesofisrael.com/life-saver-boosters-cut-elderlys-risk-of-covid-death-to-50th-of-unvaxxed-rate/

さらに、イスラエルでのこれまでのデータによると、3回目接種による副反応は、先の2回の時より少ないとの結果が発表された。しかし、若年層については、まだ慎重論があり、全国の教師の半数はまだ3回目を受けていないとの報道もある。

中東ジャーナリストのヨエル・ローゼンバーグ氏は、保健省があえて、3回目接種の副反応(血栓症や心筋炎)の経験を訴えるSNSを削除しており。保保健省もそれを認めたと報じている。

allisrael.com/israel-s-health-ministry-removes-comments-claiming-adverse-effects-from-the-covid-vaccine-on-its-social-media-post

コロナへの感染か、ワクチンの副反応か、どちらに備える方が重要か、これについては、それぞれが、決めなければならない。

しかし、イスラエルの政府は、国の全体像から社会経済を閉じないことへの必要性から、明白にワクチン3回接種を推奨している立場である。3回目接種を義務化するごとくの動きに出ており、ワクチ未接種者には厳しい状況ではないかと思われる。

新グリーンパスシステム開始:約200万人が特権から脱落

ファイザーのワクチンは、半年をすぎると、抗体の量がかなり減少し、ブレークスルー感染する確率が高まることが明らかとなっているが、イスラエルは世界に先駆けてワクチン接種を開始した国なので、2回接種してから半年を過ぎる人が、半数以上になっている。

このため、政府は新しいグリーンパスのシステムを、10月3日から開始した。それによると、ワクチン2回接種後、半年をすぎて3回目を受けていない人は、未接種者と同じとみなされることとなり、新しいグリーンパスを受けるには定期的なPCR陰性証明(有料)が必要となった。

さらに、これまでは、イベントなどへの入場の際、スマホにダウンロードしたグリーンパスを係官に見せることで入場できたのだが、新システムでは、接種・陰性証明となるQRコードをダウンロードしておき、それを入り口で読ませる形となったため、いわば前より厳しく出入りが管理される形になった。以下は、自分の新しいグリーンパスのダウンロードにインストラクション

この新システムは、それぞれが保健省のサイトに入ってQRコードを取得するのだが、3日、大勢がこのサイトに押しかけたため、プログラムがパンクしたという。3日の時点で、新グリーンパスの登録を終えた人は103万人であった。政府は、3回目接種を終えている人に限り、この新システムの適応を3日延期すると発表した。

www.timesofisrael.com/some-green-pass-rules-may-be-canceled-as-covid-morbidity-declines/

一方、この新システムが導入された時点で、ワクチン接種2回終えているにもかかわらず、グリーンパスが使えなくなった人は、200万人近くになるという。

今後はPCRを受けて、陰性証明を準備しなければならないが、検査代は有料である。この人々が今ワクチン会場に押しかけているとのこと。

こうした社会情勢の中で、これまではワクチン拒否であったが、気を変えて1回目の接種を受けた人もあり、イスラエルで少なくとも1回接種を済ませた人は613万人。まったく接種を拒否したままの人は80-90万人となっている。その内訳を見ると、アンバランスにアラブ系市民が多いとのこと。

3日コロナ閣議:制限解除はまだ慎重にとベネット首相

3日、新しいグリーンパス制度が開始されたのに合わせて、政府はコロナ閣議を開催した。ここで、イベントや施設入場にあたってのQRコード読み取りについては、3日延期しての火曜日からとされたのであった。しかし、7日木曜からは、業者がこのシステムをきちんと導入しているかどうかを、警察がチェックに動き始めるとのことである。

ベネット首相は、第4波が収束に向かっているとの認識を表明しながらも、今、ワクチンを復活させてはならないとして、行動制限の緩和にはまだ踏み切らない方針を続けると発表した。特に子供たちが本格的に学校へ戻っていることを挙げ、検査体制を強化して、陽性を早期に発見、早期に隔離する方針を続ける。クラスでミュージアムに行く場合などは、このために特別な検査を行うとしている。

以下は保健省のガイダンスのサイト(ヘブライ語だけでなく英語もしっかりある)非常に細かい。

corona.health.gov.il/en/directives/green-pass-info/

石のひとりごと

コロナ禍が始まってから1年半以上となった。最近の動きを見ていると、それぞれの国の国民性や、その政府の動き方によって、感染状況が変わってきている。

イスラエルは相変わらず必死の様相だ。まさにコロナとの戦時体制である。ベネット首相がロックダウンはしない方針ではあるが、海外からの旅行者受け入れがまだ始まる見通しすらたっていない。エルサレムの通りでは、閉まっている店もあり、通りにいる人の数は、以前と全く違うと、ツアーガイドの友人が嘆いていた。ツアーグループをよくお連れしたダン・パノラマホテルは、今はコロナ用ホテルなのだという。

イスラエル人は多様で、日常はかなりいい加減である。しかし、政府は、国民を守るという一事については、気迫が違っている。徹底的に計算し、先を読んで準備し、多くの対処をこころみる。当然失敗もあるが、それよりも、むしろなにもしないという政府を国民は受け入れない。

神の守りを信じないというわけではないが、これまでの迫害の歴史から、何があってもおかしくないと思っているので、とにかくできる限りの準備や、対処をしようとする。そうしてもう限界・・というところで、神が助けに来るというパターン・・・これが正しいのかどうかは別として、これが、イスラエルの生き方である。

一方、日本は戦後定められた憲法からも、イスラエルのような動きはできない国である。ワクチン接種のスタートは世界に遅れをとってしまったが、その忠実な国民性からして、もう欧米諸国に追いつき追い越す勢いとなった。今日のニュースでは国民の60%が2回接種を終えている。さらには、他国とはくらべものにならないほど、手洗いやアルコール、マスクもきちんと着用している。

イスラエルと違い、日本政府は、ワクチン接種や陰性証明などを政府レベルで義務付けることは難しい。しかし、実社会では、国内ツアーをワクチン接種完了者に限るとする宣伝など、市民レベルではこれが、すでにじわじわと出回っている。政府に強制力はないが、国民は、それぞれが粛々と自衛し、業者もサバイバルをかけて様々な提案をし、挑戦しているというのが我が国である。明確ではないが、じわじわなのである。

感謝なことに、日本では今、イスラエル以上に、コロナ感染者が急減している。これがなぜだかわからないと、専門家も普通に述べている。コロナについては、まさに人間の知恵を超えているということなのである。こうなってくると、もはや、イスラエルでのコロナの動きも、日本にはあまり参考にならないような気もする。

今日実家近くのハローワークの前を通りかかったら、ものすごい数の車がその駐車場入り口前で並んでいた。車を持つほどの経済力がある人々が、仕事をさがさなければならなくなっているのかとショックだった。イスラエルと違って、コロナ激減を受けて一気に緊急事態宣言を解除した日本だが、このままコロナから逃げ切って、社会経済活動が、軌道に乗り、回復できるようにと祈る思いだ。

また今日新しく発足した岸田内閣が、「喉元過ぎれば暑さ忘れる」に陥らず、次なる波が来る来ないにかかわらず、多少は危機対応に行き過ぎるほどのイスラエルを見て、いまのうちに、いざというときに危機対応できる内閣チームづくりができるようにと祈る。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。