シリア国境で爆破・イスラエル兵4人負傷 2014.3.19

18日午後2時ごろ、イスラエルとシリアの国境、ゴラン高原のマジダル・シャムス付近で、パトロールしていたイスラエル軍のジープが不審者を発見。近づいたところ、仕掛けられた爆弾が爆発した。

この爆発により、イスラエル兵4人が負傷。1人が重傷となった。直ちに砲撃で反撃したのに続いて昨夜、イスラエル空軍が、ゴラン高原のシリア側、クネイトラ周辺のシリア軍拠点などへの空爆を行った。今のところ、空爆による被害は明らかにはなっていない。

アラビア語紙によると、ねらいはイスラエル軍兵士の誘拐が目的だったということだが、使用された爆発物の中に細かい金属が仕組まれていたため、イスラエル軍は、兵士殺傷する目的もあったとみている。

どのグループの犯行かは特定はできていないが、2月後半にイスラエルがシリアからヒズボラへ搬入されようとした武器を空爆して以来、国境での同様の衝突はこれで3回目になる。今回もヒズボラである可能性が高く、イスラエル軍はアサド政権の責任を追及している。

<今後の見通し>

先週、北部レバノンとの国境へ取材に行ったが、軍関係者は、次のように語った。

「イスラエル国内は北部も含めていたって平和。子供たちは学校へ行き、ごく当たり前の日常生活ができている。しかし、イスラエル周辺は、ガスを含んだ風船のようなもの。イスラエル兵や、イスラエル市民が負傷するようなことになれば、風船は簡単に破裂する。

ヒズボラは10万発に近いミサイルをすでにイスラエルに向けて並べている状態なので、(戦争が)おこるかどうかではなく、いつおこるかという状態。

ただ、ヒズボラはシリア内戦に加わって以来かなり疲弊しており、まだイスラエルとの争いは避けたいと考えているはずだ。」

イスラエルでは、イランの武器密輸線拿捕に続いて、南部でガザとの衝突があったばかり。今回の北部国境での衝突と南部の状況に関係があるかどうかは、不明だが、イラン、ヒズボラ、シリアとイスラエルとの緊張が包括的に高まっている事は間違いなさそうである。

<取材報告・イスラエルで治療を受けるシリア難民>

先週、イスラエル北部ナハリアの病院で治療を受けているシリア難民に会う事ができた。30代後半ぐらいの、小柄でやせ気味の男性が、ちぐはぐなパジャマ姿のまま、3歳の女の子を抱いていた。

女の子は双子のうちの一人。もう一人はシリア軍の空爆で死亡。母親については語られなかったので不明。アラビア語だったのでよくはわからなかったが、途中から泣きながら語る彼の目に、まさに悲しみと一言では言えない絶望と悲惨を見たような気がした。

途中から女の子が泣き始め、キスしながらなだめる姿は、どこにでもいる普通のお父さんだった。この人も、私たちと同じように、ごく普通の生活をしていた普通の人なのだ。

テレビで見るのと違い、シリアから逃れてきた等身大の人を目の前でみるインパクトは予想以上だった。特に子供を抱いている手がほんとうにどこにでもいるお父さんの手だったので、その手を見て涙が止まらなかった。

ナハリアの病院スタッフは、子供たちが回復すると、近くのビーチへ連れて行くのだという。シリアの子供たちは海をみたことがない。もう帰りたくないと言い、医師たちも感情的になるという。

シリア難民の間では、イスラエルで治療してくれるという認識が広がっており、負傷者たちが、次々に国境に近づいている。それをイスラエル軍が認識し、判断し、イスラエル領内につれてくる。

病院も軍からいきなり電話が入り、「シリア人3人。30分以内」と言われて対処する。難民の傷は、相当な重傷にもかかわらず、サバイバルして逃れてくるという異常なタイプの傷だと医師。

今後、イスラエル軍は上記のように、爆弾を仕掛けにくるテロリストなのか、一般の難民負傷者なのかを判断しなければならないだろう。

なおこれまでにこの病院が治療したシリア難民は230人。費用は、イスラエル政府、イスラエル軍、病院が30%づつ負担している。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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