地上戦3日目:2人目の市民犠牲者 2014.7.20

境界防衛作戦12日目、地上軍侵攻3日目の19日。イスラエル軍はガザで、空軍が空爆する中、戦車と陸軍の歩兵たちが、トンネルの捜索破壊、武器、ロケット、ミサイル発射地の摘発を続けている。

トンネルは、民間人の家の下にあり、近づくと罠が多数しかけられている上、戦闘員が潜伏している。イスラエルの地上軍は、銃撃戦を繰り返しながら、19日、地下トンネルの入り口になる縦穴3本を摘発した。

作戦がはじまってからこうした縦穴34カ所と、それに続くトンネル13本を破壊した。なお、トンネルはまだまだあると思われる。(添付図:イスラエル軍)この他、地下の武器庫も摘発中。19日には、武装戦闘員13人を逮捕している。

地上戦が始まってからの戦闘で、これまでにパレスチナ人70人が死亡。このうち20人は19日に死亡。イスラエル兵2人も19日に死亡した。

なお、境界防衛作戦が始まってからのパレスチナ人の死者は計340人。イスラエル人の死者は5人となっている。

<エシュコル地方にテロリスト侵入・銃撃戦>

昨日紹介したエシュコル地方だが、ロケット弾の雨だけでなく、19日朝、再びトンネルからテロリストが侵入。住民は、午後に警戒が解除されるまで家にこもるよう指示された。

今回の侵入グループは9人で、イスラエル軍兵士に扮装していたという。侵入する前に、イスラエル軍に射殺されたが、銃器の他、対戦車砲も持参しており、もしそのままイスラエル領内に入っていたら、大惨事になるところだった。

この時の銃撃戦でイスラエル兵のアダル・バルサノ軍曹(20)、アモツ・グリンバーグ少佐(45)が死亡した。

それにしても、トンネルの数は予想以上に膨大で、いったいどこからテロリストがイスラエル南部地域に現れてくるかわからない。Yネットによると、ヘリコプターがガザとアシュケロンの間の上空を回りながら、テロリスト侵入を警戒していたと伝えられている。

イスラエル軍はやり過ぎとの批判を受けているが、イスラエルにそれを気にしている余裕はない。地下トンネル網は私たちが想像する以上に膨大で、蟻の巣のように、ガザ地区地下からイスラエル領内に向かって潰しきれないほどに広がっている。

トンネル周囲やその上にある家屋などには、様々な罠がしかけられ、神経をさかなでするような厳しい状況が続いている。無論、イスラエル軍はこうした状況に十分訓練と準備をしているのだが、実戦で兵士たちが直面する状況は、想像を超えるストレスである。

この他、多量の爆発物をしかけられたろばが、イスラエル兵が集まっているところに近づいてきた。怪しげな動きをしているろばを発見したイスラエル軍は、これを射撃して未然に爆発させ、被害はなかった。

動物を使う自爆テロは、ハマスには珍しくない手口だが、イスラエル軍は「ショッキングな出来事」と報じている。

<ディモナでベドウィン男性死亡・ 4ヶ月乳児重傷>

ガザからのミサイルも相変わらず続いている。エシュコル地方、アシュドド、アシュケロンに加えて、今日はディモナにも着弾した。

ディモナに着弾したミサイルで、ネゲブ地方のベドウイン族のアダイさん(32)と、同じ部族の5才の子供、4ヶ月の赤ちゃんと女性が負傷した。このうち、4ヶ月の赤ちゃんが重傷で、ベエルシェバの病院に移されて集中治療を受けている。

アダイさんの家族は、「警報はならなかった。」と訴えたが、たとえ鳴ったとしても、ベドウィンたちはテントに住んでいて地下シェルターはない。

夜になり、ベエルシェバや、テルアビブ近郊などイスラエル中央部へ、多数のミサイルが撃ち込まれた。迎撃ミサイルがよく防いでいる。

スデロットでは、夜間にガザ地区をながめて、イスラエル軍の空爆や、迎撃ミサイルがロケット弾を撃墜するたびに歓声をあげる市民の様子がテレビで紹介されていた。

エルサレムでは、ここ数日サイレンもなく、ごく普通の日常が続いている。

<ハマスのミサイル、あと何発残っている?>

これまでにガザから発射されたミサイルは少なくとも1770発。つまりハマスが1万発持っていたとして、17%を使ったことになる。さらに侵攻中のイスラエル軍が破壊しているミサイルは30-40%。

推測に過ぎないが、ハマスはこれまでに保有するミサイル半分を失っているとみられる。
www.jpost.com/Operation-Protective-Edge/Israel-says-Gaza-has-used-up-or-lost-half-its-rockets-363478

一方、イスラエルがこの12日間に費やした戦費は、人的被害は別として、ハアレツ紙によると、5億8500万ドル(約600億円)にのぼる。 http://www.haaretz.com/business/.premium-1.606091

<ガザ地区難民の様子>

難民となったガザ市民たちは、国連が設立した小学校の避難所に増えつつあり、その数は5万人となった。国連職員によると、毛布などの寝具はおろか、食料や水二も不足している。人々はイスラエルにむけて激しい怒りを訴えている。

19日、イスラエルは、医療物資やマットレス、食料など人道支援物資20トンを載せたトラック5台分をガザ地区へ搬入させた。

イスラエルのテレビニュースは、イスラエル国内だけでなく、こうしたガザ地区内部の様子も映像で伝えている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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