コロナ感染拡大・重症者数増加止まらず:秋の例祭中ロックダウンは防げるか 2021.8.9

インフルエンサーたちにワクチン推奨案内を要請するベネット首相

感染拡大・重症者も増加中

イスラエルでは、ワクチンの促進とマスク着用などの感染予防策、グリーンパス(ワクチン接種完了かPCR陰性証明)による接触管理で、経済社会生活を維持する方針を続けている。

しかし、感染拡大とともに重症者数、死者数も増加が続いているというのが現状である。

8日朝のデータで、新たな感染者数は2886人(陽性率3.83%)。重症者は21人(この3日の間だけで91人増加)増えて348人。死者は、この週末2日間だけで16人が死亡した。(死者累計6355人)

アッシュ・コロナ担当はこのままでは、9月1日からの新学期の開始も確約できないだけでなく、続く秋の例祭中には、ロックダウンの可能性もあると、警告している。

これを受けて、ベネット政権は、新学期の開始だけは、なんとしても実現させたいとして、様々な対策を打ち出している。

しかし、重症者(要入院)がこのまま減少に転じず、600人から700人になる場合は、新学期の開始を見送り、9月6日から始まる秋の例祭中のロックダウンも避けられないとして、国民に危機感と協力を呼びかけている。

www.timesofisrael.com/health-ministry-chief-impossible-to-say-for-sure-if-school-year-will-open/

ベネット首相必死の訴え:急ぐワクチン接種

ハイファで母のワクチン接種に同行し、ワクチンを推奨するベネット首相

感染と重症化防止への大きな武器は、現時点ではやはりワクチンである。保健省によると、総人口930万人のうち、これまでに、ワクチン1回接種を終えた人は580万人。2回完了した人は540万人。

60歳以上で、3回目の接種を受けた人は42万人で、数日以内に対象者の全員が3回目を終える見通しである。

しかし、10-19歳の若年層の接種率はまだ42%である。また、ワクチンを拒否している人が100万人はいる。ベネット首相は、「ワクチンしないで外を歩くということは、機関銃でコロナを撃ちまくっているようなものだ。」と強い口調で、接種を促した。

また5日、ベネット首相は、テルアビブで、フェイスブック、インスタやTikTokのインフルエンサーたちの集会に出席。

その影響力の大きさを認め、「あなた方の協力が命を救う。」と述べ、次の2点の拡散に協力してほしいと訴えた。①12歳以上の人はできるだけワクチン接種に行く。②どこででもマスクを着用する。

www.timesofisrael.com/bennett-lockdown-over-the-high-holidays-depends-on-vaccination-levels/

8日には、特にアラブ系市民へも接種を促した。イスラエル全体でみると、66%が接種を受けている中、アラブ系市民の間では、51%にとどまっている。

エルサレムの新しいワクチン接種会場の開所に立ち会うベネット首相
Haim Zach (GPO)

3回目の接種について、WHO(世界保健機構)は、国際社会に対し、まだ一回も接種できていない後進国のために3回目接種はやめてほしいとの要請を出しているが、イスラエルは、3回目をラッシュですすめている。

これについて、ベネット首相は、イスラエルは世界の先を行って、世界に貢献するためだと説明した。

実際に、3回目については、その効果も副作用もまだまったくの未知の中、世界に先駆けての接種開始である。いわば大きな人体実験といえる。実際、これまでに3回の接種を完了しているにもかかわらず、コロナに感染した人が14人出たとのこと。これから、ワクチンとの関連が詳しく調査されることになる。

www.timesofisrael.com/tv-14-israelis-who-got-3rd-shot-later-infected-with-covid-19/

グリーンパス制度強化:全国120箇所でコロナ検査場設置

ワクチン接種を急ぐとともに、感染予防対策の骨子は、検査による陽性者の検出と隔離である。イスラエルでは、これまで100人以下の集会ではグリーンパス(ワクチン接種済みか陰性証明)の提示を義務付けていなかったが、8日から、すべての集会でグリーンパスの提示を義務付けることとなった。

