ベドウイン問題・・プラワー法案保留へ

12月初頭、ネゲブ地方のベドウインたちが、イスラエル政府が提案しているプラワー法案-ベドウインが定着して近代的な暮らしができるようにしようという法案-に反対して全国的なデモに発展した一件。

ネタニヤフ首相は、昨日、このプラワー法案を保留にすると発表した。

イスラエル政府によると、この法案は、非常に貧しいベドウインたちが、少しでも近代的で未来のある人生を歩み、イスラエルの社会に参画してもらいたいという目的で発案された法案である。

具体的には、5カ年計画で、新しいベドウインの町々をつくり、下水や水道、電気など完備した家をベドウィンに無料で提供して、居住してもらう。町には職業訓練センターや学校の他、大きいな工場を建てて、雇用を促進するというもの。すでにソーダ水の会社など大手の工場が建築中で、完成すれば数千人の雇用が実現する。

ところが問題は、これらとひきかえにベドウインは、今自分の支配域と思っている土地を半分、イスラエルの名義にすることになる。「イスラエルはベドウインから搾取している」ということになるのである。

<超えがたい文化・メンタリティの違い・・>

現地ネゲブに行くと、その貧しさ、衛生の悪さは相当なものである。イスラエルの法律で認められていないベドウイン村は、さながら難民キャンプである。

85%の一般のベドウインは、イスラエルからの社会保障を望んでいるようだった。ベドウイン自身、実際にプラワー法案に反対しているのは数千人に過ぎないとも言っていた。

しかし、その表情はどの顔も暗かった。これはいわば、これまで遊牧生活をしてきたベドウインの文化そのものを変えるという大仕事なのである。そこにはプライドもあるだろう。そう単純な問題ではない。

イスラエル側でこの法案を担当している人の話を聞くと、決してベドウィンから搾取しようなどという思いは伝わってこない。ユダヤ人特有の、あの純粋な”困っている人を助けたい”なのである。

しかし、ハイテンポで進歩し続けるユダヤ人のメンタリティーと、何百年、何千年、ほとんど同じでも全然かまわないベドウイン文化では、価値観があまりにも違う・・というのが現状だろう。

思えば、私たち日本人は、明治維新の時、あっさり外国文化を受け入れ、国民はこぞってその便利さを抵抗なく受け入れてきた。ベドウインたちも自らの文化を守りつつ、一時的にイスラエルの力を借りてでも独自の近代化に進むという道を発見してもらいたいものである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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