バウメル軍曹と交換でシリア人2人返還へ 2019.4.28

総選挙の直前、第一次レバノン戦争で戦死した戦車隊兵士ザカリー・バウメル軍曹の遺体が、ロシアの働きかけで、返還されたことはお伝えした通り。

その見返りとして、イスラエルは、生きているシリア人の囚人2人をシリアへ返還することになっていることが明らかとなった。

一人は、ダマスカスのヤルムク・パレスチナ人難民キャンプ出身のハミス・アフマドで、2005年にイスラエルへ侵入して、イスラエル兵への肛壁を試みたために逮捕され、2023年まで収監されることになっていた。

もう一人は、シリアの村カダル出身のジダン・トウェルで、麻薬密輸関連で2008年に逮捕され、この7月までの刑期の予定であった。

なお、バウメル軍曹とともに、あと2人のイスラエル兵の遺体もシリアでみつかっていることがわかっている。イスラエルはこの2人も取り戻すとみられる。

www.timesofisrael.com/two-syrians-to-be-freed-by-israel-fatah-man-who-planned-attack-drug-smuggler/

<石のひとりごと>

イスラエルは、失われた国民はたとえ遺体になったとしても、必ず取り戻そうとする。それがわずか一人であっても、もう遺体になっていたとしても、代わりにテロリストを放つことで、将来へのリスクになることがわかっていても、取り戻そうとする。

以前、生きてハマスの捕虜になっていたシャリート兵士を取り戻すために、パレスチナ人テロリスト1000人を引き渡した。実際に、この中から今のハマス指導者が現れたのである。

こうした国の姿勢こそが、息子を兵士に出す国民の国への信頼の基本なのである。しかし、こういう国はおそらくイスラエルだけであろう。

ヘブル的思考、ギリシャ的思考という考え方があるが、遺体となった兵士を取り戻すために、国と国民がリスクを追うという姿はヘブル的思考だろう。役に立つものを追及するギリシャ思考なら、遺体のためにリスクを負うことはないからである。

イスラエルは、ヘブル的視点とギリシャ的視点、この両方を持ち合わせているように思う。産業に関しては、合理性きわまるギリシャ的だが、こと人間に関してはヘブル的に、弱さも強さも受け入れている。やはり不思議な国である。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。