リーバーマン氏が青白党ガンツ氏案支持を表明 2020.3.6

ネタニヤフ首相、リーバーマン氏、ガンツ氏 出展;ynet

3月2日に行われた総選挙は、カウントが終わったところで、ネタニヤフ首相の右派陣営は58議席と、過半数に3議席も足りないという結果に終わった。一部で数え直しが行われているが、基本的にこの数字には変わりはないとみられる。

次の手順としては、リブリン大統領が、議席を獲得した党首らと個別面接し、連立政権のトップ、つまりこれから連立たちあげの交渉し、成功すれば首相になる人物はだれにするのがよいかとの聞き取りを行い、3月17日までには、その指名を発表することになる。

このような中、リーバーマン氏が党首を務めるイスラエル我が家党は5日、党の方針として、ガンツ氏が提出した法案を支持すると表明した。

その法案とは、①首相は2期までとする。②起訴されている人物が、連立政権をたちあげることはできない、というもので、法案とはいえ、ネタニヤフ首相個人が、今後、首相になることを認めないという法案である。

これにより、リーバーマン氏は、リブリン大統領に対し、連立立ち上げ政党に、青白党ガンツ氏を推薦するとみられている。

もし、リーバーマン氏が、ガンツ氏を推薦するとなれば、他の党もガンツ氏を推薦する可能性が出てくる。すると、リブリン大統領は、たとえ最大議席数がネタニヤフ首相であっても、ガンツ氏を指名する可能性出てくる。

この流れで、もし今回、躍進したアラブ政党がガンツ氏の連立に入ったとしたら、ネタニヤフ首相の右派陣営58議席に対して、ガンツ氏の中道左派が62議席と過半数となり、政権交代ということになる。

しかし、まだアラブ政党がガンツ陣営に入るかどうかは不明で、もし入らなかった場合は、前回までと同様、過半数を超える政権ができないということになり、振り出しに戻るということになる。

そうなれば、またネタニヤフ首相が国会を解散し、また総選挙という可能性も出てくる。ガンツ氏とリーバーマン氏は、なにがなんでも4回目総選挙は阻止するといっているのである。

www.timesofisrael.com/liberman-may-recommend-gantz-for-pm-will-support-bill-to-disqualify-netanyahu/

<なぜリーバーマン氏はガンツ氏支持を表明したのか>

リーバーマン氏自身は右派なので、もしこのまま、ネタニヤフ首相の右派陣営にリーバーマン氏が入れば、文句なしに、右派陣営が過半数になり、問題は即解する。しかし、リーバーマン氏は、この道を選ばず、ガンツ氏を支持する側にまわるということである。

実際のところ、ネタニヤフ首相もガンツ氏も、イスラエルを守りたいという意思や、中道という点では、あまり方針に変わりはないと言われている。したがって、両者がともに統一政権をたちあげることはそう難しくないと言われている。

リーバーマン氏が望んでいたのは、この統一政権であった。しかし、これまで3回の選挙を通しても、統一政権は実現できなかった。

たとえば、ガンツ氏が百歩譲ったとして、ネタニヤフ首相とともに統一政権を立ち上げた場合、ガンツ氏とネタニヤフ首相は、交代で首相になるが、その場合、ガンツ氏が先に首相になることをガンツ氏は要求している。これをネタニヤフ首相が受け入れることはない。

一方、もしリクードが、党首をネタニヤフ首相から別の人物にすげ替えた場合、ガンツ氏は、喜んで、その新しい党首とともに、統一政権に参加すると表明した。実際、リクード内部からもこの動きはあった。しかし、ネタニヤフ首相ほどの経験を積んだ政治家は他にないため、結局リクードは、ネタニヤフ首相に軍配を上げて、党首の首をすげ替えるこちはなかったのであった。

リーバーマン氏は、なんとかして統一政権をとこれまでがんばってきたが、もはや、どうにもならないと察知したのだろう。ついにガンツ氏側につくことにしたというところである。

しかし、ガンツ氏陣営が政権をとろうとすると、どうしてもアラブ統一政党を政権に加えなければ、過半数にならない。今、ヨルダン渓谷や、西岸地区の入植地の合併に動き始めているネタニヤフ首相と、右派陣営がこれを受け入れられるのか。またイスラエルにとって、それが果たしてよいことなのか。。。?

イスラエルのすべてを支配している主がどう動かれるのか。もはや人間の知恵ではどうにもわからなくなっているといえる。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。