ダマスカス門でテロ:女性兵士(19)死亡 2016.2.4

3日水曜午後、エルサレムの旧市街ダマスカス門で、ナイフと銃によるテロが発生。女性国境警備隊員2人と男性市民1人が負傷した。

女性国境警備隊員2人は、ナイフで首などを刺されて重傷と伝えられていたが、後にそのうちの1人ハダル・コーヘンさん(19)が、病院で死亡した。もう一人(20)は、改善に向い始めている。男性の負傷者は軽傷。

地元メディアによると、コーヘンさんら女性国境警備員2人は新米で、まだ訓練中だった。2人は、司令官とともに、ダマスカス門のベンチに座っているパレスチナ人2人にIDの提示を求めた。すると、一人が、ナイフを出して女性警備隊員を刺した。これを見てハダルさんが犯人を射殺。

続いてもう一人のパレスチナ人が、カールグスタフ・ライフル(軍隊が使うマシンガンの一種)で銃撃を始めたため、近くにいた警備隊員と先に負傷した女性兵士が銃で反撃して射殺した。

しかし、同時に3人目のテロリストが現れ、近距離からハダルさんを撃った。その直後、付近にいた警備隊員が、この3人目を射殺。テロリスト3人は全員現場で射殺された。

現場付近では、爆発物2つと銃2丁も発見されたため、イスラエル軍は周辺を一時遮断した。

パレスチナ側からの情報によると、事件を起こしたテロリストは、西岸地区ジェニン付近の町出身のアフマド・アル・ロウブ、モハンマド・カミル、モハンマド・ナセル(20-21才)。3人は違法にイスラエル領内に入り込んでいた。

今のところ、組織的な関与はなく、個人レベルの犯行と見られている。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4761536,00.html

*イスラエルの国境警備隊員

正式には警察の管轄下にある国境警備隊は、イスラエル軍、警察と並んで、イスラエルの治安部隊の一つ。軍と同様に、徴兵で配置が決まる。エルサレムは統一された町だが、東エルサレムの住民はほとんどパレスチナ人で、市の東西の境目は、1967年年までは国境だったこともあり、普段は多くの国境警備隊員が旧市街を守っている。

<エルサレム市内の様子>

エルサレム中心地から、旧市街ダマスカス門までは路面電車でわずか2駅。5分もかからない。犯行時間、記者は中心地にいたが、その路面電車の線路上をパトカーやバイクの警察官らが、何台もサイレンをならしてけたたましくダマスカス門方面へ走り抜けて行った。

町の人々は、何人かは不安そうに、それらを見送っていたが、いかんせん、この光景はエルサレムではもはや珍しいものではない。まったく無視しているか、「またか・・・」という程度で、人々は自分の用事に足早に歩いているだけだった。

<イスラエル軍の対応>

ネタニヤフ首相は、今回も緊急治安閣議を開催。その指示でイスラエル軍は、昨夜上記3人の出身の村カバティアを閉鎖。村に大規模に踏み込んで、多数のパレスチナ人を逮捕した。(以下のパレスチナメディア欄参照)

また、今回、3人が違法に、しか本格的なマシンガンのような武器を持ったままどうやってイスラエル領内へ入ったのかが問題となっている。ヤアロン国防相は、事件直後からのカバティアの閉鎖を翌日も継続するとともに、西岸地区全体の警備体制を強化している。

<パレスチナメディアの報道>

パレスチナ側のメディア、マアヤンはこの事件について、「パレスチナ人3人射殺。エルサレムでのテロでイスラエル兵殺害後」との見出しで報道している。

www.maannews.com/Content.aspx?id=770107 (犯行に使われたマシンガンと射殺された3人の笑顔の写真あり)

昨夜のカバティアへのイスラエル軍の踏み込み捜査について、マアヤンは詳細を伝えていた。それによると、踏み込みの乱闘で、パレスチナ人1人が頭を撃たれて重傷。15才の少年が、イスラエル軍のジープにはねられて重傷となったと伝えている。逮捕者は、17才2人を含む10人だった。

これについて、イスラエルのメディアは詳細を報じていないため、どこまでほんとうかは不明。双方とも、自分に都合の良い書き方になるので、同じ事件でも、かなり違うイメージになっている・・・

<アッバス議長:テロリスト11家族を招待>

アッバス議長は上記テロ事件発生後まもなく、11のテロリスト家族をパレスチナ自治政府に招き、彼らへのサポートを表明し、イスラエル政府に対しては、テロ現場で射殺された者の遺体を家族に返還するよう訴えた。

テロ直後だっただけに、イスラエル人にはかなり不快。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4761949,00.html

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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