世界を揺るがすアメリカの近況 2018.10.21

イスラエル最大の友好国アメリカだが、型破りな方針が続いており、一理あるともいえる動きではあるが、国際社会ではどうも批判される傾向にある。その冷たい風向きは、友好国イスラエルにも流れてくるので、注目しておく必要があるだろう。

1)INF(中距離核戦力全廃条約)から離脱を表明

トランプ大統領は、冷戦中の1987年、当時のレーガン米大統領と、ソ連のゴルバチョフ書記長が交わした軍縮条約で、500−5500キロの中距離弾道、巡行核ミサイルの廃棄を目指すものである。

トランプ大統領は、ロシアがこれに違反して中距離核戦力を開発していると指摘、アメリカも対等に核開発をすすめるべきだとして、条約からの離脱を表明した。

アメリカはイランの核開発には厳しことから、イランの反発とともに、米露、世界の核開発競争が始まる可能性が懸念される。

headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181021-00000002-jij-n_ame

2)サウジアラビアのスキャンダルでアメリカピンチ?

まだ発展中の話題だが、サウジアラビアのジュアマル・カショギ記者が、トルコのイスタンブールにある同国の総領事館で死亡した件。残虐な拷問を受けた上、死亡したとの情報がある。

サウジアラビアは、当初カショギ記者が死んでいることも不明だとして関与を否定していたが、19日になり、サウジ総領事館内で口論の上殺害されたと発表した。しかし、カショギ氏の遺体はみつかっておらず、遺体をばらばらにして処分し、殺害を隠した可能性もあり、世界はサウジアラビアの発表に疑念を抱く傾向にある。

問題は、この件に、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が関わっているとみられる点である。場合によってはムハンマド皇太子の即位も危ぶまれるスキャンダルだが、それだけにとどまらず、アメリカやトルコも巻き込んで、国際的な問題に発展する可能性がある。

ムハンマド皇太子は、厳しいイスラム教国として知られるサウジアラビアで、女子も車の運転を認めるなど様々な改革を進めながら、イランという同じ敵を持つアメリカとイスラエルにも接近している。

ムハンマド皇太子の失脚はアメリカとイスラエルにとっても好ましいことではない。とはいえ、民主国家として、政権に歯向うジャーナリストを拷問の上、殺害したとなると、これを見過ごすわけにはいかず、アメリカはジレンマに陥っている。

ここで登場してきたのが、殺人事件の舞台となったトルコである。トルコは、事件に関する重要な証拠をを持っているとして、すべてを明らかにするといっている。トルコは、イランとロシアの陣営に近づきつつある国であることから、この事件が、中東の勢力図を変える事態に発展する可能性も全く否定できなくなっている。

サウジアラビアを擁護したいトランプ大統領だが、現在のところ、サウジアラビアの事件に関する説明には満足しておらず、ムハンマド皇太子の関与を全く否定していないといっている。

トランプ大統領は、可能性としてサウジアラビアへの経済制裁はありうるが、中東情勢にかんがみ、武器売却は、継続する意向を語っている。

3)トルコで拘束されていたブランソン牧師、アメリカへ帰還 

トルコのイズミール地方で23年間、宣教師としての働きを続けてきたアンドリュー・ブランソン牧師が2016年から18ヶ月、スパイの容疑で収監されていたが、10月12日釈放され、アメリカへ帰国した。

釈放前の8月には、テロ容疑で軟禁状態に置かれ、一時アメリカがトルコへの経済制裁も示唆して、トルコリラが暴落するといったこともあったが、結局、ブランソン牧師夫妻が帰国できたことから、アメリカとトルコの関係を改善するものと評価されている。

time.com/5426818/us-turkey-relations-brunson/

帰国後、落ち着き始めたブランソン牧師は、CBSニュースに出演。「私は、オープンにイエスに関する福音を宣べ伝え、難民の支援をしてきただけだったので、なぜ逮捕されたのかすらわからなかった。」と語っている。幸い、厳しい取り調べや拷問などはなかったが、妻とは週に35分間ガラス越しに電話で話が許されるだけだったという。

しばらくして聖書を手にいれることができたが、獄中生活を支えたのは第二テモテだったとのこと。

トルコ政府がブランソン牧師をスパイとの疑いをかけた理由は、ブランソン牧師が、トルコ人にイエスを信じさせることで、イスラム国家トルコから離反させようとしていているとみられ、その裏にはエルドアン大統領が宿敵と目すアメリカに亡命中のギュレン師との関係も疑われていたからであった。

しかし、このことで、世界中がブランソン牧師の働きに注目したことで、福音が広がり、また世界の人々がトルコのために祈る機会になったとブランソン牧師は語る。まさに、福音のために投獄されたということである。

ブランソン牧師夫妻は、アメリカに帰国後、トランプ大統領にホワイトハウスに招かれた。この時、トランプ大統領に祈りを申し出たところ、トランプ大統領は、「おそらくこの部屋で最も祈りを必要としているのは私でしょう。」といって笑いをとり、ブランソン牧師の祈りを受け入れている。その祈りは世界中に報道されることとなった。

www.bbc.com/news/world-europe-45842735

この特別な機会について、ブランソン牧師の妻、ノーリーンさんは、以前にトランプ大統領に会うというビジョンを与えられていたという。その時にあたえられたみことばをそのまま大統領に伝えたとのこと。

www.youtube.com/watch?v=wjcSkUf_3Hw

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。