シリアで対峙するロシア・イラン・アメリカ・イスラエル 2015.9.27

<着々と準備する?ロシア> 

内戦の続くシリアでは、ロシアとイランが、さらに軍備の増強を続けている。ロシア軍は、シリアのラタキヤ付近に戦車、戦闘機を含む軍隊を増強している。アメリカの情報や航空写真によれば、戦闘機はすでに28機、爆撃機も配備されている。

このロシアのラタキア付近での軍備蓄積の動きには、イラン革命軍、ヒズボラ戦闘員も加わっていることがわかっている。

クエート系メディアの情報としてYネットが伝えるところによると、ヒズボラにはロシアの戦車が与えられる見込みだという。またイランの士官100人がダマスカスに到着している。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4704278,00.html

地中海では、ロシアの誘導ミサイルつき巡洋艦、戦艦などが集まっており、9月から10月にかけて、地中海、つまりはイスラエルのすぐ近くで、軍事訓練を行うと言っている。

ロシアは、この訓練は、以前から行っていいるもので、現在のシリア情勢とは関わりはないと主張しているが、実に微妙なタイミングだ。

こうした中、ロシアやイランとともにアサド大統領側で戦っているヒズボラが、国連の仲介で、一部撤退した。ヒズボラもこれを認めている。ヒズボラのナスララ党首は、「ロシアは今後、さらに軍備を増強する。シリア情勢を大きく変えるだろう。」とも言っている。 http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4704179,00.html

こうした状況の中で、懸念されることの一つは、シリア領内で、ロシアの戦闘機と、ISISを攻撃しているアメリカの戦闘機、またイスラエルの戦闘機がなんらかの接触をすることである。

イスラエルは、ゴラン高原のシリア側において、ヒズボラとその背後にいるイラン革命軍を、時々攻撃している。そのヒズボラとイラン革命軍とともに今は、ロシア軍がいるという状況なのである。

もし、万が一、イスラエルの戦闘機とロシアの戦闘機がゴラン高原で接触した場合、こちらも非常に危険な状況になる。

しかし、だからといって、イスラエルを危機に陥れようとするヒズボラやイランの動きに目をつぶるわけにはいかない。実際、25日にも、ゴラン高原シリア側からの流れ弾が、イスラエル側に着弾しているのである。

<ネタニヤフ首相・プーチン大統領緊急訪問> http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4703202,00.html

ネタニヤフ首相は21日、急遽ロシアのプーチン大統領を訪問。思わぬ衝突が発生しないよう、連絡を取り合うことで合意した。首脳会談の後は、イスラエル軍とロシア軍、両国の参謀総長が協議を進めることとなった。

アメリカのオバマ大統領は、今週月曜、国連総会で訪米しているプーチン大統領と会見する予定になっている。

<災難続きのサウジアラビアとイラン>

シリアで、ロシアとともに存在感を高めているイランとヒズボラは、シーア派イスラムである。

そのシーア派と対立するスンニ派代表が、大国サウジアラビアである。サウジアラビアは、アメリカと協力してシリアのISIS攻撃に加わっていることから、アメリカを根本的に憎むシーア派との対立が明確となっている。

さらにサウジアラビアは、イエメンにおいて、イランが支援するシーア派組織フーシ派を空爆し続けており、イランとの確執も深まっている。

そんな中、サウジアラビアのメッカでは、先週からはじまったハッジ(巡礼)で、700人以上が死亡するという大惨事が発生した。

200万人とも言われるイスラム教徒の群衆が移動する中、将棋倒しとなり、26日現在、これまでに769人の死亡が確認されている。負傷者は934人。*注)メッカ巡礼での将棋倒しで数百人死亡する事故は過去にも何度も発生している。

今回の犠牲者には、イラン国籍の人が130人も含まれていた。このため、イランのロウハニ大統領は、国連に対し、サウジアラビアがきちんと群衆の動きに対処していたのか調査するよう訴えている。

今年、メッカでは、ハッジが始まる直前にも大型クレーンが倒れて109人が死亡するという惨事も発生しており、シリア難民もほとんど受け入れていない事からサウジはばちあたり?との批判もある。

サウジアラビアは、これらの事故を調査し、「これは防ぎ得ない事故だった。神のおぼしめしではない。」と言っている。

しかし、26日のニュースでは、アメリカで、サウジアラビア王室の皇子がアメリカで性的暴力で逮捕されるなど、今年災難が続くサウジアラビアである。

<シリア難民問題>

こうした状況の中、ヨーロッパをめざすシリア難民の波は今も続く。国連によると、ヨーロッパには一日平均6000人(24日、ハンガリーでは10000人を記録)が到着しているという。

先週には、トルコからギリシャをめざした難民船が転覆し、少なくとも13人が死亡した。この他にも各地で難民と治安部隊が衝突するなど悲惨な状況が続く。

ヨーロッパでは、難民をどのように分配して受け入れるのかでもめている。この他、難民を違法に移動させる業者の取り締まりの他、シリア国境の難民キャンプへの支援を強化し、ヨーロッパへ来ないようにするなどの話し合いが行われているが、まとまっている様子はない。

現在、シリア難民最大受け入れ国はトルコの193万人、レバノン111万人(国民の4人に1人は難民)、ヨルダン63万人、ヨーロッパでは、ドイツが約11万人、セルビア、ハンガリー、となっている。(国連難民高等弁務官事務所)

www.bbc.com/news/world-europe-34348391

クリスチャニティトゥデイによると、ドイツにたどり着いたイスラムの難民たちが教会に来て、バプテスマを受けているという。ただし、移住を確実にしたいがための”手段”である人も少なくないとみられる。

それでも、教会の礼拝に来て座っている。教会に来れば人は変わるので、教会に来る難民は皆受け入れますと地元クリスチャンは語っている。
www.christiantoday.co.jp/articles/17010/20150910/muslim-refugees-convert-christianity-german-church.htm

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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