ゴラン高原・イスラエル主権:トランプ大統領署名完了 2019.3.26 


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ガザとの衝突が続く中、ワシントンのホワイトハウスでは、トランプ大統領が、ネタニヤフ首相、ペンス福大統領、ポンペイオ国務長官が見守る中、ゴラン高原はイスラエルの主権下にあると認めるとする公式文書に署名した。 (写真出展:ynet)

トランプ大統領は、ガザからのミサイル攻撃をあげ、「イスラエルは、日々このような危機的状況に立たされている。特にゴラン高原は、シリア、イラン、イラン指揮下のヒズボラに直面するため、防衛上非常に重要な地域。イスラエルは、主権国家として、自国の防衛の権利を持つものである。

それを支援するために、アメリカは、ゴラン高原におけるイスラエルの主権を認めると語った。また、記者らに向かい、「私の政権下で、アメリカとイスラエルの関係はこれまでになく強固になった。それを忘れるな。」と言った。

トランプ大統領は、またイランについても言及し、(経済制裁により)イランは、今や前のイランとは違う国になったと、イランに対するアメリカの国策を自評。イランに「アメリカに死を。イスラエルに死を。」などとは言わせないと語った。

これを受けて、ネタニヤフ首相は、この署名を歴史的と述べた。また、「トランプ大統領のこの宣言は、ちょうどイランがシリアに進出をすすめ、国境からはドローンやミサイルを飛ばしてくる中で行われた。」としてその重要性を強調し、「今のアメリカほどイスラエルにとっての友はない。」と感謝を述べた。

www.timesofisrael.com/trump-signs-proclamation-recognizing-israeli-sovereignty-over-golan-heights/

<シリア、ロシア、イランの声明>

シリアの国営放送は、ゴラン高原は、シリアの領地であると強調。アメリカのこの動きを、「シリアの主権へのずうずうしい攻撃だ。」と避難。

ロシアは、アメリカのこの動きは、中東にあらたな緊張を生んだと警告を発した。

イランからは不気味に声明はない。アメリカは、3月22日、イランに対する新たな経済制裁を発している。トランプ大統領の発言通り、イランは、もはやイスラエルどころではなくなっているのかもしれないが、逆に本当に恐ろしいことを計画している可能性もある。

いずれにしても、アメリカとイスラエルが、これまで以上に敵を増やしたことは間違いなさそうである・・・。

<AIPAC年次総会:アメリカ・イスラエル強し>

アメリカとイスラエルが、敵を増やしている流れではあるが、一方で、ネタニヤフ首相と、トランプ大統領は今、波に大乗りの感じである。

ネタニヤフ首相は、アメリカとの強力な友好関係をアピールすると同時に、ガザ問題で強力な対応に出たことで、総選挙において好スタートを切ったといえる。トランプ大統領も、ロシアとの共謀疑惑が終焉し、時期大統領選再選の可能性に大きく近づいたと言われている。

こうした中での、AIPACである。AIPACとは、The American Israel Public Affairs Committee(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)の略で、親イスラエルのユダヤ人ロビー団体のこと。年次総会には、1万8000人が参加する。

ネタニヤフ首相は、明日火曜に演説予定であったが、ガザでの紛争を受け、急遽、帰国の途についた。

1)エルサレムへの大使館移動予定表明2カ国

AIPAC年次総会において、ルーマニアの首相とホンデュラスが、大使館をエルサレムへ移動する計画を発表。これに先立ち、ホンデュラスの大統領が、エルサレムに外交施設をすぐにも移設すると発表した。

www.jpost.com/Diaspora/Romania-announces-it-will-move-its-embassy-to-Jerusalem-584449

とはいえ、実際に移動させるまでは、イスラエルのメディアは、あまり大きくはとりあげなかった。

2)ポンペイオ国務長官、ペンス福大統領声明:反シオニズムは、すなわち反ユダヤ主義

ポンペイオ国務長官、ペンス副大統領は、福音派で知られる。ポンペイオ国務長官は、過去の調査からすると、「反シオニズムと反ユダヤ主義は同じである」と述べた。

ペンス福大統領は、「イスラエルを批判することは民主主義として認められる。しかし、反シオニズム、いいければイスラエルの存在を認めないということは、すなわち反シオニズムと同じことである。」と述べた。

また、民主党勢力が、パレスチナに同情的になっていく可能性がみえるとし、アメリカ議会は、伝統的にイスラエル支援の立場というのが、バイパルチザン(党を超えて一致)であったが、今はずいぶん変わってきていると述べた。

www.timesofisrael.com/pompeo-at-aipac-says-anti-zionism-is-anti-semitism/

トランプ政権は、それを支える福音派キリスト教勢力に支えられて、親イスラエルの旗印が、ますます明白になってきたようである。しかし、肝心なのは、イスラエルの総選挙後に、トランプ政権がどんな中東和平案を持ってくるのか・・・であろう。今後、注目される点である。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。