国際社会からの停戦への試み 2021.5.17

オンラインで開催された国連安保理 スクリーンキャプチャ UN

本格的な戦闘が始まってから、イスラエル側の死者は、子供1人を含む10人。パレスチナ側は197人。このうち58人が子供だとガザ保健省は報告している。戦闘がエスカレートする中、国際社会の停戦への試みが続けられている。

アメリカ:イスラエルの防衛権を認める

アメリカは、まだイスラエルに派遣する大使を決めていないなど、不思議に中東への介入を遅らせている傾向にある。ガザとの戦闘についても、バイデン大統領の動きはなかなか見えにくかった。

しかし、15日、バイデン大統領は、ネタニヤフ首相、アッバス議長と電話会談を行なった。

ネタニヤフ首相は、イスラエルが今攻撃しているのは、ハマスに、「次回イスラエルを攻撃した場合、どんなことになるかをしっかり根づかせておきたいので、今も攻撃を続行している」と説明。ガザの市民にできるだけ、被害が及ばないよう、全力を尽くしていると伝えた。

これに対し、バイデン大統領は、ホワイトハウスは、基本的に「ロケット弾攻撃を受けているイスラエルには、国防の権利があることを認める」立場であるとネタニヤフ首相に伝えた。

しかし、同時に、ガザのメディアが入っていたビルの破壊については懸念していること、また、アメリカは、イスラエルとパレスチナという2つの国ができる2国家案を支持していることを強調したとのこと。

パレスチナ自治政府のアッバス議長とは、イスラエル国内での紛争について話し合ったという。

www.cnbc.com/2021/05/15/biden-speaks-to-israeli-palestinian-leaders-as-violence-escalates.html

ブリンケン米国務長官は、外交的停戦をめざして、関係する首脳を対話するなど、仲介に乗り出している。対話先は、エジプト外相、カタール副首相兼外相、サウジアラビア外相、フランス外相などである。

ブリンケン国務長官は、「とりあえず、双方全てが暴力を停止する必要がある」と述べた。しかし、イスラエルはこの後もガザを攻撃したのであった。

国連安保理:共同声明に至らず

国連安保理は、この件での臨時の会議をすでに3回開催。イスラエルとパレスチナ自治政府それぞれからの訴えを聞いている。

安保理は、ノルウェー、チュニジア、中国の要請で、即時停戦を求めるとする声明を出そうとしたが、アメリカが3回、これを阻止したとのこと。

安保理が命じて、一時停戦になっても解決にはならず、またすぐ同じことになってしまう可能性が高いことから、アメリカは、今しばらく、外交的な措置を進めたいと言っている。それでブリンケン米国務長官が、精力的に動いているということである。

国連は中東和平への特使として、トール・ウエンズランド氏を、中東へ派遣。この週末から、イスラエルとハマス、エジプトとの間で仲介を試みている。

www.timesofisrael.com/for-3rd-time-us-blocking-joint-security-council-statement-urging-ceasefire/

www.timesofisrael.com/at-un-security-council-us-says-working-tirelessly-to-end-gaza-fighting/

在米イスラエル大使館スポークスマン・エラッド・ストメイヤー氏解説

ストメイヤー氏は、17日、国連安保理での動きについて、アメリカのサポートにイスラエルは非常に感謝していると語った。

国連安保理では議論をしただけで、共同声明を出すということが目標ではなかったという。停戦に向けた共同声明をだすことの最大の問題は、イスラエルという独立民主国家とテロ組織であるハマスを同等に置くことにあると強調する。

たとえば、ハマスが東京へロケット弾を撃ち込んできた場合、日本はそれに対する防衛行動を起こすだろう。その場合、日本に対して”停戦”という言葉はおかしいということになる。攻撃しているハマスが非難されるべきなのである。

また、ストメイヤー氏は、国際社会はハマスが、イスラエルへの攻撃だけでなく、ガザの市民を人質のように扱っているということも理解するべきであると強調する。

ガザ市民の犠牲者が出ていることについて、ハマスが人間の盾にしているということを見逃してはならないということである。

国連安保理ではアメリカがイスラエルの側に立ってくれたので、大きな動きはなかった。今後、国連総会でこの件が議論される可能性はあるが、まだこの先、国連でどうなっていくかは明らかでないとのこと。

石のひとりごと:ひょっとしてイスラエルはそれほど孤立してないのか?

欧米諸国では、イスラエルに反発する大規模なデモが発生し、一方でイスラエルを支持するデモもありで、これまでからも指摘されている分断が深刻になっている。どちらかに加勢する意見は出しにくいだろう。

また、イスラエルからは、もし、ワシントンやロンドンに、イスラエルに今降り注いでいるようなロケット弾が飛んできたらどうなのか、考えてみてほしいとの声が出ている。ハマスがテロ組織であることからも、国際社会も一概にイスラエルを批判することもできにくい。

また世界的に見ると、今は、中露の専制主義国と、アメリカを中心とする民主主義国の間に亀裂が深刻になっている。コロナ情勢で、欧米がもたもたする間に、中露が大きく世界に進出しはじめている。今は、民主主義国家間でもめている場合ではないことからも、アメリカとの強調も必要だ。

もしかしたら、ネタニヤフ首相は、イスラエルが孤立する難しい立場にあるようで、実際には国際社会は否定できないとの見通しから、今、ガザへの徹底攻撃を続行しているのだろうか。

たんなる石のひとりごとだが。。いずれにしても、イスラエルは今、知恵の上にも知恵が必要な時代にいるとようである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。