戦闘激化・イスラエル人4歳児死亡 2014.8.23

イスラエルでは19日の停戦期限が切れ、交渉が頓挫して以来、戦闘が激化の一途をたどっている。20日夜からの24時間で、イスラエル南部はじめ、テルアビブ方面へ飛来したミサイルは、計168発と、これまでの最高を記録した。

イスラエルもガザへ、1夜に92カ所と激しい空爆を行っている。いったん帰宅で呼び戻された予備役兵も1万人が再招集されている。

特に集中してミサイル攻撃を受けている南部のシャアル・ハネゲブでは22日、ダニエル・トレガーマン君(4)が、迫撃砲にあたって死亡した。当時警報を聞いた両親は、まず下の2人の乳児を防護室に入れ、外にいたダニエル君の救出に向かったが、間に合わなかったという。

小さな子供が複数いる家庭の場合、数秒しかない時間にどの子供を先に救出するか、一瞬の決断をしなければならないということが問題になっている。ダニエル君の両親は、まさにそれを経験する結果になった。

トレガーマンさん一家は、イスラエル軍からの「帰宅可能」指示を受けて、数日前にシャアル・ハネゲブの自宅へ帰宅したものの、情勢悪化を受けて、北部への避難を計画していたところだった。

ガザ付近のキブツでは、ダイニングルームにロケット弾が直撃するケースも出て来ている。テレビでは、いったん南部の自宅に戻った家族たちがふたたび北部へ大型バスなどで移動する様子が報じられている。

この他、ベエルシェバでも、道路に着弾したロケット弾で、男性が重傷となった。

<イスラエル軍の方針転換か?>

ハマスがこれほど激しい攻撃をしている背景には、19日のイスラエルの空爆で、ハマス軍事部門の大物司令官モハンマド・デイフがピンポイントで攻撃されたことがあげられている。

これについて、イスラエルはモハンマドは死亡したと主張しているが、ハマスは、これを否定している。いずれにしても、モハンマドの妻と8ヶ月になる息子が死亡し、ガザでは、激しい怒りの中での葬儀が行われた。

さらにイスラエル軍は、ハマス軍事部門の主要幹部2人を暗殺した。この3人の暗殺はハマスにはかなりの打撃になったとみられている。

急に暗殺が成功しはじめたことから、イスラエルの諜報機関に何か大きな動き(有能なスパイが現れたなど)があるのではないかとも言われる。

<ハマス:イスラエルへのスパイだとして18人を処刑> www.bbc.com/news/world-middle-east-28896346

ハマスは、イスラエルに情報を流しているとして、頭部を至近距離で撃つなどして少なくともガザの住民18人を処刑した。しかし、これは今に始まったことではなく、これまでに30人はイスラエルとの協力容疑で処刑されたことがわかっている。

ガザ地区内部からは、ハマスに不満を訴える声が時々漏れ聞こえて来ている。しかし、まだ表面に現れて来るほどではない。

<停戦に向けて奔走するアッバス議長>

ガザ地区内部では、戦闘が再開されたことにより、ガザ市民も避難に奔走している。国連の学校に設置された避難所に逃れているものの、4才のダニエル君を死に追いやったミサイルはそうした避難所から発射されたとイスラエル軍は伝えている。

現在、パレスチナ自治政府のアッバス議長は、再度の停戦、交渉に向けて奔走している。

木曜、カタールにいるガザの外にいて指令をだしているハマスのカリッド・マシャアルを訪問し、統一した政府として、国際社会に”イスラエルの占領”を停止することを要求することで合意。金曜にはカイロ入りして、停戦について模索している。

しかし、イスラエルは、今更パレスチナ側の要求による停戦への話し合いをしても時間の無駄だとして、こうした動きに応じる気配はない。

ヤアロン国防相は、イスラエルは今後も時間や場所を問わず、ハマス指導者を殺害すると言っている。

イスラエル軍は23日、ガザ全域のパレスチナ市民に向けて、「ハマスの指導者があなた方をさらなる戦闘に引き込んだ。ハマスがあなた方の財産をテロ目的に利用することがないようにしてください。あらゆるテロの場から離れてください。」とする警告メッセージを配信した。(イスラエル軍からの情報)

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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