ロックダウン下の仮庵の祭 2020.10.5

いつもと違う仮庵の祭

イスラエルでは、10月2日日没から仮庵の祭に入った。今年は、ロックダウン下なので、仮庵を立てても、同居家族のみしか入れないことになっている。

i24newsが、伝えている仮庵の様子を見ると、家庭ごとの小さいスッカ(仮庵)は建てられているものの、毎年の風物詩である、仮庵に必要な4種の植物を厳しく確認しながら購入する群衆の姿はなかったとのこと。

特に、エルサレムのオープンマーケット、マハネイ・ヤフダでは、毎年別テントが建てられ、大勢でごったがえすのがこの時期の風物詩なのだが、今年はその風景がまったく違っているとして、そのショックを伝えている。

今年はスッカを建てられない人も多いと予測されるので、そういう人のために、1−2人が入って祝福を受ける、ハバッド派の移動出張型仮庵も活躍しそうだとみられている。


仮庵前日:ラビ・ハイム・カニエフスキー(92)コロナ陽性発覚

 

ラビ・ハイム・カニエフスキー
出展:wikimedia

イスラエルのユダヤ教には、政府付きのチーフラビ局とは別に、様々な宗派それぞれに指導者としてのラビがいる。ブネイ・ブラック在住のラビ・カニエフスキー(92)は、超正統派の中でも、リトアニア系の宗派で、数千人の弟子を抱える重要なラビである。

そのラビ・カニエフスキーが、微熱があるとして調べたろころ、新型コロナ陽性であることが、発覚した。仮庵の祭入りのその日、10月2日のことである。ラビ・カニエフスキーは、以前より、政府の感染予防策に従わないラビとして、度々ニュースに上がっていた人物である。

パンデミックが始まった当初の3月、ラビ・カニエフスキーは、「トーラーの学びを止めることはコロナよりも危険なことだ。」と主張し、政府の指示に反して、イシバでの集まりを継続させた。しかし、その後、感染が拡大したことをうけて、この方針を撤回。集まらずに、それぞれで祈るように指示を出したという経過があった。

その後、ラビ・カニエフスキーは、濃厚接触の疑いがあるとして、自主隔離を命じられた。しかし、当時、ヨム・キプールであったこともあり、自宅に客を招くなどして、感染予防違反を指摘されていた。

その後、ラビ・カニエフスキーは自らの感染が発覚すると、同じ宗派の人々に対し、保健省の指示に従い、祈りは屋外で、仮庵は同居家族だけにするよう、指示を出している。

これを受けて、リブリン大統領は、ラビの早い回復を祈るとのコメントを出した。

www.timesofisrael.com/top-ultra-orthodox-rabbi-92-tests-positive-for-coronavirus/

大規模集会の超正統派と警察:つかみあいの衝突

政府は、仮庵の祭直前に再び規制を強化し、超正統派のシナゴーグでの集会も、世俗派の反ネタニヤフ首相デモにも、等しく制限を課すことで合意した。それによると、祈りは屋外で20人までとなり、シナゴーグは閉鎖されることになった。

しかし、エルサレムや、テルアビブ近郊、ブネイ・ブラックなど超正統派地域では、大人数が入れるような仮庵が、少なくとも4つは建てられており、支持に反して、大勢が集まるのではないかと注目を浴びていたところであった。

4日、警察は、案の定、大勢が集まっているとみられるブネイ・ブラックに、踏み込み捜索に入った。そこで、群衆を解散させた上、13人を逮捕。責任者に5000シェケル(15万円)と、参加者にも罰金のチケットを渡した。

なお、ブネイ・ブラックは、上記、ラビ・カニエフスキーが在住しているのと同じ町だが、警察と衝突したのは、ハラデイと呼ばれる別の宗派の超正統派である。

ハラディたちは、警察官らに、「ナチ。ドイツに帰れ」などと、言ってはならない言動もみられた。警察によると、超正統派(ハラディ)たちは、規制に違反して大人数が集まっていただけでなく、マスクをしている人も稀であったとのこと。

石のひとりごと

テロでもないのに、祈っているユダヤ人とユダヤ人の警察が、大人の大げんかになっている。まるでゲームに見えなくもなく、どうにも頭が混乱してしまう。目に見えないコロナに振り回されるとはこのことだろうか。あまりにも愚かで、あまりにも悲しい光景である。

イスラエルの神、主はいったいこの光景をどうみているのだろうか。

本来なら、皆で祈るという信仰の行為が、本来、世の祝福になるべきであるのに、今は逆に、世の中に感染を広げる結果になっている。主は彼らに何をいいたいのだろうか。

律法を守るということで信仰を告白し、熱心にそれを守ってきた超正統派の人々が、今その行為を取り上げられるということは、おそらくは、その心が問われているのではないだろうか。たとえ、行為がなくても主は彼らを愛しているということを、わかってほしいのではないだろうか。

とくに日毎から主に心から熱心な超正統派の人たちが、真に主の愛を経験してくれるように祈る。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。