ヨルダンからイスラエル大使館員無事帰還 2017.7.25

ヨルダンとの外交危機が発生してから28時間。アンマンのイスラエル大使館内でのテロで負傷した大使館警備員が、エイナット・シュレイン在ヨルダンイスラエル大使と大使館職員らとともに、、ヨルダン川を越え、イスラエルへ帰還した。

同時に、イスラエルは、神殿の丘に設置された金属探査ゲートを除去することが発表された。

ゲートの代わりに、通過する人間にはまったく気がつかないような、たとえば人間の体温から武器の有無を判断するようなハイテク技術を導入するという。これに予算1億シェケル(約34億円)を計上したことまで報じられた。

ヨルダンのメディアによると、大使館職員返還の条件として、イスラエルは神殿の丘問題への”速攻”の解決策を直ちに講ずることを挙げたという。これはつまり、金属探査ゲートの除去ということになる。

なお、イスラエル政府は、ヨルダンと交渉があったことは認めていない。

<事件詳細>

調べによると、日曜、大使館内の住宅に、大使館警備員と、ヨルダンの家具屋の息子と、家のオーナーが立ち会う中、ベッドが搬入されていたところ、家具屋の息子と警備員の間で、「時間内に仕事が終わっていない。」ということで口論になり、家具屋息子が警備員を持っていたスクリュードライバーで刺したということである。

これに反撃した警備員の銃撃で、家具屋息子は死亡。そこにいた家のオーナーも流れ弾に当たって死亡したということで、神殿の丘問題とは直接の関係はないようである。

<解決までの流れ>

事件発生から、イスラエルとヨルダンは、事件解決に向けて、ただちに交渉を開始した。イスラエルは、ヨルダンが、単独で、負傷した大使館警備員の尋問を行うことを拒否。しかし、ヨルダンも、警備員をイスラエルへ戻すことは拒否した。

このため、イスラエルは、夕方、シンベト(国内治安組織)のナダブ・アルガマン長官がアンマンへ派遣し、ヨルダン政府関係者が同席する中で、ヨルダン人2人を殺害するに及んだ職員の尋問を行った。

アルガマン長官はイスラエルへ戻って、ネタニヤフ首相と協議。ネタニヤフ首相は、ヨルダンのアブダラ国王と電話協議し、解決へと急速に進んだということである。

www.timesofisrael.com/amman-embassy-security-guard-returns-to-israel/
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/232934
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4993906,00.html

<一石二鳥になりうるか?>

今回の大使館内でのテロ事件は、非常に早い解決となった。同時に金属探査ゲートの除去が決まったというところからして、この事件が、イスラエル、ヨルダンにとって、いわば、”わたりに船”であった可能性がある。

イスラエル政府としては、いったん出した金属探査ゲートをテロがエスカレートするからというだけで、ひっこめた場合、過激派に負けを意味することになり、国民に対しても、入植地で3人も殺害されてからの決断かと問い詰められる可能性もある。ひっこみがつかない状態にあった。

一方、ヨルダンにとっても、神殿の丘問題は、イスラエル以上に大きな問題だった。ヨルダンは国民の70%以上がパレスチナ人なので、ヨルダン王室のイスラエルへの対処が気に入らないとなると、王室が転覆させられる危険もあるからである。

イスラエル政府、ヨルダンは、神殿の丘問題の早期解決という共通の、さしせまった目標があったのである。

そこで、今の神殿の丘暴動のシンボルのようになっている金属探査ゲートの排除をイスラエルに認めさせるということで、大使館警備員を返すというとりひきが成立したとみられる。

中東は、今、シリア、イラクでのISISの問題で非常に危険な状態が続いている。スラエル政府にとってもヨルダン王室にとっても、お互い治安協力関係を維持することは非常に重要であるということである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

2 comments

とても興味深く読ませて頂いております。ニュースの真相をいち早く理解することができ、大変勉強になります。
こちらのブログを、Facebook紹介させていただいてもよろしいのでしょうか?自分の住むイスラエルのニュースがあまりにも、日本で報道されていない事と、アンチイスラエルが世界的に横行する中で、少しでも真実はこうなのだと、せめて知り合いには知ってもらいたいと思っています。

> とても興味深く読ませて頂いております。ニュースの真相をいち早く理解することができ、大変勉強になります。
> こちらのブログを、Facebook紹介させていただいてもよろしいのでしょうか?自分の住むイスラエルのニュースがあまりにも、日本で報道されていない事と、アンチイスラエルが世界的に横行する中で、少しでも真実はこうなのだと、せめて知り合いには知ってもらいたいと思っています。

ありがとうございます。記事全体そのままであれば、ぜひよろしくお願いします。イスラエルはどちらにお住まいでしょうか。またどこかでお会いできるといいですね。

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