パレスチナ囚人のハンストで論議 2015.8.18

イスラエルでは、テロなど深刻な犯罪の場合、裁判なしに最長60日まで容疑者を拘束できることになっている。先頃、これまでは、主にパレスチナ人に適応されて来たこのルールが、ユダヤ人過激派にも強化適応することになったところである。

このルールについて、イスラエル国内では論議となっている。論議を深刻化させているのが、このルールに基づいて拘束されているイスラム聖戦のメンバー・モハンマド・アラアンの刑務所内ハンガーストライキである。

モハンマドは、現行犯で逮捕されたのではなく、諜報機関の情報に基づいて裁判なしに逮捕され、今年初頭から、イスラエルの刑務所に拘束されている。

モハンマドは、イスラエルの刑務所内でハンガーストライキ(断食デモ)を開始。その日数が60日を超え、生命の危険も懸念されるようになってきた。そのため、イスラエル政府は、強制的な栄養補給を認める法案を立案。国会を通過した。

しかし、刑務所の医師はこれを人権無視だとして、強制的に食事を摂取させることを拒否した。先週、モハンマドは、意識不明の重体となり、アシュケロンのバルジライ病院に搬送され、人工呼吸器につながれる事態となった。

以前よりモハンマドの釈放を要求していた国内のアラブ少数民族保護のための法律センターとアラブ系議員のティビ氏らは、「モハンマドはもはや危険行為はできなくなっている。」としてただちに釈放するよう訴えた。

国内での論議が大きくなることを受けて、イスラエル政府は、モハンマドを向こう4年間、西岸地区に戻らないという条件つきで、釈放する意向を明らかにした。

すると今度はモハンマドの釈放に反対するユダヤ系市民がアシュケロンでデモを行い、モハンマドの釈放を求めるアラブ系市民のデモ隊と暴力的な衝突に発展するに至った。2人が負傷。少なくとも15人が逮捕されている。

www.timesofisrael.com/15-arrested-in-ashkelon-protests-over-palestinian-hunger-striker/

公的治安維持担当相のギラッド・エルダン氏は、「今回モハンマドをハンストの結果、釈放するという前例を作れば、今後、ハンストをする者が後を絶たなくなる。」と警告している。

しかし、もし、このままモハンマドが死亡した場合、裁判なしでの拘束という行為が、世界的にも問題にされるのは避けられない。

18日現在の報道によると、モハンマドは意識を回復し、呼吸器からも離脱できたとのことだが、まだ栄養補給は行われておらず、本人も治療を拒否しているという。ということは、モハンマドにはまだ生命の危険があるということである。

テロは起こってからの逮捕では遅いのだが、テロが起こる前の逮捕では、証拠不十分の人権無視と言われてしまう可能性があるということである。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4691710,00.html
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4691955,00.html

<イスラエル兵を狙ったテロが続く:パレスチナ人3人射殺>

西岸地区ディマで、ユダヤ人過激派らが放火し、パレスチナ人家族が犠牲になった事件以来、イスラエル兵を狙ったテロが連続して発生している。

先週だけで、イスラエル兵がナイフで襲われるテロが2件。今週に入って1件発生し、いずれのケースも、犯行に及んだパレスチナ人が、現場で射殺されている。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4691629,00.html

<イスラエル軍に法律の専門家・シャロン・アフィク大佐>

上記のような問題を含め、現在、パレスチナ自治政府は、国際刑事裁判所へイスラエルを訴える準備を進めている。そうなれば、軍の命令で動いたイスラエル兵が法廷に立つこともありうる。

こうした事態に備えて、イスラエル軍は、法律の専門家を備えている。そのポジションに、前任者の任期満了に伴い、新しくシャロン・アフィク大佐の着任が決まった。(交代は10月)

アフィク大佐は特に国際法に明るいという。現在、パレスチナ自治政府の訴えに対処するため、昨年夏のガザとの戦争に置いて、特に問題とされるケースを調査中である。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4691755,00.html

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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