ヨム・キプールとエイード・アル・アドハ 2014.10.4

10日4日は、ユダヤ教のヨム・キプール(大贖罪日)。ユダヤ教によると、新年に主が来られて、名前をよい本か悪い本に書かれる。その書物に、神が最終の印を押して書を閉じるというのが、ヨム・キプールである。

つまり、新年に、自分の名前はすでにいずれかの書物に書き込まれたのだが、その後、ヨム・キプールまで10日あり、ひょっとして悪い本からよい本に名前を変えてもられるかもしれないと更なる悔い改めをする。ヨム・キプールには、その最終判決が出るというわけである。

いろいろ解釈があるが、「本来は赦してもらえないはずのところ、哀れみで赦してもらった。」と信じて、父なる神のあわれみに感謝するのが、ヨム・キプールなのである。悲しみの日ではなく、実は喜びの日なのだと、ユダヤ教神学校教師ベンジーさんは教えてくれた。・・・ますます、ゼカリヤ12章を思わせる考え方である。

そのヨム・キプールが、今年は、数十年ぶりに、イスラム教のエイード・アル・アドハと同じ日に重なった。

エイード・アル・アドハとは、アブラハムがその息子”イシュマエル”を神に捧げたことを記念する日で、神が、イシュマエルの変わりに与えてくださったやぎをほふって大祝宴をする日のことである。

つまり、ヨム・キプールで断食しているユダヤ人の横で、アラブ人はバーベキューするということである。さすがに、イスラエル国内のアラブ人たちは多少は控えめの祝宴をするという。

混乱を避けるため、エルサレムでは、ユダヤ教チーフラビとイスラム教指導者が会談の時を持った。

*イスラム教のエイード・アル・アドハ

コーランには、旧・新約聖書の記述がたくさん引用されているが、アブラハムがイサクを捧げた下りも含まれている。ただし、イサクではなく、イシュマエルが捧げられたと解釈されているところが違う点である。

東エルサレム在住の敬虔なイスラム教徒、モハンマドさんによると、この日はイスラム教徒にとって非常に重要な日であるため、10日前から断食して神の前に整えられるよう、備えるという。

最後の断食は、4日朝の日の出までで、その後、モスクで祈ってから、やぎをほふって、ランチタイムぐらいから祝宴になるという。この例祭は、7日まで続く。

<厳重な警戒態勢と西岸地区・ガザ地区市民への取り計らい> http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4577462,00.html

4日は、双方からのテロや衝突が予測されるため、イスラエルは治安部隊を通常の4倍に増やし、危険そうな場所にびっちり兵士や警察を配置して、厳重な警戒態勢をとっている。

特に危険そうな場所は、ユダヤ人とアラブ人が密接に同居するエリアで、エルサレムでは旧市街、ダマスカス門周辺、北部ではアッコが特に警戒されている。

西岸地区との検問所は3日深夜より、緊急の救急車など人道支援以外の通行は閉鎖されているが、逆に5日以降、7日までは、通行を緩和し、西岸地区のパレスチナ人が、年齢制限なく、イスラエル領内の縁者を訪問できるようになっている。

ガザからも500家族が西岸地区へ入る便宜がはかられている。また1日に、500人づつ、ガザの住民が承認されたバスで来て、神殿の丘で礼拝できるなど、様々な制限緩和が行われる。

<ヨム・キプール入りの3日夜>

3日は、バスや車は午後4時ごろまでには完全になくなった。ヨム・キプールの日は、イスラエルでは、車を走らせる事は法律違反になる。テレビもなし。ネットのニュース配信も止まる。

日没になると、非常にすごしやすい気候でもあり、親子連れが続々と家から出て来た。シナゴグでは、男性たちはタリートをかぶって祈りに入り、女性たちも白い服と頭のおおいをつけて、祈っている。

しかし、子供たちにとっては、車の来ない唯一の自転車天国デー。大人たちが祈っている姿が窓越しにみえるシナゴグ。その前で、ヘルメットをつけた子供たちが、きゃぴきゃぴの声をあげながら、自転車を乗り回している。若い家族連れが、ベビーカーを押しながら散歩している。なんとも、のどかな風景である。

かわいい女の子たちが、「寿司、寿司」と言って近づいて来たので、聞くと、今年12才になったので、人生ではじめての断食をしているという。一応、断食はしてはいるのだが、祈らずに自転車で遊んでいるのである。

ところで、3日の日没から、4日の夜明けまでは、ユダヤ人もアラブ人も断食している状態。通常、金曜日といえば、筆者宅付近では、アラブ人がはでに打ち上げ花火をあげ、若者たちが、深夜までやかましくしているのだが、今夜は、恐ろしほど、静まり返っている。

4日、日没までは水も飲まない断食となるが、今年は統計上、若干減って、イスラエル人の73%が断食すると答えている。毎年、脱水などで急病になる人が、500人は出るため、救急隊も2000人体制で待機しているという。

現在、午後3時。鳥のさえずりと子供の声が時々聞こえるほかは何の音もない。これは本当に祝福。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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