コロナ禍2年目のラマダン始まる 2021.4.14

ハラム・アッシャリフ(神殿の丘)での礼拝 スクリーンショット

東エルサレムのラマダン

過越、イースターに続いて来るのが、イスラム教のラマダンである。ラマダン期間中、イスラム教徒は、日中断食をし、寄付や施しをするなどして、宗教的な聖さを確認する。

今年は、13日夜が、ラマダン初日の夜で、5月12日までとなっている。断食で日中は苦しいが、日没とともに、家族親族が集まって、いつもよりのご馳走を食べる。そして翌朝、日の出とともに、再び断食に入る。イスラム教徒にとっては大きな行事であり、祝い事でもある。東エルサレムからは、祭りを祝う賑やかな様子が伝えられている。

イスラエルは、エルサレムは東西ともに一つの首都と認識しているので、東エルサレムのパレスチナ人たちも、イスラエル人と同様にワクチン接種を受けている。このため、東エルサレムでも感染者数は減少しており、昨年は、コロナで閉鎖となったハラム・アッシャリフ(神殿の丘)での礼拝にも行けるようになった。

ただし、ラマダン中で最も礼拝者が多いと見られる16日金曜について、COGAT(イスラエル軍パレスチナとの事務を担当)は、ハラム・アッシャリフ(神殿の丘)での礼拝は、ワクチン接種を受けた人に限り1万人までとの制限を発表している。

すでにイスラエル治安部隊と衝突

ラマダン中は、パレスチナ人が、宗教的にも高揚する傾向にあるので、イスラエルの治安部隊と衝突になることが珍しくないが、今年もすでにダマスカス門周辺にいた治安部隊に投石するなどの衝突が発生し、6人が負傷。5人が逮捕された。

ラマダンに加え、パレスチナ自治区では、来月議長選挙が行われる予定になっており、東エルサレムでも運動を展開している。イスラエルは、エルサレムはイスラエルの領域だとして、こうした選挙活動は、禁じて取り締まっているため、ラマダンに加えて緊張した空気になっているとのこと。

www.timesofisrael.com/6-injured-5-arrested-as-hundreds-riot-in-east-jerusalem-after-ramadan-prayer/

コロナ感染急拡大でラマダンどころではない:ガザ地区

ニューヨークタイムスによると、ガザ地区では、イギリス型変異株の感染が問題になっている。ガザ地区では、圧倒的に子供の数が多いことから、感染が急拡大しており、1日に行われたPCR検査4700件中、38%が陽性と、驚異的な数字になっている。

イギリス型は重症化率も高いと言われているように、この3週間で、重症者は58人から219人になり、このうち、内臓不全の事態に陥った人は、17人から58人に増えた。元々医療が不十分なガザ地区であるので、すでに医療崩壊である。こうした中、ガザ地区のワクチン接種率は、1%以下である。

こうした中で、ラマダンを迎えているのだが、イスラム教では、ラマダン中、毎夜、大家族が一緒に食事するので、感染はいよいよ拡大すると懸念されている。

www.nytimes.com/2021/04/12/world/covid-gaza-ramadan.html

メッカのラマダンの様子

イスラム教第一の聖地は、預言者ムハンマドが生まれた場所で、アブラハムとイシュマエルが建てたとされるカアバ神殿を擁するメッカ(サウジアラビア)である。サウジアラビアでは、ファイザーのワクチンで、500万回(総人口は3437万人)の接種が終わっているが、新型コロナの感染は1日900人前後で、若干増加傾向にある。

このため、サウジアラビアは、昨年に続き、今年も感染予防対策を継続し、メッカに来ることができるのは、サウジアラビアに在住している人で、少なくとも2週間前までにワクチン2回の接種を終えている人のみとした。コロナ前は250万人の巡礼者たちで賑わっていたところ、今年も1万人程度となっている。

www.arabnews.com/node/1841296/saudi-arabia

以下はわかりやすいイスラム教とサウジアラビアに関する説明(BBC)

石のひとりごと

新型コロナは、日本人でもガザのパレスチナ人でも、イスラエルのユダヤ人でも、人間なら全く差別なく同じようにとりついている。その感染拡大の仕方も単純明快で、差別はない。対策の仕方が悪ければ拡大するし、うまく扱えば感染は収束する。

この原則で考えるなら、もし世界の人間たちが、人種も宗教も超えて、一つとなって互いに協力し合えさえすれば、世界からコロナを追い出せるということだろうか。。。

イスラエルでは、コロナが終息し始めている中、テルアビブから1時間そこそこのガザ地区での感染拡大は悲惨な様相になっている。あまりの明暗に心が痛む。

明らかにガザの支配者であるハマスのやり方がまずいということだが、もしイスラエルとの協力ができていたら、ガザの感染はここまで酷くはならなかったかもしれない。となれば、どちらが悪いとの論議は別として、これは人災の一面もあるということなのだろうか。

コロナがどこまで続くのかはわからない。しかし、今後イスラエルはじめ、これに続くイギリスなど、先にコロナから脱出できた国は、後に続く国々への助けをどのようにしていくかが課題となってくるだろう。

今また世界では、感染拡大がじわじわと迫っている。天地創造の神が、とことん協力しあえないという足りなさから脱出できない人類を哀れみ、コロナの終息へと導いてくださるよう祈ろう。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。