チェンジブロック新政権13日に発足見通しへ 2021.6.10

イスラエル国会 wikipedia

新政権13日発足の見通し

ラピード氏、ベネット氏による新政権の国会での承認決議が13日(日)にも行われる見通しとなった。手順としては以下の通りである。

まず、現在の国会議長ヤアリブ・レビン氏(リクード)を解任し、ミッキー・レビ氏(未来がある党)に交代することへの決議を行う。連立を組むことで合意しているチェンジブロック8党所属の議員全員61名が合意すれば、過半数となり議長交代が完了する。

同日午後4時、次期政権の首相候補であるナフタリ・ベネット氏が国会講壇に立ち、新政権における首相交代、閣僚たちの報告とともに政権の基本方針を発表。その後、国会入りしているすべての党首(リクード含む)がそれぞれ9分間で意見を述べる。

いわゆる日本でも行われた党首討論のようなもので、各党首がそれぞれ言いたいことを言うので、ヒートアップした激論も飛び出すと予測されている、

その後決議が行われ、予定通り賛成票が過半数の61以上となった場合、新政権は、国への忠誠を誓い、政権発足となる。

通常であれば、その後、首相室にて、前首相から新首相への権威の移行が行われるが、現時点では、この件に関してネタニヤフ首相との連絡は、まだ取れていないとのこと。

この後、チェンジブロックによる政権の閣僚28人と副閣僚6人。就任式後、大統領間的に行って、恒例の記念撮影となる。

ネタニヤフ首相陣営はまだ、右派政権への呼びかけを続けているとのことだが、明日は、安息日入りの金曜、そして安息日となるので、もうあまり時間は残されていない。

いずれにしても、右派のベネット氏もサル氏も、リクードへの帰還はないことを何度も明言している。たとえ仮に今、リクードが、党首をネタニヤフ首相からだれかに交代させたとしても、この2人が戻ってくる可能性はほとんどない。新政権発足はもはや避けられないとの見通しになっている。

www.timesofisrael.com/the-knesset-vote-on-a-change-in-government-how-it-will-unfold/

なお、右派が今週にも予定していたエルサレムでのフラッグマーチは、パレスチナ人との衝突再燃の他、政権交代問題にも関係するとして、一時キャンセルとも報じられた。しかし、最終的には、新政権が発足した後の来週15日に行われることとなった。

リクードはどうなる?

ネタニヤフ首相が首相でなくなると、これまで12年以上、与党として、閣僚だけでなく、国会内でも重要なポジションを維持してきたリクード党員たちも、その役割、ポジションを失うことになる。

今国会にる議員は30人で、このうち、閣僚のポジションを持つ人は17人に上っていた。野党になった場合、閣僚は言うまでもなく、国会でも担える役職は、政府監視委員会、経済委員会、科学委員会の3つだけである。12年もの間、ネタニヤフ首相はじめ、閣僚を勤めてきたベテラン政治家たちが、野党として国会に座ることになる。

リクードでは、新政権が就任したあと、党首選挙が行われるとみられる。候補は、ネタニヤフ首相の他に、エデルステイン現保健相、カッツ経済相、元エルサレム市長のバルカット氏などの名前が上がっている。

www.timesofisrael.com/heading-to-opposition-likud-lawmakers-prepare-for-fierce-internal-battles/

リクードとしては、今はもう新政権に道を譲るしかないが、この超雑居状態の政権が、長く続くことはないとみており、解散総選挙になった場合は、ネタニヤフ首相かもしくは別の党首で、すぐにも巻き返すとの予想をしていると思われる。

すでに不一致表面化?チェンジ・ブロックの課題

新しく就任すると予測されるチェンジブロックは、主に2つのブロック、ベネット氏のヤミナ党と、ギドン・サル氏のニューホープからなる右派ブロックと、ヤイル・ラピード氏の未来がある党と、その他左派政党とアラブ政党からなるブロックである。

基本的に、右派左派と、意見を異にするブロックが、ただ一つの目標、ネタニヤフ首相を退陣させることで一致したという政権である。イスラエル史上はじめてとなるこの政権で、就任を前にすでに意見の不一致が表面化している。

1)首相の在職期間の上限に関する法案

チェンジブロックの政権は、。この新政権がまず最初に出してくる法案は、首相の在職期限を2期、または最長8年までで、その後4年間は、首相に再立候補できないとするという法案である。

しかし、現時点で、この法案に該当するのはネタニヤフ首相個人のみである。リクードは、この法案に対し、「こんな法案を出してくるようなベネットとラピードの政権は、イランや北朝鮮の独裁政権にも匹敵する。」と非常に激しい反発を表明している。

これについて、次期首相候補のベネット氏は、首相は一度に2期までとする在職期限には賛同するが、その後、4年間は立候補できないという点については、同意しないと表明しており、この法案については、連立合意の中には含まれていいないとのことである。

www.timesofisrael.com/yamina-denies-seeking-law-that-would-bar-netanyahu-from-running-for-knesset/

2)ユダヤ教政党を連立に受け入れるかどうか

今回の連立政権には、ユダヤ教正統派含まれていない。このため、イスラエルのユダヤ教的な要素が弱くなり、アイデンティティにも問題が出てくるのではないかと懸念されている。先に首相になる予定のベネット氏は、正統派ではあるが、超正統派ではないため、世俗派のラピード氏と折り合いをつける可能性があるためである。

たとえば、安息日にさらに多くのビジネスの運営が認められるようになるとか、嘆きの壁での正式な利用が今は超正統派に限られている点が、他の宗派にも拡大されるとか、さらには、イスラエルへの移住に際し、ユダヤ人と認める際、これまでは超正統派でないとイスラエルでは正式にユダヤ人と認められないとされていた点が、アメリカに多い保守派や改革派でも受け入れられるようになるといった変革が出てくる可能性があるということである。

また、現実的な点では、超正統派たちへの生活補助金が削減される、超正統派への従軍義務がいよいよ始まっていくなどの点も考えられる。ユダヤ教政党は、ベネット・ラピード政権では、「イスラエルがユダヤ人の国でなくなる」といった懸念を表明している。

www.ynetnews.com/article/rkiJKUR9d

こうした中、ベネット・ラピード両氏は、ユダヤ教政党が、連立に加わることを否定していない。特にベネット氏は、右派ブロックを強化するためにも、今後、ユダヤ教政党が、連立に入ってくることを歓迎する立場である。しかし、イスラエル我が家党のリーバーマン氏は、これに反対した。

www.timesofisrael.com/liberman-said-to-tell-faction-that-haredi-parties-wont-be-joining-unity-govt/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。