このため、政府は、主にワクチン接種が終わっていない人のための検査場を全国120箇所に設置し、8日から稼働を始めた。ここでの検査は15分で結果が出され、陰性であれば、グリーンパスをもらえて、社会生活を継続できる。

検査場を担当するのは、MDA(救急医療隊)。しかし、ここでの検査は有料で、有効期限は24時間で、値段は、1回52シェケル(約1700円)。いわば、学校に行ったり、何かの集会に出席するたびに検査を受けることになり、出費はかなりかかることになる。

ワクチン拒否者の生活への道を開いてくれているといえるが、実際には、ワクチンへの圧力ともいえる。

www.timesofisrael.com/results-in-15-minutes-rapid-covid-19-test-stations-set-up-across-israel/

新学期開催に向けた学校での検査システム

パンデミックが始まり、オンライン授業が行われるようになったが、やはりこれには限界がある。ベネット首相は、なんとしても、予定通り、9月1日からの新学期を開始し、できるだけ、子供達が学校に行けるようにと考えている。そのため打ち出した方策は以下の通り。

1)幼稚園児と1-6年生の子供(160万人)全員に、抗体を持っているかどうかの血清検査実施。これで陽性と出た子供たちは、コロナに感染し、抗体を持っていると考えられるのでグリーンパスをもらう。

2)幼稚園児と1-9年生の子供(190万人)の全家族に、新学期2日前までにコロナの簡易検査キットを配布する。これで陽性になれば、隔離。クラスメートたちも全員PCRを行い、陽性になった子供は隔離するが、陰性の子供は、毎日検査しながら、続けて登校する。

3)特に感染が進んで赤信号、オレンジ信号に指定されている町の子供たちは全員、1週間に1回は検査を実施。陽性が出たら、一定期間隔離して、その間は、学校に入らないようにする。

これらにより、学校には感染していない生徒だけがくる形になり、安全に学校生活維持できるという考えである。しかし、これらについて、だれが子供を検査場に連れていくのか明確でないなど、教師からは意見の声も出ている。

www.timesofisrael.com/testing-testing-and-more-testing-israel-lays-out-plan-for-reopening-schools/

自宅療養システム構築開始

ベネット政権は、なんとしてもロックダウンを防ぎたいと考えている。そのため、罹患者の管理を病院以外の保健機関(訪問医療など)にも拡大し、人工呼吸器を必要としていないレベルの人を自宅療養にするシステムの構築に入った。

これにより、入院患者数、つまりは重症者数が増えない形となり、ロックダウンに踏み込む時期を遅らせることが可能になるという考えである。しかし、これは、しかたなくそうなってしまっている日本の自宅療養の様相とは、大きく違っていることに注意したい。

イスラエルは、デジタル医療が世界最先端であることに加え、患者の管理においてもデジタル化が進んでいる。また人材についても、いざとなれば、軍隊がその任務を担うことも可能である。

さらに、システムが構築ができたところで、この政策に入るのであって、家で死亡することのない、安全なシステムになるはずである。国民の間からは、今のところ反発はない。

www.timesofisrael.com/govt-mulling-plan-to-buy-time-for-health-system-avoid-lockdown-if-possible/

石のひとりごと

上記の方針の他にも、空港での水際対策は、状況に応じて変化しつづけている。渡航禁止になったり解除になる国のリストも頻繁に変更されている。イスラエルへの移住を計画している人、海外からイスラエルにいる家族に会いたい人や外国人は、特別な許可を政府から受けなければならない。

その作業が遅れ、混乱にもなっているという。旅行業関係の知人たちは、ここ1-2年の間に観光業が回復することはないだろうと、次の生き方を模索している。コロナが終わって、どんな姿になるのか、ほんとうに先が見えない状況である。

こうした中、なんとかこのまま、ロックダウンに入ることがないようにすることが、生き残りをかけた政策なのであろう。ベネット首相や政府の打ち出してくる細かい政策からは、その必死の様相が伝わってくる。

その必死がイスラエルの神に届き、このままコロナより先を行って、新学期開催、秋の例祭も開催できるように祈る。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。