停戦前の戦闘激化か?激しい攻撃の応酬続く 2021.5.19

スクリーンショットhttps://www.ynetnews.com/article/4I0NG15Z4

ガザとの戦闘が9日目に入った。アメリカとエジプトガザ再建にが動き始め、18日、エジプトのシーシ大統領が、ガザ再建費用として、5億ドルを約束すると発表した。

www.reuters.com/world/middle-east/egypt-allocate-500-mln-gaza-rebuilding-effort-presidency-2021-05-18/

19日にも停戦になるのではとの見通しも出ている中、18日、ハマスが攻撃が再開。イスラエル側で2人の死者と多くの負傷者も出た。イスラエルもガザへの攻撃を強化している。

ロケット弾直撃のモシャブでタイ人労働者2人死亡・8人負傷

上記迫撃砲攻撃と同時に、イスラエル南部へのロケット弾攻撃もはじまった。ガザに近いエシュコル地域のモシャブ・オハッドでは、ロケット弾が直撃。タイ人労働者ら10人が負傷。このうち2人(2人とも30歳代)は重症であったが、病院へ搬送される途中死亡した。

このモシャブには、なんと、外国人労働者のための防空シェルターがなかったという。エシュコル地方ガディ・ヤルコニ市長は、政府にシェルターを供与するように要請していたが、まだ届いていなかった。安全規定を満たしていない環境のままにしていたことが、この悲劇を生んだことになる。

アシュケロン、アシュドドでもロケット弾攻撃があった。アシュドドでは、高層ビルにロケット弾が直撃。幸い負傷者はなかった(以下クリップ)。ベエルシェバに到達したロケット弾は、アイアンドームが撃墜したが、1発が駐車中の車両に当たって、一人が負傷した。

www.ynetnews.com/category/3083

以下はアイアンドームを取材したTBSのクリップ

人道支援物資搬入の検問所へ迫撃砲

18日午後、ハマスが、イスラエルとの国境エレツ検問所とカレン・ショムロン検問所に向かって迫撃砲を50発近く撃ち込んできた。これにより、イスラエル兵1人(19)が負傷した。

これらの検問所は、ガザとの戦闘が始まってから閉鎖されていたが、ガザにいる市民のための医療物資、食料、発電のためのガソリンなどの搬入が開始されていた。負傷した兵士はエレツ検問所で任務にあたっていたのであった。

これを受けて、イスラエルは検問所を両方とも再閉鎖することを決めた。ガザ市民に支援物資が届かなくなったということである。

www.timesofisrael.com/soldier-hurt-by-mortar-fire-while-assisting-in-transfer-of-aid-at-gaza-crossing/

ガザ市民はおそらく電気はなし、水なし、食料なしの状態にある。多くのビルが破壊されたので、家も失ったひとがどのぐらいいるだろうか。ロイターが伝えたところによると、国連の学校に5万人近い人々が避難しているとのことである。

イスラエル軍:ガザへの激しい空爆・高層ビル崩壊

これを受けて、イスラエル軍もガザへ反撃し、高層ビルを倒壊させた。ハマスの拠点であるとイスラエルは主張。破壊の前には、住民全員に攻撃を知らせてから破壊したとのこと。その後のニュースで、新たに地下トンネル15メートルを破壊している。

かなりの爆撃のようである。バイデン大統領は、プライベートにネタニヤフ首相に電話し、少し手加減するよう伝えたとのこと。

しかし、それでも、市民の死者が続出といったニュースがないということは、まさにハマス、イスラム聖戦を狙っているのであり、市民の犠牲を最小限にしているということであろう。

www.ynetnews.com/article/2WPBSIX5O

石のひとりごと

停戦が遠のいたということだろうか?むしろ、停戦がみえはじめたからこそ、最後の追い込みで両者ともに戦闘を激化させている可能性はないだろうか。

今回は、それが正しいかどうかは別として、「アルアクサ」を取り戻すという“大義”で始まった戦闘である。ハマスにとっては、できるだけイスラエルに反発した方が、その名が上がるし、幹部たちはたとえ死んだとしても、英雄としてその名が残る。もとより、ガザ市民のことはどうでもいいのである。

一方、イスラエルは、アメリカの圧力で、停戦に向け、ハマスが攻撃を落ち着かせたら攻撃の手を弱めていく方向であったと思う。しかし、イスラエルはまだハマスとイスラム聖戦のトップの暗殺を終えていない。ハマスが攻撃をやめない以上は、その実施にむけて、努力するだろう。

今後、本当に停戦になっていくかどうか、注目される。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。