スリホット/悔い改めで備える新年 2014.9.21

イスラエルでは来週24日日没から26日日没まで、ラッパの祭りと呼ばれる新年祭を迎える。ラッパの音は主が来られるという合図である。このためユダヤ教では、新年までの間、主に会う備えをする悔い改めの期間が定められている。これを「スリホット」(赦し)という。

スリホットの祈りは、嘆きの壁の他、地域のシナゴグで行われる。嘆きの壁では、基本的に深夜0時から行われるが、地域のシナゴグでは、夜明け前の朝5時半から毎日スリホットの祈りがささげられることになる。(この場合は、男性のみ)

東方系ユダヤ人のスファラディは、エルルの月が始まってからすぐにスリホット期間に入るので、40日ぐらい、延々と毎日悔い改めの祈りを捧げている。一方、欧米系ユダヤ人のアシュケナジーのスリホットは、新年の直前の安息日明けからはじまる。今年は、今夜20日からはじまることになる。

興味深いのは、スファラディとアシュケナジーの悔い改めに対する考え方がかなり違うということ。

エルサレムのグレートシナゴグはアシュケナジーだが、いわゆる荒布を来て灰をかぶる態度で主の前に出るので、祈りのメロディーは、悲惨な感じとなる。祈りを導くハザンが、オペラのテノール調の美しい声で、主に、泣き叫ばんばかりに赦しを嘆願する。

一方、スファラディは中東アラブ文化から発しているので、マイナー調ではあるが、リズムに乗せて踊りながらという感じ。悲惨な感じはない。ちょうど甘えっ子がお父さんの前で、「ごめんなさ~い。」と言っているような感じである。

<世界の祝福のために悔い改める>

ところでユダヤ人の悔い改めは、クリスチャンが悔い改めて赦しと救いを個人的に受け取る、というような悔い改めではない。

まずは、国を意識しての悔い改めと赦しの祈りである。それらの祈りはすでに祈りの書に書いてあるので、それを声を出して読む、つまり「スリホットの祈りを”言う”」という表現になる。その上で、新しい年に主が来てくださって、国全体、ひいては世界にも平和と繁栄に満ちた新しい年を期待するのである。

もちろん、個人的な悔い改めもなされる。旧年中の罪を思い返し、赦しをこい、新しい年に「新しくされる。」という新生に近いイメージである。しかし、それは、自分のためだけにとどまらず、そうすることが最終的には国への祝福になると考えられている。

ユダヤ教では、基本的に世界全体の祝福になるという使命をユダヤ人が与えられていると考えている。イスラエルが主との契約を守り、主の前に正しくある時、全世界が祝福されると考えているのである。

新年と言えば、新しい年の自分の抱負とか、目標を語るが、ユダヤ人はいかにして主に来ていただくか、そこにこそ祝福があると考えているという点に感銘を受けた。

<はやる世俗派のスリホット・ツアー>

これは近年の現象ということだが、世俗派ユダヤ人のために、エルサレム市内の様々なシナゴグをまわって、スリホットを学ぶというツアーがはやっている。ツアーの参加者はイスラエル人で、ヘブル語で行われている。

近年、ユダヤ教に立ち返るか、少なくとも興味を持つ世俗派ユダヤ人が増えているのだという。ただし、こうしたスリホットツアーでは、シナゴグの中には入らない。スリホットの祈りは延々とあるので、世俗派には退屈すぎるからである。

*世俗派向け新年メッセージをMTV風にしたビデオ おすすめ!:http://www.aish.com/h/hh/video/What-Makes-Rosh-Hashanah-Beautiful.html

アシュケナジーのシナゴグもスリホットを開始する20日夜から新年まで毎日、こうしたツアー客を含めて、エルサレムでは、嘆きの壁やシナゴグが大勢の人々でにぎわうことになる。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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