コロナとの戦い:新規感染者横ばいも重症者は増加 2021.1.11

ファイザーからの追加ワクチンを空港で迎えるネタニヤフ首相とエデルステイン保健相 出展:Koby Gideon (GPO)

ワクチンと強化ロックダウンでコロナと対決中

イスラエルでは、ワクチンを1日15万人のスピードで接種をすすめた結果、エデルステイン保健相によると、これまでにワクチン1回目の接種を受けた人は、総人口の約20%にあたる181万7000人。中でも特に、60歳以上の75%近くが一回目の接種を終えた。

9日からは、2回目の接種がはじまっている。ワクチンに加えて、7日からは、昨年末から実施されていたロックダウンの強化が開始された。2週間の予定で、外出は、不要不急以外、自宅から1キロまで。今は、子供達も学校へ行っていない。

www.timesofisrael.com/rules-for-israels-new-lockdown-what-you-need-to-know/

今回は、比較的市民たちも外出しておらず、不要外出の罰金(500シェケル(1万5000円))土曜日の時点で、約1万枚が切られたとのこと。

強化ロックダウンから、3日目にあたる10日、一時8000人台にまだ上がった新規感染者数は、5885人となった。しかし、重症者は増えており、11日深夜時点で、累計1056人と、1000人を超えた。死者も増えており、40人以上が死亡する日もあり、累計は、3663人である。

感染が急増した背景には、イスラエル国内での感染が、感染力の強い、イギリスからの変異型が主流になってきていることが考えられる。しかし、今や、南アフリカ型変異種が国内で確認されている他、ブラジル型変異種も出始めている。今後どうなっていくかは、まだ専門家にもわからない。

まさに、国民へのワクチン接種を急ぎながら、未知の敵と手探りで戦っている状況である。しかし、コロナ担当のナフマン・アシュ氏は、イスラエル国内での新規感染者数が、横ばいであることから、これから好転する可能性が見え始めた可能性はあると語っいる。

www.timesofisrael.com/virus-czar-says-theres-room-for-optimism-as-morbidity-rate-slows/

ワクチン情勢:ファイザー、モデルナからも早期ワクチン到着

一時、入荷済みのワクチンが底をつき始めたが、イスラエルは欧米のように、接種回数を一回にするということはせず、当初の計画通りの2回接種を行うことを決めて、接種人数を減らす計画となった。2回目もネタニヤフ首相が、第1号として9日に、接種を完了してみせた。リブリン大統領もこれに続いている。

その翌日10日、2月に出荷予定であったファイザーのワクチン100万回分が、ベングリオン空港に到着。今後、3月まで、ファイザーから毎週、40万から70万回分が届くことになっているという。

さらに7日には、モデルナからも,10万人分が到着。ネタニヤフ首相は、接種を1日、17万人から20万人にする方向で準備を進めている。また高齢者への接種が完了に近づいていることから、来週からは55歳上の人々への接種が開始となる。

www.timesofisrael.com/new-vaccine-shipments-arrive-netanyahu-says-over-50s-eligible-from-next-week/

パレスチナ人のワクチン事情:2月にアストラゼネカから到着か?

急速にワクチン接種が進められているイスラエルの横で、パレスチナ人たちの間では、まだワクチン接種がはじまっていない。

10日、パレスチナ自治政府保健省が発表したところによると、2月15日にアストラゼネカのワクチンが到着する予定とのことだが、実際に届くかどうか保証はない。これまでに予定されていたワクチンが届かなかったからである。

しかし、パレスチナ自治政府には、ファイザーのワクチン(マイナス70度で要冷蔵)を保存、運搬する技術はないので、ファイザー以外のワクチンを待つしかない。ワクチン接種に関しては、イスラエルとの差が明白になっている。

WHOは、イスラエルの保健省は、自国の分も不足しているのに、パレスチナ人に回すワクチンはないと言っていると報告している。(イスラエルではパレスチナ自治政府はイスラエルの支援を断ったと伝えていた)

国際社会では、貧しい国々にワクチンを無料で配布しようとする団体、COVAXがあり、パレスチナ自治政府、ガザ地区もこれに期待している。しかし、実際にCOVAXが、ワクチンの配布を開始するのは、2月から今年中旬以降になるとみられている他、ワクチンを必要とする人々の20%しかカバーできない見込みだという。

www.timesofisrael.com/palestinians-hope-for-vaccines-by-march-knock-israel-for-not-providing-doses/

この問題については、いずれ、イスラエルに負担がかかってくるようになることはさけられないだろう。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。