リーバーマン氏とガンツ氏が連立へ合意:少数政権は期待薄?2020.3.9

ガンツ氏とリーバーマン氏 出展:Jerusalem Post Elad Malta

リーバーマン氏が連立加入に向けてガンツ氏に要求項目提出・合意

イスラエル我が家党のリーバーマン党首が、ガンツ氏が国会に提出した法案(起訴されている人物は首相になれない)に合意したが、これはリーバーマン氏がガンツ氏主導の連立政権に加わるという意思表示でもあった。

9日、リーバーマン氏は、ガンツ氏に、連立に加わる際の要求項目を提示。ガンツ氏はこれに合意した。その項目とは以下の通りで、右派ではあるが、ユダヤ教政党と反目する世俗派らしい要求である。

①高齢者年金は、最低でも最低賃金の70%と同額であること(今より増える) ②公共交通機関やビジネスを安息日に稼働させるかどうかは、地方自治体にまかせる。③超正統派の従軍規定については、第20代国会で可決したものに定める。

④イスラエルでも市民結婚を認める。(現在は正統派結婚しか認められていないので、異邦人との結婚は国外で結婚して戻るしかない) ⑤ユダヤ教への改宗を今より緩い規定にする。

www.ynetnews.com/article/rk1195IfSL

ガンツ氏はこれに同意した。しかし、ここまで世俗的な政権では、右派もユダヤ教政党も、いっさい話し合いにすら応じないだろう。シャス党のデリ党首はすでに、これに反発する決意を明らかにしている。もはや統一政権の夢はなくなったということである。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/276988

一方で、ガンツ氏の中道左派陣営は、たとえリーバーマン氏(7議席)が加わったとしても、アラブ統一政党(15議席)が入らなければ、右派勢58を超える、62議席の過半数にはならない。中道左派政党だけでは計47議席と、少数政権ということになる。

言いかえれば、上記の首相に関する法案を含め、いかなる法案も、アラブ政党の協力がない限り、可決しないということになる。ユダヤ人の国でありながら、アラブ人に決断を牛耳られるということになってしまう。

ガンツ氏らの首相に関する法案の決議は、法案が、ネタニヤフ首相個人を首相からやめさせるためのものではないということを証明するため、今回選ばれた国会ではなく、時期国会で審議するとしている。

すると、どうなるかといえば、やはり、ネタニヤフ首相がサバイバルするか・・?ということになる。

しかし、ガンツ氏とリーバーマン氏はあきらめない。両者ともに、アラブ政党を連立に入れることは否定しているが、4回目総選挙をやめさせ、長すぎる政権を交代させるためには、一時的にでもアラブ政党の協力を仰ぐ可能性も検討しているようである。

リーバーマン氏は、「今大事なことは、ともかくもガンツ氏が連立指名をとることだ。そうなれば事は動く。」と言っている。

www.timesofisrael.com/liberman-sets-out-secularist-conditions-for-joining-coalition-gantz-agrees/

ガンツ氏に死の予告

青白党は、国会警備隊に対し、ガンツ氏がオンラインや、電話で、死を予告するメッセージを多数受けていると通告した。国会警備隊は、ガンツ氏の警護を強化している。

ガンツ氏は、ネタニヤフ首相が憎しみと分裂を煽っていると非難した後、ツイートで、「”ガンツをラビン広場で殺せ”ネタニヤフ、野蛮な先導はやめろ。知らないとは言わせない。」と書き込んだ。

ソーシャルメディアには、青白党のトップで元イスラエル軍参謀総長たちに、PLOのアラファト議長のカフィアをかぶせた合成写真がアップされた。ガンツ氏は、ネタニヤフ首相が、暴力を煽っていると非難している。

www.timesofisrael.com/security-upped-for-benny-gantz-after-online-death-threats/

ネタニヤフ首相の対応

ライバルの中道左派勢がこうした動きに出ているのを黙って見ているネタニヤフ首相ではない。3月17日に始まる予定の裁判を、45日間延期するよう、司法長官に要請を出した。弁護側に十分な資料が司法庁から届いていないというのが理由である。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/276983

また、ネタニヤフ首相は、リーバーマン氏が、かつて汚職問題で起訴されかかったことを掘り出し、再調査するよう、司法庁に要請した。

イスラエルは、今国際社会とともに、史上最悪の疫病と、その影響による未曾有の経済危機に直面している。このような時に、なぜまだ喧嘩を続けているのかとうれう記事もあった。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。