断腸の囚人釈放再び 2013.10.29

8月に、アメリカの圧力で始まったイスラエルとパレスチナの和平交渉。秘密裏に今もすすめられているが、何が話し合われているのかは、ほとんど外部には聞こえてこない。

この和平交渉再開の条件として、イスラエルは9ヶ月の間に104人のパレスチナ人の囚人を釈放するということが定められている。

釈放する囚人は、1993年以前にイスラエル人を殺害するなどのテロ行為で逮捕されたパレスチナ人テロリストの中から選ばれる。すでに8月、一回目となる26人の囚人が釈放され、今週、二回目となる26人の釈放が予定されている。

今回は、右派で、囚人の釈放に強く反対するユダヤの家党(ベネット党首)が、直前になって囚人釈放を禁止する法案を出し、二度目の釈放をやめさせようとした。

国会はこの件で激しく紛糾したが、最終的に、ネタニヤフ首相はじめ、国会はこれを否決。2回目の囚人26人の釈放が決まったのである。

昨夜深夜、釈放される囚人の名簿が発表された。以後48時間以内に、犠牲者家族は不服申し立てをすることができる。しかし、それはほぼ確実に拒絶されることになっている。

したがって、2回目26人の囚人釈放は今夜夜中(日本時間30日朝)。21人は西岸地区へ、5人はガザ地区へ釈放されることになる。

<不条理きわまりない約束!?>

この和平交渉に伴う囚人釈放は、あまりにも不条理としかいえない部分がある。まずは、殺人犯が、刑期を終える前に釈放されるということ自体、不条理である。

さらに、和平交渉でまだなんの成果も出ないうちに釈放するという点である。もしこの和平交渉が決裂したら、それまでに実行した囚人釈放はまったく無駄になるということを意味する。

しかも、和平交渉でいったいどんなことが話し合われているのか、どんな進展があるのかも、国民にはいっさい知らされていないのである。犠牲者家族の怒り、痛みは想像するにあまりある。

テレビでは、今回も、犠牲者家族が、「まるで、愛する家族がもう一度殺されたみたいな気がする。」と涙ながらに国に対する怒り、痛みを訴えていた。

また、28日夜には、犠牲者家族や、釈放に反対する市民が、オフィル刑務所前に集結して釈放反対を訴えた。

<パレスチナ側>

しかし、パレスチナ人にとっては、殺人犯ではあってもテロリストではなく、”自由の戦士”、愛する息子たちである。家族たちは囚人の釈放を心待ちにしている。(オリーブ山便り8月14日参照)

これら釈放された囚人は、第二の人生を歩むことになるのだが、実際は、二度とテロをしないように、スパイの厳しい監視下におかれることになると、パレスチナ人たちは言っている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

コメントを残す

*