リブリン大統領苦渋の決断:ネタニヤフ首相に連立樹立を委任 2021.4.10

リブリン大統領の決断:ネタニヤフ首相に連立樹立委任

リブリン大統領は、各党との面談を終えた翌6日、連立政権樹立に向けた交渉をネタニヤフ首相に任せると発表した。

面談において、ネタニヤフ首相を推した党は、リクード(30)、シャス(9)、統一トーラー党(7)、宗教シオニスト党(6)で計52議席。最も多いものの、過半数には届いていない。

一方、打倒ネタニヤフ陣営で、ラピード氏を押した党は、未来がある党(17)、青と白党(8)、イスラエル我が家党(7)、労働党(7)、メレツ党(6)で計45議席。こちらも過半数に届いてない。

注目のヤミナ党は、ベネット氏を推薦。どちらに着くかで、勝負を決めるとも言われたイスラム政党ラアム党は、推薦する人物なしと大統領に告げていたのであった。

明らかに過半数になる党がない中、リブリン大統領は、6日、「非常に苦しいが、大統領として、誰かを推薦しなければならない。」と述べ、汚職で刑事裁判にかけられているネタニヤフ首相を次期首相と推薦することに困惑があるとしながらも、支持議員が最も多いという基本的な原理から、ネタニヤフ首相に委任すること決めたと、苦渋の結果であると国民に説明した。

www.timesofisrael.com/rivlin-reluctantly-taps-netanyahu-to-form-government-not-an-easy-moral-choice/?utm_source=The+Daily+Edition&utm_campaign=daily-edition-2021-04-06&utm_medium=email

28日以内に連立が立つ見込みは?

大統領の委任を受けたネタニヤフ首相は、これから28日以内(2週間延長可能)に、連立に加わって政府を担う党、または、連立に加わらなくても国会ではネタニヤフ政権が出してくる法案を支持すると約束する党の合計が過半数になる連立政権を立ち上げなければならない。

交渉において、協力してもらう代価として使われるのが、大臣や副大臣のポジション、またそれぞれの党が求める政策の約束である。もし、28日以内、また2週間の延長を持ってしても連立形成を出来なかった場合、リブリン大統領は、別の人物に依頼することになる。

前回、総選挙3回目の時は、ネタニヤフ首相が、期限内に連立形成できなかったが、ガンツ氏も連立形成出来なかったので、次に国会が自ら選ぶというところまで行った。

しかし、最終的に、ネタニヤフ首相(右派)とガンツ氏(中道左派)の2人が協力し、首相を交代するということでようやく政府が立ち上がったのであった。しかし、こんな政権がうまくいくはずもなく、まずは予算で合意できず、今回の選挙に至ったわけである。しかし、今の状態は、4回目とほとんど変わっておらず、過半数を満たす政府ができる見込みはほとんどない。

なお、次の政府が決まるまでは、今の政府が継続するので、ネタニヤフ首相とガンツ氏が、ぶつかりながら、イスラエルの政府を運営している。

ネタニヤフ首相汚職裁判:証人喚問

昨年2月8日に出廷した時のネタニヤフ首相 Photo by Reuven Kastro/POOL

リブリン大統領が、各党と面談をしていた5日、ネタニヤフ首相汚職に関する証人喚問が、エルサレム地方裁判所で始まった。ネタニヤフ首相の汚職疑惑は大きく3件あり、今回審議されているのは、ケース4000である。

ケース4000は、ネタニヤフ首相が、イスラエルの大手通信会社べゼック(日本で言えば、NTTぐらい大手)が運営するインターネットメディア、ワラのウェブサイトに、自分に都合のよい記事を出してもらい、その代わりにベゼックに運営上の便宜を計ったという疑惑である。

政治家が、都合の良い記事を望ことは珍しいことではないが、ケース4000によると、ネタニヤフ首相は、2012年から2016年まで、継続してこのような情報操作をしていたと見られ、それに対する便宜により、ベゼックのサウル・エロノビッツ氏が得た収入は、5億4800万ドル(約600億円)にのぼると見られることが問題になっている。

ただし、この資金をネタニヤフ首相が、報酬として払ったのではなく、結果的な増収ということのようであるので、裁判では、この点よりもむしろ、ネタニヤフ首相が情報操作したかどうかが焦点になるとのこと。

今回、証人に立ったのは、ワラの元CEOイラン・イエシュア氏。イエシュア氏は、2015年のネタニヤフ首相が勝利した選挙の際、ワラの政治記事において、ネタニヤフ首相やその家族に関する悪いイメージのニュースを削除し、良い成果だけの記事を残すよう、エロノビッツ氏から、脅迫めいた形で指示されたと証言した。

ネタニヤフ首相は、この件を初め、疑惑の全てを否定し、自分を首相から下ろすための陰謀だと主張している。Times of Israelによると、この法廷にネタニヤフ首相が姿を表したのは30分程度であったという。(証人喚問は20時間)

それで、結局どうなるのかだが、今すぐに何かの結果が出るというものでもなさそうである。

www.timesofisrael.com/first-week-of-netanyahu-corruption-trial-paints-grim-picture-of-israeli-media/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。