バイデン大統領の中東歴訪7月13-16日予定:イランとの緊張の中 2022.6.15

US Embassy

アメリカとイスラエル、湾岸スンニは諸国の協力

今月末にとも言われていたバイデン大統領の中東歴訪だが、7月13-16日になったとホワイトハウスが発表した。バイデン大統領は、まずイスラエル、パレスチナ自治政府サウジアラビアを訪問する。

イラン情勢が厳しくなっていることも関係してか、訪問のゴールは、アブラハム合意に基づき、イスラエルと中東諸国の関係安定化であるとしている。

サウジアラビアは、まだ合意には加盟していないことと、バイデン大統領が就任当初、イエメン戦争や、記者暗殺問題などで、サウジアラビアに冷たい態度をとったことから、両国の関係は冷え込んでいた。今回の訪問で注目されるところである。

1)イスラエルとパレスチナ自治政府訪問

バイデン大統領は、まずイスラエルに来て、大統領を招待したベネット首相、ヘルツォグ大統領や、連立政権の閣僚たちと会談するほか、ヤド・ヴァシェムも訪問する。ちょうどこの間に、ユダヤ人だけのオリンピック、マカビー大会があり、大統領も観戦するとのこと。この大会は、全世界にいるユダヤ人ディアスポラが、それぞれの国を代表して協議するもので、離散しているユダヤ人ならではのイベントである。

また、バイデン大統領は、イスラエルにいる間に、ベネット首相と同席して、UAE、インドの首脳とズーム会議を行い、これから予測されている食糧難やさまざまな危機、イノベーションに関する話し合いを行う。

一方、バイデン大統領は、パレスチナ自治政府との交流も進める様子をみせている。停止していたパレスチナ難民への支援金であったが、5億ドルで再開するとともに、いったん閉鎖されていた、アメリカ領事館を再開させている。

今回は東エルサレムとラマラのパレスチナ自治政府を訪問し、アッバス議長にも会う予定である。

2)サウジアラビアで湾岸諸国とエジプト、ヨルダンとの国際会議に出席

イスラエルを訪問した後、バイデン大統領は、サウジアラビアのジェダに向かう。そこで行われる湾岸諸国(UAE、バーレーン、クエート、オマーン、カタール)と、エジプト、ヨルダンが参加する国際会議に出席する。

これらの国々は、今やイスラエルと国交正常化にいたったか、そうでなくても近づくことに、興味も示しつつある国である。イラン、ロシア、中国の動きが、危険な様相を見せる中、この訪問を通じて、アメリカとイスラエル、サウジアラビア含む湾岸諸国が、協力関係にあることを強調するねらいがあるとみられる。

www.timesofisrael.com/white-house-announces-biden-trip-to-israel-west-bank-and-saudi-arabia-july-13-16/

しかし、この時にもし、現ベネット政権が崩壊していた場合、イスラエルからは、暫定政権を率いるラピード氏が暫定首相として、対応することになるのだろうが、どうなるだろうか。この動きがベネット首相に追い風になるかもとの分析もある。

www.haaretz.com/israel-news/2022-06-15/ty-article/.premium/bidens-visit-to-israel-signals-more-than-just-diplomatic-gain-for-his-host/00000181-63b5-d406-a5d9-efb598290000

緊張するイランの核開発:ロシアとの関係は?

アメリカとスンニ派中東諸国が、一致の動きを見せる中、イランの動きは相変わらず危険である。

先週、IAEA(国際原子力機関)が、イランが監視に非協力的であるとの非難声明を出すと、イランは、IAEAの監視カメラ27台を排除した上、さらにウランの濃縮を進めると表明した。

危機感を強めるイスラエルは、自衛の権利はあるとして、特にシリアのイラン関係施設への攻撃が続く。先月イラン革命軍高官や、科学者4人が不審死を遂げたことについて、イランは、このうち2人に死はイスラエルによるものと非難。復習を匂わせている。

イスラエル政府は、海外にいるイスラエル人が、イランによる襲撃や誘拐にあう可能性があるとして、海外への渡航に警告を発している。特にトルコへは、今、渡航を控えるよう勧告を出した。

しかし、イスラエル人のトルコへの旅行は相変わらずだという。ウクライナの時もそうだったが、政府の勧告をイスラエル人たちは、結構、無視するようである。

しかし、イランの存在は、トルコだけではない。今月初頭、アルゼンチンのブエノスアイレスで、疑惑のある輸送機が足止めになっていたが、乗組員17人のうち、5人はイラン人であった。

その後、アルゼンチンの警察が、乗組員たちが滞在するホテルに、踏みこみ調査したところ、5人のイラン人のうち数人は、イラン革命防衛隊に関わる輸送をしていたことがわかった。イランの影響力は、海外に広く及んでいる可能性がある。

www.timesofisrael.com/argentina-police-raid-hotel-hosting-irgc-linked-crew-of-stranded-plane/

(Satellite image ©2022 Maxar Technologies via AP)

またアメリカによると、航空写真で、イランが、宇宙船打ち上げの準備をすすめているもようと発表した。イランはこれまでに宇宙ロケットの打ち上げを試みて、4回失敗していた。いままた再度の挑戦というところか。イランの宇宙への進出は、無論、危険な話である。

www.timesofisrael.com/us-iran-escalating-tensions-as-satellite-images-show-preparations-for-rocket-launch/

そのイランだが、西側の経済制裁で苦しむロシアの逃げ口の一つになっている。一方、欧米と戦争状態にあるロシアは、イランへのIAEAの対応を非難する立場を表明している。

今後、欧米とイスラエル、湾岸諸国の接近とともに、イラン、ロシアなど先生主義国のさらなるの接近が注目されるところである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。