仮庵の祭り直前:重症者834人で病院上限突破:コロナ担当交代か 2020.10.1

ハイファ・ランバンホスピタルの地下駐車場病棟

ロックダウン下で準備する仮庵

イスラエルでは明日2日日没から、10日のシムハット・トーラー日没まで仮庵の祭りを迎える。人々は、ロックダウン下でも仮庵の必需品を買い求め、自宅周辺に仮庵の設営を行っている。

本来なら、海外から大勢のユダヤ人、クリスチャンたちが来て、球場などで大規模なカンファレンスが行われる時期でもある。

エルサレムにおいては、1年で最も混み合い、最もカラフルで、最も楽しい期間である。しかし、今年は、全国ロックダウンに入ってから10日になる今になっても、その効果は一向に確認できないという事態になっている。外国人はまったく来ていないだけでなく、イスラエル人も移動が制限され、家族以外の仮庵に行った人は、罰金500シェケル(2万円)が科されるといった事態になっている。

また、当初、ロックダウンは、仮庵の祭りが終わる10月11日までの予定であったが、とりあえず14日まで延期されることとなった。さらに、ネタニヤフ首相は、閣議において、解除は12月末まで、フルに解除するまでには、1年はかかるとの悲観的な発言をしている。

www.timesofisrael.com/netanyahu-it-could-be-a-year-before-coronavirus-lockdown-is-fully-lifted/

今年は、まったくだれも、予想だにしなかった仮庵の祭りになりそうである。

www.jpost.com/israel-news/ten-days-in-the-national-lockdown-doesnt-seem-to-be-working-644021

9月に急増:重症者834人:病院キャパを超える

イスラエルでは、ヨム・キプールということもあって、検査数が6万件以上であったところ、その後から3万件代にとどまっている。そのためか、新規陽性者は、29日は、4953人であった。しかし、陽性率は15%と高く、感染拡大は依然高いままであることがわかる。(30日の検査数は5万件代に戻り、陽性率は13.5%)

感染者の累計は、29日時点で、24万5494人だが、この約50%にあたる約12万人は、9月ひと月の間に増えた人々である。100万人あたりで計算すると、703人で、スペインの234人、アメリカの133人を大きく超えることとなった。

一方で、死者数は、28日が41人、29日が21人、30日は22人で合計1569人で、今のところ、100万人あたり3.5人と、国際社会の中では、最小限に抑えられている国に入っている。これは検査数が多く、早期発見ができていることと、医療環境も高度であることからだが、病院で対処できるのはこれが限界というところにさしかかった。

現時点での陽性者は6万9418人。このうち、重症者は834人と、病院の上限キャパ800人を突破した。さらに、211人が人工呼吸器依存で重篤である。チャンネル12の報道によると、全国内科病棟の40%は、すでにコロナ患者で埋められているとのこと。

保健省は、最悪重症者5000人を診ることになると警告。ネタニヤフ首相は、病院に対し、ただちに重症の病床を1500床増やし、10月中旬には3200床、11月までには、5000床にするよう指示したとのこと。主には、地下駐車場緊急病棟でこれを実現することになると思われる。

www.timesofisrael.com/ministers-extend-lockdown-by-3-days-as-over-7000-infections-recorded-wednesday/

実際には、10月5日までに750床、10月15日までに750床を準備する。このうち20%は、人工呼吸器に依存する重篤な患者様で、80%は、重症者用になるとの記事もある。しかし、現在、医療従事者3769人が隔離に置かれており、病床を増やしても、スタッフがこれに追いつけるかどうかは不明である。

www.timesofisrael.com/hospitals-to-add-1500-beds-amid-overload-15-of-virus-tests-return-positive/

仮庵を前に感染予防違反の罰金増額

イスラエルの感染拡大を助長していると思われる点は、イスラエル人が、日本人のようにまじめにマスクを着用していない、手洗いもいい加減であることが、原因の一つと考えられてる。

空港では、ロックダウン前にチケットを購入した人だけは出国できると指示されていたが、実際にはこの規制は守られていないとのこと。律法を厳密に守るのがユダヤ教なのだが、実際の世の決まりについては、けっこうアバウトで、いい加減でもあり、どうにかして道を探し出してしまう、そして、なんとかなってしまうというのが、イスラエルのおおかたの流れである。

www.timesofisrael.com/outbound-flight-virus-restrictions-reportedly-not-being-enforced/

火曜から水曜にかけての24時間で、違反チケットを切られた人は、3570人。この大半にあたる2134人は、自宅から1キロ以上移動していた人々である。1179人はマスクをつけていなかった人。隔離を違反していた人は67人。ビジネスを違反して運営した会社は57社、公園など禁止されている公共の場にいた人や会社は109人となっている。これは、前日からするとかなりの増加傾向とのこと。

多少の罰金ではこたえてないことから、ガムズ教授は、罰金を大幅に増やすことを閣議に提案した。それによると、マスクをつけてない人は、今の500シェケルからその倍の1000シェケル(3万2000円)、閉鎖命令を守っていないビジネスは、5000シェケルから1万シェケル(33万円)が科される。

最も大きな増額は、政府の指示に従わず、学校を開校したり大勢の集会を行った場合で、今の5万シェケルから、その10倍にあたる50万シェケル(160万円)となっている。この件についての決議は本日行われる予定である。

www.timesofisrael.com/gamzu-pushes-ministers-to-substantially-increase-fines-for-guideline-violators/

また仮庵の祭りについては、同居者以外の仮庵に行った場合は、500シェケル(2万円)の罰金が科されることとなった。なんともありえない仮庵の祭りになりそうである。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/288181

コロナ担当ガムズ教授辞任で前のバル・シモン・トーブ前長官に交代か

7月末にコロナ担当として就任し、コロナ皇帝とまでいわれるほどに、権限をあたえられたはずのロニー・ガムズ教授だが、実際には、政治家たちに妨害され続けであった。

ガムズ教授のプランは、まずは閣議、国会での承認を通らなければならず、ことごとく足止めを食った、ガムズ教授の意見に反して、教育省は、9月1日には、全国の学校を再開すると主張。ガムズ教授は、全国ロックダウンをしないで、赤信号プランで、主に、感染拡大が厳しい地域を対象としたロックダウンを計画したが、計画が複雑すぎて国民が混乱したことから、政府は全国ロックダウンを決めた。

挙げ句の果てには、ネタニヤフ首相は、第一波をうまく乗り切ったバル・シモン・トーブ前コロナ長官を指名したかとのニュースが入っている。それによると、ガムズ教授は10月いっぱいで退官。シモン・トーブ氏が引き継ぐということである。ただしまだ決定したわけではない。

www.timesofisrael.com/coronavirus-czar-expected-to-quit-amid-clashes-with-netanyahu-report/

13万3000人が失業保険申請:イスラエル一般住民の様子

現在、イスラエルで失業している人は90万9460人。このうち、57万3000人は、まだ失業していないものの、無給休暇に置かれている人である。きっちり退職させられて、失業保険を申請した人は、これまでに17万8000人だが、このうち13万3000人は今回のロックダウンにより2回目の申請としたとのこと。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/133000-israelis-file-for-unemployment-for-the-second-time-since-march/

イスラエルにいる友人知人などの様子は、家族がいる人や、失業保険がある人はまだ落ち着いているが、子供の多い家庭、反対に独居の人々、特に高齢者の心のケアが問題になりはじめている。

仕事のない友人知人たちによると、コロナがまさか秋の例祭まで続いているとは思っていなかった人がほとんどであった。落胆といらつきは、それぞれの声からも読み取れる。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。